【柿沼弘子の勝手にシネマ】
タイタンズを忘れない
監督:ボアズ・イエーキン
出演:デンゼル・ワシントン、ウィル・パットン、ウッド・ハリス
11th Apr. 2001
実はこの日はあまり体調が良くなかったのだけれど、大仁田厚とさとう珠緒のトークショー付きの試写会だったので、無理して見に行った。試写が始まる前30分くらいトークショーにあてられていたのだけれど、なんだか冴えないトークショーのおかげで、気分がなんとなく間延びしてしまった。おまけにこのトークショーのおかげで、30分余計に長く椅子に縛り付けられるという羽目になったため、私の体調はますます悪い方へと向かっていった。最後は座っているのも辛くて、私には珍しくエンド・クレジットの途中で席を立ってしまった。トークショー付というのも、考え物だなと思う。
1971年、アメリカ南部のバージニア州アレキサンドリアという保守的な田舎町を舞台とした実話。当時、まだ南部には黒人差別意識が根強く残っていて、学校も黒人と白人は別々だった。しかし、公民権運動による社会の流れから、突然黒人の高校と白人の高校が統合されることになる。そして保護者たちの猛反発の中で、それぞれのフットボールチーム「タイタンズ」も統合される。そんな周囲の大人達のつまらないエゴに振り回されながら勝利へ突き進む「タイタンズ」の選手たちを生き生きと描いた美しいスポーツ青春ドラマ。まるでジーン・ハックマン主演の『勝利への旅立ち』のアメフト版に人種問題をプラスしたような作品だ。主人公の特定は難しく、黒人の新任ヘッド・コーチ、ブーン(デンゼル・ワシントン)のようでもあるし、白人の元ヘッド・コーチ、ヨースト(ウィル・パットン)のようでもあるし、白人選手のゲリーのようでもある。まあ、あえて言うなら、「タイタンズ」というチームそのものが主人公なのだろう。
日本人には馴染みの薄いアメフトと、人種差別の話題でどの程度日本人の感動を呼べるか分からない。今日の試写は圧倒的に若い女性が多かったが、果たしてこの中にアメフトのルールを知っている人間がどれほどいただろう。ルールを知らないと分からない場面もあるし、基本的に面白くない。口コミ戦略を目的とするならば今回の試写の成果はどうだったのだろう。ただ、ひとつの望みは出演者に今人気急上昇(らしい?)のキップ・パルデューという俳優が出演していることぐらいだ。この人は第2のブラッド・ピットと呼ばれていて(どの辺がブラピなのか、さっぱり分からないが)、タレントの岡本夏樹が日本での後援会長をやっているらしいけど、どうも作り物に見えてしかたない。はっきり言ってこの人は主人公ではないし、それほど重要な登場人物でもないのに(少なくとも私にはそう見えた)、なぜかクレジットのかなり上のほうに載っていて、中にはこの人の顔を一番大きく扱ったパンフレットまである。他に興味を引く材料が無いので、この人をアイドルに祭り上げて、若い女性の観客を呼び込もうという考えなのか。体調のせいかもしれないけれど、はっきり言って私はあまりこの作品に集中できなかった。かといって、体調がいい時にもう一度見てみようという気にもならない。帰り道、あまりの気分の悪さに電車を途中下車し、ホームのベンチでしばらくうずくまってしまった私。こんな日に見てボロクソ言うのも申し訳ないけど、試写の後、感動的な声はあまりあがってなかった気がするなぁ。★★