【柿沼弘子の勝手にシネマ



シザーハンズ

監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー、ヴィンセント・プライス

21st Apr. 2001

 公開は1990年。監督はティム・バートン。彼の作品はどれも「大人のためのおとぎばなし」といった感じで、私は大好きだ。コーエン兄弟、クエンティン・タランティーノと並び、私の好きな監督のひとりだ。
 ある雪の降るクリスマスの夜、幼い少女がおばあさんに「どうしてこの町には雪がたくさん降るの?」と質問する。そして物語が始まる。その昔、町外れの山の古城にひとりの老科学者が住んでいた。彼は人造人間を作りエドワードと名前を付けるが、両手を仕上げる前に死んでしまう。取り残されたエドワードは、近くにあったはさみを自分の腕に付ける。それでタイトルがシザーハンズ(はさみの手)なのだ。やがて、ある主婦に発見されたエドワードは人間の町で生活するようになり、人間の娘(ウィノナ・ライダー)に恋をする。このエドワードを演じたのが、これまた私の大好きなジョニー・デップ。ティム・バートンとジョニー・デップの組んだ作品は、この他に『エド・ウッド』があるけれど、こちらも私の大好きな作品です。ジョニー・デップという俳優は割と癖のある役柄が多いのだが、その度に彼は素晴らしい演技を見せてくれる。『エド・ウッド』での女装癖のある映画監督、『ラスベガスをやっつけろ!』でのジャンキーのチンピラ、『ドン・ファン』での勘違い男、『ノイズ』での宇宙人に魂を乗っ取られた(?)宇宙飛行士、『ギルバート・グレイプ』での心に陰のある青年など、枚挙にいとまがない。最近では『ショコラ』で、まともそうな青年の役をやっているみたいだけれど、こちらは未見なので分からない。端正なマスクで、どんな役柄でもこなしてしまう彼の演技力って本当にすごいと思う。そして今回の「はさみ男」では、ひじから先にはさみを付け、顔面を真っ白に塗り眉毛をつぶし、ロボットのような動きで、ほとんど目の表情だけで演技している。目の表情だけで喜怒哀楽を表現できるなんて素晴らしい。人間の娘にかなわぬ恋をした時に、ふっと見せる物悲しい瞳が印象的だった。
 それからもう一つこの作品の楽しいところは、色使いがとてもかわいらしいところ。舞台となる町の家や車はどれもパステルカラーでかわいらしく、登場人物たちの衣装もカラフル。さらに部屋の内装や小物に至るまで、色使いが細やかに配慮されていて、女の子だったら見ていてきっと「かわいー」を連発するはず。それから、老科学者が発明した「自動クッキー作り機」の動きがとてもかわいらしい。私自身この作品を見ながら、「かわいい〜」を100回くらい連発した。そして、物語がおとぎばなしにありがちなオチに入っていくと、作り話とは分かっていながらも、あまりの切なさに涙が止まらなかった。(おそらくこの作品を見て泣く人はあまりいないだろう。そう言えば私はこの手の作品に弱いな。『美女と野獣』でも泣いたし…。)最後は本当に感動した。この作品は女性とロマンチストな男性には特にお勧めだ。
 余談だけど、この作品を機にジョニー・デップとウィノナ・ライダーとの恋が芽生えた。ジョニーは腕に「ウィノナ命」と刺青を入れるほど惚れ込んでいたけれど、別れてしまった今では、その刺青はどうなったのだろう。だって刺青って、とれないんでしょ?★★★★★