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恋愛寫眞 Collage of Our Life | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
堤幸彦 緒川薫 2003年 日本 広末涼子 松田龍平 小池栄子 ドミニク・マーカス カラー/1h51 |
カメラマン瀬川誠人(松田龍平)は3年前に別れた彼女里中静流(広末涼子)の名前を使ってニューヨークで活動している。なぜ瀬川は昔の彼女の名前で活動しているのか、という謎を探る形で若干のミステリーを交えながら、物語は二人が出会った大学時代に遡っていく。作品中、いたる所に二人が撮った写真のスチールがちりばめられていて、ちょっとした写真展のようになっている。おそらくプロのカメラマンが撮ったものだと思うのだけれど、それが素晴らしい写真ばかりで、これだけ見ていても十分に楽しめるように出来ている。写真を撮ることの素晴らしさみたいなものが十分に伝わってくる。最近、銀塩写真にすっかり興味を無くしてしまった私も、この作品を見た後は、押入れの奥に眠っている一眼レフを引っ張り出してみようかなという気になった。写真に興味ある人が見たら、もっと楽しめると思う。役者に関して言えば、広末は相変わらず人の心を掴むいい演技をしていたし(友達にこういうのがいたら、即ぶっとばしなのだが・・・)、龍平はますますおやじに似てきたし、小池栄子の怪演には十分笑わせてもらった。 |
フロム・ヘル / From Hell | ||
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(監督) (原作) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
アルバート・ヒューズ アレン・ヒューズ アラン・ムーア エディ・キャンベル テリー・ヘイズ ラファエル・イグレシアス 2001年 アメリカ ジョニー・デップ ヘザー・グラハム イアン・ホルム カラー/2h04 |
監督は『ポケットいっぱいの涙』でデビューした双子の兄弟アルバート&アレン・ヒューズ。1888年にロンドン、イーストエンドのホワイトチャペル・ロード周辺で売春婦ばかり5人が残忍な手口で殺害された伝説的な連続猟奇殺人「切り裂きジャック事件」を、新たな解釈で映画化したサスペンス・ホラー。事件の捜査にあたったアバーライン警部をジョニー・デップ、赤毛の売春婦をヘザー・グラハムが演じている。ビクトリア朝末期の胡散臭い世相を表現しようと、懸命にフリーメイソンやらエレファントマンやら王室の隠蔽工作などのエピソードをたくさん盛り込んでいるけれど、盛り込み過ぎて収拾がつかなくなっている。さらに、中途半端なロマンスがますます物語の焦点をぼやけさせている。アバーライン警部がアヘンの幻覚に溺れるシーンも、意味ありげに見せるので、私ははじめ、この警部はアヘンの力を借りて、不思議な予知能力でも発揮するのかしらと思って見ていたんだけど、別にそんなこともなく、ただ妻子を亡くした悲しみからアヘンに救いを求めているだけだった。ジャンル分けでは、一応サスペンス・ホラーということになっているみたいだけど、切り裂きジャック事件をモチーフにした退屈なラブストーリーにしか見えなかった。物語の終わらせ方も強引で中途半端だし。でも、切り裂きジャック事件に興味ある人には少しは面白いのかなぁ? |
PAIN ペイン | ||
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(監督) (製作年) (製作国) (出演) |
石岡正人 2000年 日本 松本未来 中泉英雄 藤本由佳 吉家明仁 小室友里 下元史朗 カラー/1h54 |
石岡正人という監督については良く知らないが、過去の作品を調べると、『痴漢白書』とか『体育の時間/ブルマから汗が・・・』などというタイトルの作品が出てきたので、おそらくAV監督なのだろう。そんな監督が、ほとんど素人同然の役者を使って撮った風俗ドキュメンタリー。主演はグラビアアイドルの松本未来と中泉英雄。東京近郊から家出してきた真里(松本未来)と敦(中泉英雄)は、とりあえず仕事を探そうとするが、そう簡単には見つからない。ひょんなことから真里は街中でパー券を売る仕事を、敦は風俗譲のスカウトの仕事をすることになる。それぞれ別の角度から風俗への扉を開くことになった二人の揺れ動く価値観と心の痛み(PAIN)を克明に描き出す。ドキュメンタリーという形で敦がスカウトしていく街の少女たちはおそらくほとんどが素人だ。「風俗」という言葉に最初は戸惑う少女たちも、「すごい金になる」という言葉を聞いた途端、急に興味を示し始める。そしていとも簡単にスカウトマンについていってしまうのだ。どうしてそこまでお金が欲しいのか、オバサンには全く理解できない。つい最近もバカな小学生4人組がバカな男に監禁された事件が起きたばかりだ。売春とか援交みたいなものは昔からあった。でもそれは特殊な事情を持った極限られた人間のすることだった。それが今ではすごく身近なところにある。買うほうも売るほうも「誰もがやっていることだから」と、後ろめたいという意識は低い。「多くの女子高生が援交で簡単にお金を稼いでいて、多くの中年男性が気軽に女子高生を買っている」という印象をマスコミが垂れ流しているせいだ。日本人は「みんながやっているから、自分も・・・」という考え方をする人が多いけど、体を売ることさえ、そのような基準でしか判断できなくなってしまった今の社会はどこかおかしい。なんだか年寄りのたわごとみたいになってしまったなぁ。 |
