【柿沼弘子の勝手にシネマ】
マンハッタン
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、ダイアン・キートン、メリル・ストリープ
10th Sep. 1999
シネスイッチ銀座に、ウディ・アレン特集のパンフレットが置いてあった。手に取って見ると、1
978年にアカデミー賞を獲得した『アニー・ホール』をはじめ、近年までに大ヒットした10作品を
上映するらしい。上映場所はキネカ大森ということで私の家からは少し遠いが、彼の往年の作品
をスクリーンで見られということで、これは是非見なければと思った。ウディ・アレンといえば昨年
『世界中がアイ・ラブ・ユー』が日本で大ヒットし各地の劇場でロング・ラン上映されていたが、実
は私が初めて見た彼の作品はこの『世界中〜』だ。ミュージカル形式で構成されたこの作品を最
初に見てしまうと、アレンの作品は明るく楽しいラブ・ストーリーが中心なのかと思ってしまうが、
どちらかといえば地味な作品が多い。アレンの作品に登場する主人公はどれも似たような中年
男で、世の中を斜に見ているところがあり、神経質でコンプレックスを抱えている。ユーモアのセ
ンスに溢れていてセンチメンタル。そのくせ女好きで、なよなよとしたところが母性本能をくすぐる
のか意外ともてる。まるでアレンそのものを描いているようだ。ところでこの男、一体いくつなのだ
ろう。この作品は1979年に撮影されていてそれから30年も経っているのに、容姿がその頃とま
ったく変っていない。まったく年齢不詳の男である。ストーリーは、大都会にありがちな複雑に絡み
合った大人の恋の物語。アレン演じるTVライターのアイザックは仕事、年齢、その他もろもろに悩
みを持つ中年男。2度の離婚暦があり前妻からは夫婦生活の暴露本を出すと言われ、それをや
めるよう説得するがうまくいかない。仕事にもうんざりし小説家になろうと番組を降りるが、それも
またうまくいかない。救いは何度かベッドを共にした生意気な女子高生だけ。大人びた彼女にな
ぐさめられている時が一番のやすらぎ、といったちょっぴりおセンチな中年男の話。「ラプソディ
・イン・ブルー」をバックに白黒で捉えたマンハッタンの情景が印象的だった。
それにしても白黒映画って、カラーと違ってスクリーンが暗いせいか眠くなるんだよね。仕事帰り
で疲れていたせいもあるけど…。作品のせいでは無いと言いたいけど、やっぱりアレンの作品って
眠気を誘うものが多いよね。刺激的な映像が少なくて、ありふれた日常を描いた作品が多いからな
のかもしれないけど。そして、それがまた彼の作品の持ち味なのだろうけど。アレンファンには申し
訳ないけど、私には少し退屈だったので★★です。
【※】ちなみに★は5点満点だよ。