【柿沼弘子の勝手にシネマ】
バルニーと彼のちょっとした心配事
監督:ブリュノ・シッシュ
出演:ファブリス・ルキーニ、ナタリー・バイ、マリー・ジラン
22nd Jun. 2001
予てより楽しみにしていたフランス映画祭の3日目に見た作品。会場はみなとみらいにあるパシフィコ横浜。きっと土日は恐ろしく混雑するのだろうが、平日だったので、とても空いていて良かった。私は前売り券を買っていたのだけれど、当日でも少し並べば十分入れたみたいだ。開演前にスポンサーが配っていたペリエでのどを潤す。監督のブリュノ・シッシュは、この作品が初の長編という34歳の若手監督。今回の映画祭では、本年度のセザール賞3部門ノミネート作品であるジェラール・コルビオの『王は踊る』や、カンヌ映画祭コンペ部門出品作品であるセドリック・カーンの『ロベルト・ズッコ』などの話題作に埋もれてしまって、あまり目立たない存在だったけど、良い買い物をしたと思う。あらためてフランス映画界の層の厚さを感じる。上映時間は1時間20分ほどと短く、わりとこざっぱりしていて、フランス映画お得意の人物描写に焦点をあてたラブ・ストーリー仕立てのスラップスティック・コメディーとなっている。
主人公バルニーは妻も子供もいる中年サラリーマン。証券会社に勤め、毎日フランスのカレー(あの「カレーの市民」のカレー)の自宅からロンドンまでオリエントエクスプレスに乗ってドーバー海峡を越え、遠距離通勤している。おまけに若くて美しい愛人と献身的な情夫もいて、この3人の間を器用に渡り歩きながら幸せな日々を送っていた。しかしこんな生活がいつまでも続くわけもなく、災いはバルニーの45歳の誕生日を迎える日に突然やって来る。なんと、彼を愛する3人がそれぞれ、彼の誕生日にヴェネチア旅行をプレゼントしたのだ。しかもよりによって同じ日の同じ電車の同じ車両を。バルニーは妻の招待だけを受け、後の2人には別れの手紙を出すことにする。しかし、うっかり宛先を取り違えてしまい、そこから彼の憂鬱な日々が始まる。
主人公バルニーには、『リディキュール』『ボーマルシェ』などで知られる演技派ファブリス・ルキーニ。バルニーの妻リュシーを、『緑色の部屋」『ポルノグラフィックな関係』の実力派ナタリー・バイ。バルニーの愛人マルゴには、『ラスト・ハーレム』のマリー・ジラン。その他、ユーゴ・スペールなど、魅力溢れる俳優陣が脇を固めている。ちなみにナタリー・バイはブリュノ・シッシュ監督が90年に撮った短編にも出演している。上映後のティーチ・インではナタリー・バイとマリー・ジランが来ていた。私の席は割と前の方だったので、二人の顔をよーく見ることができた。マリー・ジランはスタイル抜群、黒髪のストレートロングでペネロペ・クルス風の顔立ちの美しい女優。ナタリー・バイも綺麗でスタイル良くて、とても50代には見えなかった。
私はフランス映画のコメディが大好きだ。おそらくフランス語の響きが気持ち良く心をくすぐるのだろう。ラブ・ストーリーも良いかもしれないが、フランス語はコメディと相性がいいと思う。怒鳴り声もフランス語だと、なんとなく滑稽だし。おそらく私がフランス語を全く解さないからなのだと思うが。(大学の時フランス語を取っていたにもかかわらず。)それから、この作品はどこかの会社が日本での配給権を買い取ったらしいので、そのうちどこか単館系の映画館で公開されることになると思う。公開が楽しみだ。★★★★