WATARIDORI / Le Peuple Migrateur | ||
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(監督) (製作年) (製作国) (ナレーション) |
ジャック・ペラン 2000年 フランス ジャック・ペラン カラー/1h33 |
昆虫の神秘的な世界を素晴らしい映像で捉えたドキュメンタリー『ミクロコスモス』を製作したジャック・ペランが、今回は“渡り鳥”の生態をユニークな視点で捉えたドキュメンタリー。世界20ヵ国以上で3年に及ぶ撮影と20億円もの製作費を費やし、100種類以上の“渡り鳥”が北極を目指し再び元の場所に戻っていくまでの数千キロに及ぶ旅を撮影している。カメラが鳥たちの群れの中に入り、鳥と同じ視点で捉えた映像は素晴らしく、自分も鳥たちと一緒に空を飛んでいる気分を味わえる。単なるドキュメンタリーだけに終わらず、多少の演出が入っていて飽きさせない。でも、どうして渡り鳥は渡るのだろう。不思議だ。 |
モンスーン・ウェディング / Monsoon Wedding | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
ミーラー・ナーイル サブリナ・ダワン 2001年 インド/アメリカ/フランス/イタリア ナセールディン・シャー リレット・デュベイ ヴァンソンダラ・ダス イシヤーン・ナイール シェファリ・シェティ ヴイジエー・ラーズ カラー/1h54 |
モンスーンの時期に親戚縁者を集めて豪華絢爛に行われる伝統的なインドの結婚式を舞台に、そこに集まる人々の人間模様を描いた群像劇。2001年にベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。監督は『カーマ・スートラ/愛の教科書』で、官能の世界をネットリと描いたミーラー・ナーイル。冒頭に挿入される「グローバル化(というか、アメリカ化)の功罪」について話し合うテレビの討論番組が象徴的で、この物語の根底に流れるテーマとなっている。物語には至る所にアメリカナイズされた事物が登場する。携帯電話、多機能腕時計などの身の回り品をはじめ、ゴルフ、株式投資、ロリコン趣味、女性の喫煙、婚約中にもかかわらず不倫する主人公の女性など、日常生活のいたる所に深く浸透している。例えば、ある人は喫茶店でインドの伝統的な飲み物「チャイ」を注文する際に、ダイエット・シュガーを頼む。ある男性はインド風の名前を恥ずかしく思い、英語を使うことを文明的だと考えている。結局、主人公の女性は不倫の相手に別れを告げ、親の選んだ婚約者と結婚する。そこには悲壮感は微塵も無く、晴れ晴れとした爽快感さえある。押し寄せるグローバル化の波に揉まれながら、すべてを歌と踊りで吹き飛ばしてしまう、そんなインド人のパワーに圧倒される。荒削りだけど、いい映画だと思う。 |
人生は、時々晴れ / All or Nothing | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
マイク・リー マイク・リー 2002年 イギリス/フランス ティモシー・スポール レスリー・マンヴィル アリソン・ガーランド ジェームズ・コーデン ルース・シーン ヘレン・コーカー ポール・ジェッソン カラー/2h08 |
2002年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作で、監督は『秘密と嘘』のマイク・リー。説教臭いタイトルからして典型的なフランス映画かと思っていたら、イギリスの庶民を描いた話だった。それも、どん詰まりの低所得者層の話。イギリスを舞台とした映画というと、不況を背景とした辛気臭い作品が多いけれど、これはその典型。最近は不況を脱したのかと思っていたけれど、どうやらそうでもないらしい。アメリカ同様、経済の二極分化が加速し、金持ちと貧乏人の格差は拡大する一方で、登場する主人公たちのように、その日暮らしの家庭も少なくないようだ。タクシー運転手のフィルは、スーパーで働く妻と、老人ホームで働く娘と、無職の息子の4人暮らし。息子のローリーは豚のように太った体で、一日中ソファーの上でゴロゴロしていて、全く働く気が無い。しかし、そんな息子にフィルは何も言うことができない。退屈な日々の繰り返しの中で、家族らしい会話も無く、やり場の無い倦怠感だけが漂う。そんなある日、ローリーが突然心臓発作で病院へ運ばれる。そして、ローリーの入院を機に、家族の心がひとつになったところで物語は終わる。一見ハッピーエンドのようだけど、結局は長い人生の合間に、分厚い雲の隙間からほんの僅か、太陽が顔を出したにすぎない。またすぐに隠れてしまうことは誰の目にも明らかだ。役者陣の演技は上手いし、作品として素晴らしいと思うけど、この手の映画は好きじゃない。暗すぎて、気が滅入ってくる。 |
少林サッカー / 少林足球 | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
チャウ・シンチー リー・リクチー チャウ・シンチー ツァング・カンチョング 2001年 香港 チャウ・シンチー ン・マンタ ヴィッキー・チャオ パトリック・ツェー カラー/1h52 |
