【柿沼弘子の勝手にシネマ】
パール・ハーバー(アメリカ公開版)
監督:マイケル・ベイ
出演:ベン・アフレック、ジュシュ・ハートネット、ケイト・ベッキンセール
2nd Jun. 2001
7月14日の日本公開に先駆けて、ホノルルで『パール・ハーバー』を見た。私たちは映画を見る前に、アリゾナ記念館で予習をしていったので、真珠湾攻撃のシーンは興味深く見る事ができた。アリゾナ記念館には日本軍が使った本物の魚雷(不発弾)や、戦艦アリゾナの模型、日本軍のゼロ戦や戦艦あかぎなどの模型が展示されている。そしてどのようにしてゼロ戦から魚雷が発射されたかとか、どのように真珠湾攻撃が始まったかなどが詳しく説明されていて興味深かった。作品中、ゼロ戦から魚雷が発射されるシーンは、魚雷の目線で描かれていて凄かった。恐るべしCG。ラブストーリーに多少冗長なところを感じたのは、英語で細かいニュアンスがつかめなかったせいか?でも3時間は長い。かなり国民感情を煽るようなシーンもあった。攻撃され海に沈んでいくアメリカ兵の上に星条旗がはためいている場面などは、日本人の目には痛いシーンだ。先日ホノルルで行われたワールド・プレミア試写会で日本の記者がシャットアウトされたのもわかるような気がする。あたりまえだけど、私たちの周りはすべてアメリカ人で、アメリカの艦隊が攻撃される度に、口々に「オーマイ!」とか「ジーザス!」とか言っていた。一緒に見ていた相棒が言うには、隣に座っていた黒人が私たちの方をちらちらと見ていたそうだ。アメリカ本土で見た人の話だと、東京空襲の場面で拍手が起きたり、映画が終わったあと「ジャップを殺せ!」と叫ぶ人がいたみたいだけど、幸いにもハワイではそんなことは起こらなかった。でも私たちってほんと勇気あるよ。日本での興行収入を大いに期待したブエナ・ビスタの話では、日本人の人間性を重視して描いたということだが、それははっきり言って嘘だ。日本人はアメリカ人の感情を昂揚させるための駒であり、平和な日曜日を台無しにした憐れな敵としか描かれていない。
それからかなり日本を勘違いしたような場面も多数あり。山本五十六率いる日本軍が、神社の鳥居の前で作戦を練っている場面とか、東京空襲で振り袖を着て番傘をさした女の人が平等院みたいなところで天を仰いでいる場面とか(おそらくこれは日本ではカットだろうな)かなり笑わせてもらった。何といっても鳥居の下に旭日旗が掲げてあるのには笑った。どうやらアメリカ人の頭の中には「日本=神社の鳥居」というイメージが強いらしい。それから日本人がかなり出てくるんだけど、おそらく純粋な日本人の俳優を使ってないので、日本語がたどたどしくて台詞が棒読なのも笑った。この辺は日本公開版はどうするんだろう。声を吹替えなおしたりするのかなぁ。まあ、とにかく別の意味で面白かった。日本人としてはずかしい場面が盛り沢山で、マイケル・ベイに「日本はこんなんじゃないんだよ。」とはっきりと言ってやりたい。
日本では「ベン・アフレック主演」と、「真珠湾攻撃の大スペクタクル」と、「戦争に翻弄された若者の愛と友情」を宣伝文句に売り出しているようだけど、はっきり言える事は、かなり反日感情が強く出た作品だということ。だから、おそらく日本公開版はもう少しソフトになって登場するだろうといわれている。この作品に「スペクタクル」と「愛と友情」を求めて日本人が見て、「感動した」などと簡単に言って欲しくない。普通の日本人が見たらうんざりするような映画だから。最後に私の個人的な悪趣味で言えば、ベン・アフレックとマット・デイモンとグィネス・パルトロウの三角関係で見たかった。それからどうせ日本をターゲットにするなら、山本五十六はマコよりも健さんあたりにしておいたほうが、中高年層が呼べて、よかったんじゃないのかな。『ホタル』の人気凄いみたいだし。★★