【柿沼弘子の勝手にシネマ】

踊れトスカーナ!

監督:レオナルド・ピエラッチョーニ
出演:レオナルド・ピエラッチョーニ、ロレーナ・フォルテーザ、
バルバラ・エンリーキ


16th Aug. 1999


 イタリアのトスカーナ地方の美しい風景がとても印象的な作品だった。ひまわり畑に囲まれた素朴なた

たずまいの農家が現れた瞬間、思わず北海道の北竜町を思い浮かべてしまった。(なんて、貧困な発想

なのだろう。こちらのほうが本家本元なのに…トホホ。)ストーリーは単純明快。スペインのフラメコダンサ

ーの一行が、道に迷ってイタリアの田舎町にたどり着く。その中の一人、濡れた瞳の美しいカテリーナに

田舎の素朴な青年レバンテが一目惚れする。明るく健康的なラブストーリーだ。               

 主人公レバンテを演じるのは、この作品の脚本を書き監督でもあるレオナルド・ピエラッチョーニ。いか

にもラテン顔でとんかつソースのように濃厚だ。銀幕の向こうからモワッとした体臭を感じる。レバンテは

平凡でお堅い会計士という設定で、町の人々から「ワインに欠かせないものは何だ?」「消費税だろ!」

と言われてしまうほど。(日本人の私から見れば結構ナンパ野郎なんだけどね。)だけどやっぱり血はあ

らそえないのか、意外と情熱的で、自分の惚れたフラメンコダンサーをなんとか誘い出しては、いつもチ

ューをするタイミングを狙っている。それからこの作品に登場する女性達は皆、クレオパトラ級だ。美しく

ないのはレズのレバンテの妹だけだ。ダンサー達は皆、身長が180センチくらいあり、顔が小さくスーパー

モデルのような体型。フラメンコで鍛えた引き締まったボディが魅力的だ。彼女たちを指をくわえて見てい

る垢抜けない田舎の男達が対照的だった。(私は彼女たちの作り物のような美しさにちょっと引いてしまっ

けど)た。この作品には物語を盛り上げる陽気なイタリア男とイタリア女がたくさん登場する。まさにラテン

系で歌と踊りがよく似合う。しゃべりのテンポも軽快で、イタリア語ってなんて聞き心地がいいのだろうとあ

らためて感じた。                                                    

 そう言えば、いつだったか『ニュース23』で筑紫さんがこの映画を絶賛していた。きっとおじさん達には

奇麗なおねえちゃんが踊っているだけで、ポイントが高かったのだろう。ストーリーが単純であるが故に、

美しい田舎町に住む人々の屈託のない笑顔と、質素ではあるが心豊かな生活がより魅力的に描き出さ

れている。劇場をあとにした私の頭の中では、いつまでもスパニッシュギターが鳴り響いていた。★★★

★です。                                                         

 
【※】ちなみに★は5点満点だよ。