2002年のW杯開催とほぼ同時期に公開され、日本のサッカー人気に乗じてヒットしたカンフー・サッカー・コメディ。少林寺拳法とサッカーを融合し、『キャプテン翼』の立花兄弟もビックリの、物理の法則を超えた荒業を連発。香港映画お得意のワイヤーワークとCG合成を上手く使い、究極の技をリアルに描いている。かつてチームメイトのハンが持ちかけた八百長話に加担したことで「黄金の右足」を折られてしまったサッカー選手のファンは、街で知り合った少林寺拳法を信奉する青年シンと共にサッカーチームを作り、サッカー界のドンとして君臨するハンに復讐する。まぁ、話の大筋は夢半ばで諦めた男の復讐劇といったところ。シンと太極拳を操る饅頭屋の娘ムイの恋などエピソードも楽しい。ファンがシンと出会うところまでが1幕、シンがかつての少林寺の仲間を集めてサッカーチームを作りチームを強化していくところまでが2幕、その後ハンのチームとの対決が3幕となる。火を噴くボールやぐにゃりと曲がるゴールポストを見て、「そんなのありえない!」と感じるか、大笑いできるかで、この映画の評価は分かれると思う。あまりにコテコテのギャグと常識を超えた展開で、笑えないという人もいるみたいだけど、この映画を真面目に見たって面白いはずがない。映画というものは、楽しければそれでいいのだ。 |
めぐりあう時間たち / The Hours | ||
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(監督) (原作) (脚本) (音楽) (製作年) (製作国) (出演) |
スティーヴン・ダルドリー マイケル・カニンガム デヴィッド・ヘア フィリップ・グラス 2002年 アメリカ ニコール・キッドマン ジュリアン・ムーア メリル・ストリープ エド・ハリス カラー/1h55 |
ピュリッツァー賞を受賞したマイケル・カニンガムのベストセラーを、ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープの豪華女優陣の競演で映画化。近頃は映画を見る観客の目も肥えてきて、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなってきた。そこで、『メメント』や『アレックス』のように時間の流れをバラバラに繋ぎ合わせて脚本に変化を付けるような映画が登場してきた。この作品もそのように、3つの異なる時代を繋ぎ合せて紡ぎ上げた映画だ。1923年ロンドン郊外、療養生活を送りながら「ダロウェイ婦人」を執筆する作家ヴァージニア・ウルフ。1951年ロサンジェルス、「ダロウェイ婦人」を愛読する主婦ローラ・ブラウン。2001年ニューヨーク、エイズを患う友人の作家の受賞パーティー準備に奔走する編集者クラリッサ・ヴォーン。時を越えてそれぞれの時間に生きる三人の女性の1日を取り出し、「誰のために人生を送るのか?」を問いかけている。さすがハリウッド映画で、抜け目が無いし、女優人の演技合戦もすごいし、脚本も良く出来ていると思うけれど、最初から最後まで緊張の糸が張り詰めっぱなしで気を抜けるところが無くて、見終わってグッタリしてしまった。ところでニコールは付け鼻だったんだね。全然気付かなかったけど。 |
ニック・オブ・タイム / Nick of Time | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
ジョン・バダム パトリック・シーン・ダンカン 1995年 アメリカ ジョニー・デップ クリストファー・ウォーケン カラー/1h29 |
ジョニー・デップとクリストファー・ウォーケンの名前に釣られて見たけれど、なんじゃこりぁ?一般人がいきなり誘拐されて、時間内に州知事の暗殺を命じられるというストーリーは、ちょっと無理があるんじゃないか?どうして州知事暗殺に素人を使わなければならないのか、どうしてジョニー演じる税理士の父娘が選ばれたのか、どうして所定時間内に殺さなくてはならないのか、といった疑問が結局最後まで解決されないまま、ずっと頭の中に?マークを抱えて見ていたせいで、さっぱり物語に入り込めなかった。ちょっと気の利いたハリウッド映画なら、その辺りの事情を強引に捻じ込めて、ハラハラドキドキのアクション映画に仕上げていくのだろうけど。どんなに面白いサスペンスを作ったとしても、そこに物語の整合性がなければ、観客はついてこないと思うんだけどなぁ。 |
妹の恋人 / Benny & Joon | ||
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(監督) (原作) (脚本) (主題歌) (製作年) (製作国) (出演) |
ジェレマイア・チェチック バリー・バーマン レスリー・マックネイル バリー・バーマン プロクレイマーズ 1993年 アメリカ ジョニー・デップ メアリー・スチュアート・マスターソン エイダン・クイン ジュリアン・ムーア カラー/1h39 |
またジョニー・デップに釣られて見てしまった作品第2弾。最近『パイレーツ・オブ・カリビアン』人気で、彼の出演作がよくテレビで放映されている。先日見た『ニック・オブ・タイム』で完全に打ちのめされた私は、正直言って、この作品にもあまり期待はしていなかったのだけれど、予想は大きく裏切られた。なぜ今までノーマークだったのか不思議なくらい素晴らしい作品だった。デップの演技が最高で、『ラスベガスをやっつけろ!』と『ギルバートグレイプ』の次くらいに良かった。物語の中心は、幼い頃両親を事故で失ったベニーとジューン兄妹。事故をきっかけにジューンは自閉症気味になってしまう。そんな妹の面倒を見続けてきたベニーは、常にジューンの事が気になって、思うように恋も出来ない。そこにちょっと風変わりなサムという青年が現れ、彼の奇妙なパントマイムにジューンは次第に心を開いていくようになる。そう言えば昔、ベニーと似たような役を『ギルバート・グレイプ』でデップが演じていたけれど、今回の彼の役はサムという喜劇王キートンに憧れる頭の弱い青年。無垢な青年の役を、まるで妖精のように演じていた。その他にも、脇役でさり気なくジュリアン・ムーアなんかも出ていたりして、すごい掘り出し物だった。 |
