【柿沼弘子の勝手にシネマ



スタンド・バイ・ミー

監督:ロブ・ライナー
出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、ジェリー・オコンネル

16th Nov. 2001

 1986年公開作品のリバイバル。早稲田松竹に『ハード・デイズ・ナイト』を見に行ったら、たまたま二本立てでやっていて、あまりの懐かしさに、予定外だったけど見てしまった。ベン・E・キングの主題歌が懐かしい。原作はスティーヴン・キングの短編小説“The Body”。「キャリー」「シャイニング」「デッド・ゾーン」「ミザリー」「ペット・セメタリー」「ニードフル・シングス」「ショーシャンクの空に」「痩せゆく男」「グリーン・マイル」等、キングの作品は今までいくつも映画化されてきたけれど、私はどの作品も結構気に入っている。

 舞台は1959年夏、オレゴン州の小さな町。第二次世界大戦が終わり、ベトナム戦争が本格化する前の、古き良き時代のアメリカ。人々が束の間の平和を取り戻していた時代。しかし、その戦争がもたらした恩恵の裏で、戦争の後遺症が、わずかながら人々を苦しめていた時代でもある。その証拠に登場人物の少年テディの父親はノルマンディーでの戦闘体験によって精神を患った人物として描かれている。作品は、“モダン・ホラーの帝王”キング原作にしては恐怖色は薄く、4人の少年のひと夏の体験を描いたノスタルジーあふれる青春映画となっている。描かれた時代は、まさに原作者キングの少年時代に相当する。成人して作家になった仲間のひとりが語るという形をとっていて、キングの半自伝的な作品ともみれる。若干の脚色を除いて、ほぼ原作に忠実に作られている。

 12歳のゴーディ(ウィル・ウィートン)、クリス(リヴァー・フェニックス)、テディ(コリー・フェルドマン)、バーン(ジェリー・オコンネル)の仲良し4人組は、ある日、30キロメートル先の森の中に、行方不明になっている少年が列車に轢かれ野ざらしになっているという噂を聞きつける。死体を発見することで有名になりたいと、少年たちは冒険の旅に出る。町から外に出たことのないゴーディたちは、初めての冒険旅行へと出発するが、彼らの行く手には様々な困難が待ちうけている。そして、この旅を通じて少年たちは少しづつ大人の階段を昇っていく。この時期の友情について、「私はこの12歳のときの仲間のような友人は、その後ひとりももてなかった。」という語り手の言葉が印象的だった。余談だけど、クリスを演じたリバー・フェニックスは、その後、原作でのクリスの死とほぼ同じ23歳の時、突然の若すぎる死を迎えている。

 実はこの作品は高校生くらいの頃一度見ている。しかし、正直言ってその時は、何がいいのかさっぱり分からなかった。宝物は、持っている時には、その良さはなかなか分からないもの。無くしてしまってから、その大切さに気付くのだ。大人になり、日々の雑事に追われ、幼い頃の思い出が遠いものとなってしまった今だからこそ、余計に輝いて見えるのだろう。今では悲しいくらい、心が鈍感になってしまった。今ではすっかり色褪せてしまった幼い頃の思い出を蘇らせてくれるこの作品は、見る側が年をとればとるほど輝きを増していくだろう。私もすっかり年を取ってしまったようだ。★★★★★