【柿沼弘子の勝手にシネマ】

交渉人

監督:ゲイリー・グレイ
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ケビン・スペイシー


27th Aug. 1999


 実際にセントルイスで起きた人質事件を題材としたこの作品は、『人質交渉人(ネゴシエーター)』

という、これまであまり知られていない警察のプロフェッショナルを描いた作品だ。サラリーマンの私

は「交渉人」と聞いて思わず、公証人役場のさえない公証人を思い浮かべてしまった。日本人にはあ

まりなじみのないこの言葉、交渉人とは人質をとって立てこもる凶悪犯を相手に、武力を用いずに言

葉巧みに説得し、事件解決に導くプロのこと。いつ気が変わって人質を傷つけるかわからない犯人

に対し、なるべく犯人の気分を害さないように、一つ一つの言葉を慎重に選びながら、犯人を説得し

ていく。危険性の高い強行突入はなるべく避け、人質の命を第一と考える。おそらく本来ならば見過

ごしていたであろう、このタイトルインパクトの弱い映画を見ようと思ったきっかけは、私の弟がケビ

ン・スペイシーのファンで、この映画を見たがっていたので、変わりに見てやろうと思ったからだ。  

 主人公はシカゴ警察でトップの手腕を誇る人質交渉人のダニー・ローマン(ジャクソン)。しかし、あ

る日、ローマンは、何者かの罠にはめられて、殺人罪と横領罪の濡れ衣を着せられてしまう。切羽詰

まったローマンは、自分の身の潔白を晴らすために、自ら人質を取って立てこもってしまう。そして、そ

の交渉の相手にクリス・セイビアン(スペイシー)を指名する。常識からはとうてい考えられない強引な

ストーリーだが、ジャクソンとスペイシーの演技はそんなことはどうでもいいと思わせるほど白熱してい

た。まさに頭脳と頭脳との戦い。二人の抜群の演技力でストーリーに対する不安はまったく忘れてい

た。この作品は当初、主演はサミュエル・L・ジャクソンではなくシルヴェスタ・スタローンで企画されて

いたらしい。おそらくスタローンだったら、まったく違った作品に仕上がっていただろう。一つだけ残念

だったのは、最後の真犯人が見つかる場面はもう少し考えて欲しかった。最後の最後まで誰が真犯

人なのかわからないのは良かったけど、最後によくわからないまま真犯人が見つかり、逮捕されてし

まったのはちょっと残念だった。私の後ろの席の人も誰が犯人なのかよくわからなかったようだ。で 

もジャクソンとスペイシーの演技が最高に良かったので★★★★です。                 

                                          

 
【※】ちなみに★は5点満点だよ。