レザボアドッグス / Reservoir Dogs | ||
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(監督) (脚本) (編集) (製作年) (製作国) (出演) |
クエンティン・タランティーノ クエンティン・タランティーノ サリー・メンケ 1991年 アメリカ ハーヴェイ・カイテル ティム・ロス マイケル・マドセン クリストファー・ペン スティーヴ・ブシェミ ローレンス・ティアニー カーク・バルツ エディ・バンカー クエンティン・タランティーノ カラー/1h40 |
久し振りにタランティーノの作品が見たくなって、ビデオを借りてきた。もう何年も前にヒットして、異才タランティーノの名前を一躍世間に知らしめた作品だ。この作品を一言で説明すれば、宝石店強盗に失敗したギャングたちの話。冒頭、黒服に身を包んだギャングたちが、レストランで食事をしながら、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」の歌の内容について、「あれは巨根に出会って痛がるヤリマンの話だ。」などと、くだらない話に花を咲かせている。そして、この作品はずっとこのような馬鹿話の繰り返しによって成り立っている。タランティーノの無駄話に延々と付き合わされているような感じだ。役者陣にはハーヴェイ・カイテル、ティム・ロスといったいわゆる性格俳優と呼ばれる役者を揃え、その中にタランティーノ自身も交じって演技している。彼は俳優業も割りと好きらしく、その後もかなりの数の作品に出演している。各シーンは長回し・長セリフで役者泣かせだ。時間軸はばらばらに分断され、話の中心となる強盗シーンは登場しない。それでも観客には、彼らがどのように強盗を計画・実行し、その後の経過がどうなったのか、良く分かるようにできている。この作品の最大の魅力は、外見と中身のギャップにある。人は、外見と中身のギャップが大きいものに出会うと、そこにおかしみと安心を感じる。クールなこわもてたちの奇想天外な行動は、我々をなんだかホッとさせてくれる。もちろんそこには役者たちの確かな演技があってこそのものなんだけどね。何よりも作り手が楽しんで作っているのが感じられて良い。作り手が楽しんでいなければ、観客を楽しませることはできない。それは音楽のライブなんかにも言える事だと思う。 |
チャーリーズ・エンジェル フルスロットル / Charlie's Angels: Full Throttle | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
マックG ジェン・オーガスト コーマック・ウィバーリー マリアンヌ・ウィバーリー サイモン・キンバーグ 2003年 アメリカ キャメロン・ディアス ドリュー・バリモア ルーシー・リュー バーニー・マック デミ・ムーア カラー/1h46 |
前作はテレビで見たのだが、結構面白かったので、今回は劇場で見ることにした。冒頭からエンジェルたちのアクションが弾けまくっていて、十分楽しむことができる。今回の目玉は悪役をデミ・ムーアが演じている点だ。最近すっかり落ち目となり、主要作品からさっぱりお声の掛からなくなってしまったデミだが、この作品で巻き返しを図るべく、数十万ドルもかけて体全体をフルモデルチェンジした。さすがにそれだけの改造を施したおかげで、とても子持ちの40過ぎには見えない。でも、エンジェルたちだって実はそれほど若くはない。ルーシー・リューは34歳だし(もっと若いと思ってたのに・・・)、キャメロン・ディアスは31歳、一番若いドリュー・バリモアだって28歳だ。アップにすれば小じわも目立つというものだ。今回は割とルーシー・リューのかっこ良さが前面に出ていて、キャメロンはどちらかと言えばお色気キャラの扱いになっている。白のビキニ姿や、おっぱいポロリなど、サービスカット満載だ。ストーリーは3人のエンジェルたちの友情を描いたものとなっていて、ホロリとさせられるところもある。はっきり言って細かいところは良く分からなかったが、そんなのはどうでもいい。楽しければいいのだ。話の端々に、エンジェル引退をほのめかすような場面が挿入されているのが気になったが、できればいつまでもこの面子でやって欲しい。いつまでも中年女性に勇気を与えてくれる存在であって欲しい。ばあさんエンジェルだけは勘弁だけどね。 |
藍色夏恋 / 藍色大門 | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
イー・ツーイェン イー・ツーイェン 2002年 台湾/フランス チェン・ボーリン グイ・ルンメイ リャン・シューホイ カラー/1h24 |
