【柿沼弘子の勝手にシネマ


最終絶叫計画

監督:キーナン・アイボリー・ウェイアンズ
出演:ショーン・ウェイアンズ、マーロン・ウェイアンズ

20th Sep. 2000

 監督はキーナン・アイボリー・ウェイアンズ。まったく聞いたことの無い名前だ。監督と主演の二人はファミリーネームが同じだが、何か関係があるのだろうか?調べてみると、3人は兄弟だった。実はこの作品はウェイアンズ3兄弟の制作で、ショーン・ウェイアンズとマーロン・ウェイアンズが脚本を書いているのだった。監督のキーナン・アイボリー・ウェイアンズは俳優でもあり、『グリマーマン』や『クロスゲージ』にも出演しているらしい。いずれにしろ、聞いたことの無い名前だ。
 この作品はホラーからシリアスまで、数々の名作をパロったコメディ・ホラーだ。ベースは『スクリーム』のパロディで、殺人鬼も『スクリーム』のそれと同じマスクを被ったキャラクター。全部で29作品のパロディがあるそうだが、私は半分も分からなかった。そして、「パロディカルト選手権」という、この映画にパロディとして登場する作品数を当てるというあまり意味の無さそうなクイズキャンペーンも行われていた。発表された解答を見ると、『アウトサイド・プロヴィデンス』や『ファイナル・デスティネーション』など、まだ日本では未公開の作品まである。というわけで、指折り数えながら見ていたのだが、私は途中であきてしまった。
 冒頭、ハロウィンの夜、ポップコーンを作りながら留守番をする美女のもとへ、一本の電話がかかってくる。これは『スクリーム』のいつものパターンと同じだ。するとその直後、なんと美女が電話をしながら景気のいいオナラをする。それが一発目の笑いだった。いきなり下品ネタから入るとは、先が思いやられると思いながらもその後は、『ハロウィン』のパロディや軽い下ネタをおりまぜながら話しは進んでいく。結局、定石どおりその美女は殺され、翌日町は騒然とする。そして、殺された美女の友人シンディはこの事件が1年前の同日、自分と友達が起こした殺人事件と関係があるのではないかと思い始める。
 殺人シーンは本家のホラーをしのぐほどの潔さ。のこぎりで首を引いたり、車に勢いよく跳ね飛ばされたり、ガレージのシャッターで胴体を切断されたりするのだが、残酷さはまったく感じられなかった。おまけに殺される人間が皆、楽しそうなのがいい。ある者はゴム人形のように、そしてある者は笑いながら死んでいくのだ。
 この作品は笑いの9割が下ネタだ。私はもう少しパロディの部分で笑わせてもらえることを期待していたので、ちょと残念だった。せっかくのパロディの場面も結局オチは下ネタなのだ。つまりパロディで笑わせているのではなく、下ネタで笑わせているのだ。これではパロディ映画というよりは、青春セックス・コメディになってしまう。この日の客はノリが悪く、あまり大爆笑は起こらなかった。私も隣に純粋そうな高校生のカップルが座っていたので、下ネタのところで爆笑できないのが残念だった、というのは冗談だが、密かに苦虫を噛み潰していた。そこそこ面白かったけど、悪い意味で期待通りで、感想は「まあ、こんなもんか。」といったところ。★★★