【柿沼弘子の勝手にシネマ



2001年宇宙の旅〈新世紀特別版〉

監督:スタンリー・キューブリック
出演:キア・デュリア、G・ロックウッド

nd May 2001

 初版公開は1968年。原作・脚本はアーサー・C・クラーク。冒頭に流れる音楽は、この作品を見たことのない人でも、一度は聞いたことがあるだろう。よくイントロ・クイズで使われるあれだ。私はこの作品について、ほとんど何の予備知識も持たずに見に行った。知っている事といえば、誰もが知っている有名なテーマソングと、宇宙船に積まれたハル9000というコンピュータくらいだ。突然現れた黒い板が「モノリス」という名前だということも知らなかった。上映時間は2時間29分で、極端に長いというわけではないけれど、この約2時間半という時間が私には恐ろしく長い時間に感じられた。70ミリ・シネラマ版で作られたこの作品はやはり劇場の大スクリーンで見なければ意味がない。家の小さなテレビで見たのでは、この作品の持つ素晴らしさは半減してしまうのだ。そしてその威力は冒頭いきなり発揮されるのである。人類誕生以前の地球、地上に人工的建造物が何もなかった時代、あるのは地平線の広がる大平原だけだった。そして類人猿たちの目の前に、ある日突然謎の黒石板「モノリス」が現れる。類人猿たちがモノリスに触れたとたん、場面は2001年に変わる。そこにはこの作品の制作当時、思い描けるだけ描いた未来の姿が描かれていた。人類はすでに宇宙ステーションを持っていた。その内装は私に少しお洒落な美容室を思い出させた。そして、もちろんテレビ電話もある。
 この作品には象徴的なものが数多く出現する。宇宙船ディスカバリー号は人間の精子を象徴しているのだという説がある。そして、最後にディスカバリー号が任務を遂行すべく木星(木星は卵子か?)に到達すると、宇宙空間に巨大な赤ん坊が出現する。つまり、受精して子供ができたということらしいが、真意はさだかではない。途中、コンピュータのハルが反乱を起こすところまではストーリー性は見られたのだが、その後からはキューブリックが何を言いたいのか、さっぱり?だった。「モノリス」とは一体何物なのか。タイム・マシンを象徴しているのだろうか。最後のホテルの部屋みたいな場面もさっぱり分からない。他にこの作品を見た何人かに聞いてみたけれど、誰ひとりとして明確な答えは返ってこなかった。まあ、原作を読めば何か分かるのかもしれないけど、誰か分かる人いたら教えてください。
 劇場を出る時、近くにいた男性が「このまま残って、続けてもう一度見たい。」といっているのを聞いて、根性あるな、と思った。最初こそ大スクリーンに映し出された巨大な地球と、大きな宇宙船を見て「わぁ〜、すげ〜。」と感動していたのだが、あまりのテンポの遅さと、睡眠不足が重なって、意識を保つのがやっとだった。クライマックスの異空間トリップ時のサイケデリック映像でさえ、私の視神経を刺激することはできなかった。「美しき青きドナウ」が子守り歌のように鳴り響いていた。生まれて初めて黒沢映画を見た時の気分にとてもよく似ていると思った。私には天才の考えていることはよくわからないけれど、あれだけのものをあの時代に作ったのは凄い!ということで、星がひとつ増えるのである。★★★★★