年を取ると時々発作的に純愛映画を見たくなる。たまには心の老廃物を浄化しておかないとヤバイんじゃないかという気がするのだ。そんな訳で、打ってつけの映画を見つけた。台北を舞台にした青春映画だ。17歳のモンとユエチェンは同じクラスの親友同士。ある日、モンはユエチェンから、同じ高校に通う少年チャンが好きだと打ち明けられる。なかなか思いを伝えることのできないユエチェンに代わり、モンがラブレターを渡すことになるのだが、チャンはモンのことを好きになってしまう。ここまでは青春時代によくある話だが、この後の展開が物語をちょっぴり複雑にする。モンはチャンに「自分は女の子が好きなのだ」と告白する。実は親友であるユエチェンのことが好きなのだと。その告白が真実なのか、それとも親友のためについた嘘なのかは、最後まで分からない。おそらく彼女自身でさえ本当の気持ちは分からないのかもしれない。そんなモンのカミングアウトのおかげで、勝手に膨らませた感情の持って行き場を失ってしまった私は、完全に一歩引いてしまい、いまひとつ物語にのめり込むことができなかった。でも、繰り広げられるエピソードのひとつひとつはどれも共感できるものばかり。ユエチェンがチャンの飲んだペットボトルをコレクトしている場面に、中学時代の思い出が蘇った。それから、3人の主人公たちの爽やかさに、星ひとつおまけ気味。 |
ビューティフル・マインド / A Beautiful Mind | ||
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ロン・ハワード シルビア・ネイサー アキバ・ゴールズマン 2001年 アメリカ ラッセル・クロウ ジェニファー・コネリー エド・ハリス クリストファー・プラマー カラー/2h16 |
原作は'94年にノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの同名伝記。第74回のアカデミー賞では、前評判の高かった『ロード・オブ・ザ・リング』を制し、作品賞、監督賞など、主要4部門を受賞した。その割には、宣伝が下手だったのか、題材が地味すぎたのか、日本ではそれほど話題にはならなかった。まあ、誰も好きこのんで数学者の物語なんて観ないのだろう。予告編で見る限りでは、天才数学者がひとりの女性と出会うことで人間らしさを取り戻していった・・・と、まるで恋愛映画のように紹介されていたけれど、実際はそんな"美しい”お話ではない。自分の才能を過信した結果、気がふれてしまった男の話だ。数学者のナッシュは世の中のすべての事象を数式で証明できると考えていた。そして自分の研究に没頭するあまり、周りが見えなくなってしまうという、まったくやれやれな男なのだ。結局ナッシュは精神的におかしくなってしまい(というか、もともとおかしかったのだけれど・・・)、精神病棟に強制収容されてしまう。ここまでが前半だが、長すぎて退屈。でも、その後の展開は見事。あっと驚く事実の暴露の後には、泣かせどころ満載。ナッシュを演じたラッセル・クロウと、彼を支える妻アリシアを演じたジェニファー・コネリーも見事。 |
パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち / Pirates of the Caribbean : The Curse of the Black Pearl | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
ゴア・ヴァービンスキー テッド・エリオット テリー・ロッシオ ジェイ・ウォルパート 2003年 アメリカ ジョニー・デップ オーランド・ブルーム キーラ・ナイトレイ ジェフリー・ラッシュ カラー/2h23 |
ディズニーランドの「カリブの海賊」をモチーフとしたアクション・アドベンチャー。美術・セットなどはカリブの海賊のアトラクションそのまんま。製作は派手な爆破好きで有名なジェリー・ブラッカイマー。その割には全体的にこぢんまりとした印象。17世紀のカリブ海を舞台に、呪いをかけられた海賊たちに誘拐された令嬢エリザベス(キーラ・ナイトレイ)を助けるために、呪いの秘密を知る孤高の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)と共に立ち上がった男たちの愛と冒険のドラマ。あまり大人向けの映画では無いような気がしていたので見るのをためらっていたのだけれど、大好きなジョニー・デップが出ているので見に行った。彼にとってこれがハリウッドメジャー初出演というのはちょっと意外。ジョニー・デップは期待を裏切らずカッコ良かったのだけれど、ストーリーはいまいちスリルが無いし、平坦で、あまり印象に残らなかった。あくまでも「カリブの海賊」なので大人にはちょっと物足りないのかもしれない。かといって子供向きに作られているかといえば、そうともいえない。なんとも中途半端な作品だった。でもジョニー・デップの怪演に免じて☆ひとつおまけ。『ラスベガスをやっつけろ!』の時もそうだけど、ちょっと切れたジョニー・デップって、ものすご〜くセクシーなのよね。フン=3 |
のど自慢 | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
井筒和幸 井筒和幸 安倍照男 1999年 日本 室井滋 尾藤イサオ 大友康平 伊藤歩 カラー/1h52 |
