【柿沼弘子の勝手にシネマ】
ゴッドファーザー
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン
2nd Jan. 2001
今まで見た映画の中でどれが一番好きかと聞かれたら、おそらく『ゴッドファーザー』と答えるだろう。それほどまでに私は、初めて見た時からこの映画の虜になってしまった。1972年の作品なので、もちろん見たのはビデオだ。初めてこの作品を見た時、私は人生観が変わるほど衝撃を受けた。そしてコッポラの凝った演出は、私をマフィアの世界に釘付けにした。撮影監督のゴードン・ウィリスによる意図的に露出不足で撮影した映像も素晴らしかった。そんな訳で、たまに無性にこの作品を見たくなる時がある。それで今年の正月、どうせテレビもつまらない番組しかやっていないので、3日間かけてPart1からPart3を見る予定をたてた。(結局、見たのはPart1だけだったけど。)
あらためて見るとこのPart1は意外と残忍性の薄い事に気付く。血生臭い抗争の場面はほとんど出てこない。どちらかというと、ヴィトー・コルレオーネの人間性に焦点を絞って作られている。何よりもファミリーを愛し、常に冷静に物事を見極め、決して麻薬に手を染めず、無駄な血を流すことを嫌うヴィトー。ラストですっかり普通のおじいさんになって孫娘とトマト畑で遊ぶシーンは印象的だ。しかし、やるときはやる。この世界の人間はどうすれば人が一番怖がるかを知っていて、そのルールの中でスマートにやるのが賢明なやり方なのだ。しかし、ここまでマフィアの世界が美しくスマートに描かれているのも、本物のマフィアの指示で、シナリオからマフィアに対する偏見的な台詞が排除させられてしまっているからなのだ。
当初ヴィトー・コルレオーネ役はローレンス・オリビエかカルロ・ポンティが考えられていたらしい。マーロン・ブランドでは若すぎるという意見があったからだ。それにネブラスカ生まれのWASP(アングロサクソン系プロテスタント)がイタリア系を演じるのは無理があるという意見もあった。しかし、ブランドのキャラクターは充分はまっていた。子供だった私はマーロン・ブランドを見て、この人は本物のマフィアじゃないだろうかと思ったほどだ。デ・ニーロのアル・カポネみたいに、毛なんか抜かなくても、見事マフィアのドンを演じてみせた。それから、今回初めて気付いたのだが、マイケル(アル・パチーノ)の恋人役がダイアン・キートンというのも意外だった。ダイアン・キートンというと、ウディ・アレン映画の常連で優等生なニューヨーカーというイメージが強く、まさかこんなヤクザ映画にでているとは思わなかった(といっても、彼女はもちろん堅気の役だけど)。そんな彼女も今やおばさん街道まっしぐら、で本業以外のことのほうが充実しているようだ。そして、Part1ではヴィトーの息子役ということで、端役にまわっているパチーノ君。Part2では見事やってくれます。とにかくかっこいい。私はPart2のパチーノ君が他のどの作品よりも好きです。Part2見て惚れました。男として一番油ののっていた時期で、フェロモンをムンムン発していて、たぶん男が見ても惚れると思う。でも最近はすっかり頬が「秀樹たるみ」になってしまって…。残念だけど仕方ないわね、あれから30年近く経っているんですもの。★★★★★