【柿沼弘子の勝手にシネマ


ラブ・オブ・ザ・ゲーム

監督:サム・ライミ
出演:ケビン・コスナー、ケリー・プレストン、ジョン・C・ライリー

24th Dec. 2000

 監督は『死霊のはらわた』シリーズで有名なホラー界の鬼才サム・ライミ。前作『シンプル・プラン』で、それまでのB級映画の鬼才というイメージから、本格派に見事に転身した。主演は『フィールド・オブ・ドリームス』、『さよならゲーム』など野球を題材にした作品を得意とするケビン・コスナー。実際に運動神経のいいケビンは様々なスポーツ映画に出演しているが、この作品ではデトロイト・タイガースのベテランピッチャーという役。しかし、その投球シーンが本当に投げているのかどうかは真偽が問われるところ。他の人の吹き替えのようにも見えるし、本当に投げているようにも見える。今はCGの技術も発達しているから合成かもしれない。でも、運動神経のいいケビンのことだから、本当に投げていたのかもしれない。それに、カメラの角度によってはうまく撮れるのかもしれない。いつもピッチャーとキャッチャーが同じフレームに入っていて、決して真横から撮らないのもあやしい。もしかしたらピッチャーとキャッチャーの距離がすごく短かいのかも…。なんて、本題よりもそんなことばっかり気にしながら見てしまった。
 デトロイト・タイガースのベテランピッチャー、ビリー・チャペル(ケビン・コスナー)はシーズンも終わろうとする頃、突然オーナーからトレード通告を受ける。さらに恋人ジェーン(ケリー・プレストン)からも別れを告げられ、複雑な思いのまま、優勝候補ヤンキースとのラストゲームを迎える。ビリーが男の意地を見せる入魂のピッチングに、恋人との5年間におよぶ愛の軌跡がフラッシュバックされる。1回、2回と回を追うごとに去来する栄光の球暦。そしてジェーンとの愛の軌跡。ほんの2、3時間の試合を通じてひとりの男の人生が浮き彫りにされていく。そして気付いてみればノーヒット・ノーランという快投を見せていたビリーは、肩の痛みに耐えながら、その長い野球人生の中で最高のゲームを成し遂げようとしていた。
 私は野球が大好きで大の西武ファンなのだが(ファンクラブにも入っている)、この作品の素晴らしいところは、野球シーンが本物っぽいところ。昔『メジャーリーグ』という映画を見て、あまりの下らなさに腹を立てたこともあったけど、この作品は素晴らしかった。実際、本物の大リーガーを使って、ヤンキースタジアムで撮っているので、臨場感抜群で本物の試合を見ているようだった。最後に、ビリーが自分の人生そのものである野球を引退することを決意し、旅立つ恋人を追って空港に行くシーンには涙が出た。ビリーにとっては、野球を捨てることは人生を捨てるのと同じこと。しかし、その野球を捨てることで、新たな人生を自分の手で再び切り開こうとする姿は感動的だった。物語の大半が恋人ジェーンとの関係の場面なので、ぬるいラブストーリーのように思われて、男性の方は敬遠してしまうかも知れないが、本筋は「野球を愛した男の美学」なので、是非男性の方に見てもらいたいと思う。★★★★