最近よくバラエティ番組に出ては、文化人よろしく、コメンテーターとして御託を並べている井筒和幸監督作品。久し振りに彼が監督した『ゲロッパ!』は未見なのではっきりしたことは言えないが、あまりパッとした成績は残せなかったようだ。今さらジェームズ・ブラウンなんて、普通の人は興味無いよね。そんな訳で、今ではあちこちでこき下ろされている井筒監督も、ちょっと前までは、結構いい映画を作っていたのだ。題材はNHKの日曜お昼の歌番組「のど自慢」。地方の田舎町を舞台に、「のど自慢」への出場に燃える人々の、人生の断片を切り取った人情喜劇。売れない演歌歌手、赤城麗子は、新曲のキャンペーンのために久し振りに故郷の町に帰って来る。そこではもうすぐ「のど自慢」がやって来るということで、多くの人々が出場めざして必死になっていた。荒木圭介は何をやってもダメな中年男。家族を養うために、焼き鳥屋チェーン店で研修中だが、要領が悪く失敗ばかり。一念発起とばかりにのど自慢出場を決意するが、運悪く採用試験とオーディションの日が重なってしまう。地元の女子高生、高橋里香は、家族の不和の中、歌手になることを夢見ている。悩みを抱えながら懸命に生きている各人にスポットをあて、最後に人生の晴れ舞台「のど自慢」で昇華させる構成は見事。オーディションの歌をバックに、各人の奮闘努力ぶりを描いていく手法も、緊迫感があって面白い。劇中使われる音楽、舞台装置、小道具などは、実在の番組そのまま。さらに、大川栄策や坂本冬実、かつて司会を務めていた金子辰雄さんの友情出演もあり、一層“のど自慢テイスト”を高めている。 |
愛しのローズマリー / Shallow Hal | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
ボビー・ファレリー ピーター・ファレリー ショーン・モイニハン ピーター・ファレリー ボビー・ファレリー 2001年 アメリカ グウィネス・パルトロウ ジャック・ブラック ジェイソン・アレクサンダー ジョー・ヴィテレッリ レネ・カービー スーザン・ウォード アンソニー・J・ロビンス カラー/1h54 |
主人公ハルは、父親の遺言がトラウマとなり、子供の頃から外見の美しい女性ばかりを追いかけていた。チビでデブな自分の容姿はすっかり棚に上げて、外見だけでしか女性を見ることができなくなってしまったハルには、当然恋人などいるはずもない。ある日、偶然出会った心理カウンセラーに催眠術をかけられ、女性の内面の美しさが外見として見える能力を授かる。やがて、ハルは知的でユーモアのあるスリムな美女ローズマリーと出会う。しかし実際の彼女は体重300ポンド(136s)もある巨漢女性だった。ハルは彼女の美貌と心の美しさの虜になり、“本物の恋”を知る。しかし、ハルの奇妙な行動を心配した友人が、ハルに催眠術をかけたカウンセラーを探し出し、催眠術を解くように迫る・・・。 監督・脚本は『メリーに首ったけ』、『ふたりの男とひとりの女』のファレリー兄弟。催眠術をかけられた中年男ハルを演じるのはジャック・ブラック。巨漢女性とスレンダー美女の二役を演じたのはグウィネス・パルトロウ。個人的には特殊メイクで太ったグウィネスが、ほとんど後姿だけの演技で、最後のほうしか顔を見せなかったのは残念。美女バージョンでは、髪をプラチナ・ブロンドに染め、胸に詰め物を入れたグウィネスに、若干の痛々しさを感じる。そのまんまのほうが自然なかわいらしさがあると思うのだけれど・・・やはり男の幻想に仕立てあげられてしまったのか、ファレリー兄弟の趣味なのか・・・。ハルに催眠術をかける心理カウンセラーを演じたアンソニー・J・ロビンスは本人役で登場。実際に彼は、心理学の大家として、合衆国大統領から有名スポーツ選手に至るまで、様々な人物にアドバイスやカウンセリングを行っている。アメリカではその道の第一人者なのである。 |
キル・ビル / Kill Bill : Volume.1 | ||
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(監督) (脚本) (武術指導) (製作年) (製作国) (出演) |
クエンティン・タランティーノ クエンティン・タランティーノ ユエン・ウーピン 2003年 アメリカ ユマ・サーマン デヴィッド・キャラダイン ダリル・ハンナ ルーシー・リュー 千葉真一 栗山千明 ヴィヴィカ・A・フォックス ジュリー・ドレフュス マイケル・マドセン カラー/1h53 |
映画オタクのタランティーノが、チャンバラ、カンフー、ヤクザ映画、西部劇、ジャパニメーションなど、様々な要素を融合させて作った怪作。冒頭のクレジットにあるように、故深作欣二監督にオマージュを捧げた作品であり、ほとんどタランティーノの趣味で作られた作品。ここ数日、私はこの作品の☆の数を減らしたり増やしたりしていたのだが、ハッキリ言って、この作品を評価するのは非常に難しい。だから、単純に「楽しめたかどうか」で判断すると、その答えは「びみょ〜」だ。そもそもこの作品には一般的な判断基準が通用しない。なぜならこの作品は、意図的に作られた「ダメ出しどころ」に溢れているからだ。ユマの片言の日本語や、腰の入っていない日本刀さばき、首チョンパ&血糊ドピューなど、突っ込みどころ満載で、あまりにも出血多量の殺陣シーンなどは、もう笑うしかない。プロモーションビデオがあまりにもかっこ良かったので、そのつもりで見に行った人は、おそらくずっこけてしまっただろう。実際に劇場に足を運ぶ前に、私は何度もプロモを見て興奮していたのだが、はっきり言って、あのプロモは詐欺だ。どうしてあんなにもかっこ良く編集してしまったのか。あれでは本来のこの作品の持つ「臭い」みたいなものがまったく消されてしまっている。プロモを見て「キル・ビル」の世界に誇大妄想を描いていた人は、大きく期待を裏切られたのではないだろうか。『レザボア〜』や『パルプフィクション』でも見せたような、時間軸をバラバラにして繋ぎ合わせる手法は、相変わらず上手い。でも、この作品に限って言えば、タランティーノのことを良く分かっている人しか理解できないと思う。年に数回しか映画を見ない人が見ても、全然面白くないと思う。でも、これだけの大金使って、好きなことができるなんてホント羨ましいっす。 |
