【柿沼弘子の勝手にシネマ


マイ・ドッグ・スキップ

監督:ジェイ・ラッセル
出演:フランキー・ミューニース、ダイアン・レイン、ケビン・ベーコン

th Nov. 2000


 現代アメリカを代表する作家、ウィリィー・モリスの自伝的ベストセラー小説を映画化した作品。この作品を一言でいえば、内気な少年が小犬との出会いをきっかけに成長していく姿を描いた心温まる物語だ。時は1943年、第二次世界大戦の真っ只中。アメリカの古き良き時代であり、戦勝ムードに沸く一方、人々の心に少しずつ戦争に対する不安感が芽生え始めた時代でもある。そう言えば、先週見たのも古き良き時代のアメリカを描いた作品だった。どちらの作品も、主人公が子供時代を回想するという形のノスタルジーたっぷりの作品だ。先月から私はノスタルジー系の映画を3本も見ているが、おそらく疲れた時に甘いものが欲しくなるように、心がそれを求めているのだろう。
 タイトルの『スキップ』とは主人公の男の子が飼っていた犬の名前だ。友達からチェリー・ベイビー(甘えん坊)と呼ばれ、ばかにされていた9歳の男の子が、愛犬スキップとともに少年から青年へと成長していく。まあ、それだけといえばそれだけで、この作品の良さは主人公の男の子と愛犬スキップのかわいさにつきる。とにかくスキップの演技がすばらしいのだ。動物を使った撮影では、たいてい動物の動きに無理矢理人間が合わせようとして、ぎこちなくなったってしまうものだが、間の取り方といい、視線の合わせ方といい、「この犬、人間の言葉分かってんじゃないの?」と言いたくなるぐらいうまい。それもそのはず、スキップの演技指導をしたマチルダ・デギャグニーは、『恋愛小説家』でジャック・ニコルソンの相手役を務めた犬のトレーナーでもある実力派。犬を定位置で止まらせることはもちろん、バック転までさせることもできるらしい。
 そう言えば、アメリカの古き良き時代を象徴するシーンが先週見た作品にもあった。家族で食卓を囲むシーンだ。父親が窓を背に正面に座り、その両隣に母親と子供が座り、母親の作ったまともな食事をしている。無口で厳格な父親と家庭的で優しい母親。父親に注意されると、素直に謝る子供。決して「うるせー、おやじ。」とは言わない。そして、父親に叱られた子供を優しくフォローする母親。こんな場面は今では「サザエさん」ぐらいでしか見られないだろう。だいいち、家族揃った食卓なんて考えられない。今の日本の子供達の多くは、毎日一人でジャンク・フードを食べているというのに。こんなシーンから久し振りに「秩序」を感じてしまった。それにしてもケビン・ベーコンの父親役、恐かったな。たたでさえ顔に凄みがあるのに、軍隊風の威厳丸出しのエゴイストでこの時代の典型的なアメリカ人の父親を演じきっていた。関係ない話だけど、ケビンつながりで最近気づいたことを1つ。ぴあにシネマ・インデックスというページがあるんだけど、『ケビン・コスナー』も『ケビン・スペイシー』も同じ『Kevin』なのになぜか『ケビン・コスナー』と『ケヴィン・スペイシー』と書き分けている。なぜスペイシーだけが『ヴィ』なのか?分かる人連絡ください。それにしてもこの作品、全米でロングラン・ヒットしたわりには日本での公開期間はやけに短かった。1ヶ月くらいしかやってなかったんじゃないかな。まあ、私は特に面白いとは思わなかったけど、子供と犬がかわいかったから○です。★★★