【柿沼弘子の勝手にシネマ



ザ・ダイバー

監督:ジョージ・ティルマンJr.
出演:ロバート・デ・ニーロ、キューバ・グッディングJr.、シャーリズ・セロン

24th Apr. 2001

 霞ヶ関イイノホールでの試写。ここのホールはほんと入り口が分かりづらい。この作品はアフリカ系アメリカ人で初めて海軍のマスター・ダイバーとなったカール・ブラシアという男の物語で、実話をもとに脚本化した作品。主人公カール・ブラシアを、キューバ・グッディングJr.、鬼教官ビリー・サンデーをロバート・デ・ニーロが演じている。キューバ・グッディングJr.はこの作品での水兵役が買われたのか、『パール・ハーバー』でも水兵役で登場する。カールは貧しい小作農に生まれ、幼い頃から黒人であるがゆえの親の苦労を目の当たりにしていた。青年になったカールはそんな両親を思い海軍に志願する。田舎育ちで、もともと泳ぎが得意だったというのも海軍に志願した理由のひとつだった。そして父親の「何でも一番になれ。」という言葉を胸に、海軍のマスター・ダイバーを目指す。しかし、黒人であるカールには数々の苦難が待ち受けていた。そもそも当時(1950年〜60年代)は、まだまだ人種差別意識が根強く残っていて(特に軍隊においてはなおさら)、黒人の身にあっては、ダイバーになるための養成所に入所することさえ許されなかった。たとえ入所しても黒人の仕事はコックか雑用しかない。しかし苦労の末、なんとか養成所に入ったカールを待ち受けていたものは、ひどい差別といじめだった。そもそも教官が先頭を切っていじめるのだからどうしようもない。そして幾多の苦労を乗り越えて、カールはついにマスター・ダイバーとなる。そしてマスター・ダイバーとして順風満帆な人生をすべりだそうとした矢先、任務中の事故で片足が不自由になってしまう。しかし彼はあきらめず、不自由になった足を切断し、偽足を付けて再び海に潜る事を決心したのだ。
 相変わらずロバート・デ・ニーロの演技は切れていた。それにしても上演時間2時間8分というのは長い。中盤をもう少し上手くまとめて、サンデーの過去についてもっと言及しても良かったのではないかと思う。サンデーがなぜそれほどまでに黒人を忌み嫌うのか、そうすればもっとカールとサンデーの確執が現実味を帯びてくると思うし、その辺を上手く描かないとサンデーがただの酒飲みの短気で意地悪な教官で終わってしまう。最後はサンデーもカールに協力するようになって、美しいお話のように思えるのだけれど、結局サンデー自身の名誉回復のために協力してるだけなんだよね。
 途中、カールが潜水訓練している最中にソ連の潜水艦が横切り、あやうく巻き込まれそうになる場面がある。水上で待機する船の中で、例の「ソナー」で発見されて事無きを得るのだが、そんなぎりぎりになるまで潜水艦が近づいていた事に気付かないなんて、そんな訳ないだろうと思いつつ、この間のえひめ丸の事件を思い出してしまった。ラストで泣いている人がけっこういたみたいだけれど、いかにもお涙頂戴的な終わり方で、私はなんとなくわざとらしさを感じてしまう。私は性格が歪んでいるのかもしれない。帰り際、出口のところに身障者ダイビング指導団体「JURIA」のチャリティー募金箱が置いてあった。「なんだそういうことか、上手い手だな」と思いつつ、私も少し寄付をする。★★