ブリスター! BLISTER | ||
[データ] | [感想] | |
(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
須賀大観 猪爪慎一 2000年 日本 伊藤英明 真田麻垂美 鮎貝健 今村明宏 桜田宗久 山崎裕太 つじしんめい カラー/1h48 |
“Blister”とは爆撃機の胴体にある透明の覆いのこと。そこから、フィギュア・コレクターの間では、中身が透けて見えるパッケージのことを“ブリスター”という。あるいは、パッケージに入ったままの未開封のフィギュアそのものを“ブリスター”と呼ぶ。世の中には様々なコレクターがいるもので、手に入れたフィギュアを箱から出さず、ながめているだけで満足という者がいる。そんなことで何が面白いのか分からないが、彼らの世界では、箱から出した時点でその価値はガクンと下がってしまうのだそうだ。それ故に、中にはまったく同じフィギュアを“遊び用”と“収集用”の2つ買う者もいるという。私にはさっぱり理解できない世界である。コレクターにありがちな話だが、好きな物を集めているうちに、次第に“集めること”自体が目的になってしまうことがある。せっかく苦労して手に入れても、すぐにしまい込んでしまったり、手に入れた途端に興味を失ってしまうことは、誰でも一度は経験があるだろう。この映画は、そんなマニアたちの世界を、皮肉を交えながらディープに描き出している。伊藤英明演じる主人公ユウジは、熱烈なアクション・フィギュアのコレクター。ユウジは誰も見たことがないという幻のフィギュア“ヘルバンカー”を探している。ヘルバンカー探しを通じて、様々な人と出会う中で、ユウジはやがて、自分にとって本当に大切なものは何かを知る。物語は現在と未来の二重構造になっていて、それぞれがそれぞれの伏線となっている。ちょっぴりSFチックなのも面白い。邦画にしては映像と編集のセンスがいいし、すべてがハッピーエンドに納まっていて後味がいい。 |
“アイデンティティー” / Identity | ||
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(監督) (脚本) (美術) (音楽) (製作年) (製作国) (出演) |
ジェームズ・マンゴールド マイケル・クーニー マーク・フリードバーグ アラン・シュルヴェストリ 2003年 アメリカ ジョン・キューザック レイ・リオッタ レベッカ・デモーネイ アマンダ・ピート ジョン・ホークス アルフレッド・モリナ クレア・デュヴァル ウィリアム・リー・スコット プルイット・テイラー・ヴィンス ジョン・C・マッギンレー ジェイク・ビューシイ ブレット・ローア レイラ・ケンズル カラー/1h30 |
監督は『17歳のカルテ』、『ニューヨークの恋人』のジェームズ・マンゴールド。雨に閉ざされたモーテルを舞台に、ごく限られた空間で展開される“ワンロケーション”ミステリー。冒頭、「この映画の秘密を誰にも話さないでください」とテロップを出す手法は、なんだかすっかり古臭くなってしまったけれど、実はこれが全く先の読めない展開で、すっかり一杯食わされてしまった。中盤あたりで、すっかり謎を解いてしまった気分になっていたのだが、全然ハズレだった。後半部分で物語の重要な秘密が明らかにされるのだが、そこからエンディングにむけて観客はもう一度ショックを受けることになる。なかなか凝った脚本で、久し振りにミステリーを堪能することができた。 ある嵐の晩、連続殺人犯の再審理が行われていた。なんと死刑執行の前夜に、犯人の無実を示す有力な証拠が見つかったのだ。そして、再審理のため、囚人は移送されることになる。その日は記録的な大雨だった。人里離れたモーテルでは、1日の仕事を終えた管理人がくつろいでいた。そこへ、妻が事故で大怪我をしたという男が駆け込んできた。救助を求めるが、あいにく電話が繋がらない。その妻をはねたのは大女優の運転手エドだった。エドは病院を探して車を走らせるが、ひどい冠水のため再びモーテルへ戻ってくる。モーテルには、嵐で行き場を失った人々が次々と集まってくる。そこには移送中の囚人も含まれていた。そんな折、手錠をかけていたはずの囚人が逃げ出してしまう。直後、一人目の犠牲者の死体が発見され、モーテルはパニックになる。 後半の種明かしで、「なるほど、そういうことだったのか!」と、ようやくタイトルの持つ意味に気付く。実はすべての秘密がタイトルに隠されていたのだ。そしてすべての疑問がスルスルと解けていく爽快感を味わっているところへ、再びガツンとやられる。この手の映画はネタバレの危険があるため、あまり派手に宣伝できないのは残念。そもそも公開が東宝系という時点でアウトなのか。主役の運転手エドを演じたジョン・キューザックはいい役者だ。なんとなく雰囲気がケヴィン・スペイシーに似ている。ちょっぴり怪しげな人物を演じさせればピカイチのレイ・リオッタも良かった。 |
イン・ディス・ワールド / In This World | ||
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(監督) (製作) (脚本) (撮影) (音楽) (製作年) (製作国) (出演) |
マイケル・ウィンターボトム アンドリュー・イートン アニタ・オーヴァーランド トニー・グリゾーニ マルセル・ザイスカインド ダリオ・マリアネッリ 2002年 イギリス ジャマール・ウディン・トラビ エナヤトゥーラ・ジュマディン カラー/1h29 |
2003年ベルリン国際映画祭、金熊賞受賞作。2000年、イギリスへの不法入国を試みた中国人58名の死体が、トラックのコンテナの中で発見されるという事件に衝撃を受けたウィンターボトム監督が、難民問題に真正面から取り組んだ異色の社会派ドラマ。主人公は、パキスタンのアフガン難民キャンプで生まれ育った15歳の少年ジャマール。彼は従兄弟の青年エナヤットと共にロンドンに旅立つことになった。エナヤットの父親が息子の将来を案じて、密入国業者に大金を払ったのだ。まだ見ぬ世界に未来への夢と希望があることを信じて、二人は死と隣り合わせの過酷な旅に出る。 先進諸国にとって難民問題は非常に難しい課題だ。日本政府は、このほど難民認定制度の改善に取り組み始めた。しかし他の先進諸国に比べて難民認定者数はダントツに低い。難民にとって日本は非常に厳しい国なのだ。だからといって、私は、安易な難民の受け入れには反対である。なぜなら、この国の治安は“外国人を容易に受け入れない”厳しい体制によって維持されていると思うからだ。最近の中国人留学生の事件などがいい例だ。そもそも、この世界一物価の高い国で、貧しい国から来た外国人がやっていけるはずがない。彼らはジャマールのように夢と希望を持って日本にやってくるが、その多くが夢破れて、犯罪組織へ巻き込まれていく。私は決して差別主義者ではない。人は生まれた土地で家族と共に一生を送るのが一番幸せなことだと思っている。日本が戦後自力で国を再建したように、真に自立した国家を作るための援助こそが必要なのではないだろうか。 |
豚の報い | ||
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(監督) (原作) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
崔洋一 又吉栄喜 崔洋一 1999年 日本 小澤征悦 早坂好恵 あめくみちこ 上田真弓 岸部一徳 カラー/1h59 |
芥川賞を受賞した又吉栄喜の同名小説の映画化。『共よ、静かに瞑れ』、『Aサインデイズ』など、沖縄を舞台にした作品を多く発表してきた崔監督が、沖縄への熱い思いの集大成として挑んだ作品。主人公正吉は、沖縄生まれの19歳の大学生。場末のスナックでは、ミヨ、暢子、和歌子の3人のネーネー(姉々=お姉ちゃん)たちが、心に癒せない傷を抱えながら、常連客の正吉をいつものようにからかっていた。ある夜、店にトラックから逃げ出した豚が飛び込み大騒ぎになる。そんな中、和歌子は豚に襲われマブイ(魂)を落として気を失った状態になってしまう。そんな和歌子のため、正吉は神の島と呼ばれる“真樹島”のウタキ(神が降りてくる神聖な場所)へ行き、ウガン(祈祷)をしようとネーネーたちに持ちかける。が、この島で生まれた正吉にはもうひとつ別の目的があった・・・。物語は“豚の呪い”をめぐる因縁話だが、正吉の“自分探しの旅”でもある。正吉を演じた小澤征悦は、これがデビュー作だそうで、あまりの若さにビックリ。沖縄の青い空と海はもちろんのこと、沖縄出身のタレントを多く使い、沖縄料理の並ぶ食事シーンなど、沖縄独特のムードが全編に溢れている。当然、登場人物は沖縄方言で会話をする。正直言って、話の内容の半分も聞き取れず、登場人物たちが何を話しているのか、さっぱりわからずに話は進んでいくのだけれど、不思議とそんなことは気にならない。細かい事など、どうでもよくなってしまうのだ。それでも全体を通してみれば、何かしら伝わってくる。そんな不思議なムードを持った作品なのだ。 |
女はみんな生きている / Chaos | ||
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(監督) (脚本) (製作年) (製作国) (出演) |
コリーヌ・セロー コリーヌ・セロー 2001年 フランス カトリーヌ・フロ ヴァンサン・ランドン ラシダ・ブラクニ リーヌ・ルノー オレリアン・ウィイク ハジャール・ヌーマ ヴォイテク・プショニャク クロエ・ランベール カラー/1h52 |
監督・脚本は『赤ちゃんに乾杯!』のフランス人女流監督コリーヌ・セロー。平凡な主婦が、ある日突然謎の娼婦に出会ったことから、彼女の奥底に眠っていた本能が目覚めるという、まさに“シネスイッチ系”の女性映画。もちろん観客は9割方女性(平日昼間ということもあるけどね)。 エレーヌは家事に追われるだけの日々を送る平凡な主婦。夫ポールは、そんなエレーヌのことを家政婦ぐらいにしか思っていない。大学生の息子ファブリスは、家を出てガールフレンドと同棲中。ある夜、エレーヌとポールはパーティーに向かう途中、男たちに追いかけられ血まみれになった娼婦に出会う。しかし、助けを求める女性の鼻先でポールは車のドアをロックし、その場から立ち去ってしまう。その女性の安否が気がかりなエレーヌは、彼女が収容された病院を探し出すと、家事を放り出し、つきっきりで看病をはじめるのだが・・・。娼婦が回復してからの女性たちの反逆ぶりが見もので、女の底力を見せつけてくれる。まさに“女は度胸”の世界。 娼婦ノエミを演じたのはアルジェリア系美女、ラシダ・ブラクニ。この作品でセザール賞有望若手女優賞を受賞。バカ息子ファブリスを演じたオレリアン・ウィイクも私好みの美形で将来有望。この手の映画を男性が見て、どのように感じるのかはさておき、見終わって、自分が女であることへの不思議な満足感&高揚感があった。 |