【柿沼弘子の勝手にシネマ


リプリー


監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ジュード・ロウ

th Aug. 2000

  先日知り合いの自主制作映画の上映会に行ってきました。アマチュアのわりには2時間にも及ぶ大作で、ストーリーもしっかりとしていてなかなかの出来映えでした。でもひとつだけ残念だったのは、録音状態が悪いこと。やはりこの辺がプロとアマの差がはっきりと出てしまうところなのでしょう。ロケ取り(スタジオがあるわけではないので、基本的にはすべてがロケなのですが)いわゆる屋外での撮影では、マイクが周りのノイズを拾ってしまうため、台詞が聞こえなくなってしまっているのです。アマの機材ではやはり限界があると思うので、余裕があればアフレコにするとかなんとか他に手があったのではないかと思います。やはり役者が何を言っているのか分からないと、作り手の伝えたいことがうまく伝わってこないので、本当に残念でした。
 という話はさておき、今回はアンソニー・ミンゲラ監督の『リプリー』です。この作品は1960年に公開されたアラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』のリメイク版です。リプリーというのは主人公トム・リプリーのことで、マット・デイモンが演じています。また、大富豪の放蕩息子ディッキーを、最近『ファイナル・カット』や『チューブ・テイルズ』(この作品では監督に挑戦)などで人気急上昇のジュード・ロウが、その婚約者マージをグウィネス・パルトロウが演じています。また、ちょい役(といっても、意外とキーパーソン)でケイト・ブランシェットも出ています。いま伸び盛りの若手スターが勢揃いしています。
 特技は嘘をつくこと、サインを偽造すること、他人になりきること、という野心以外何も持っていない貧しいアメリカ人青年トム・リプリーは、ある富豪からイタリアにいったまま戻ろうとしない息子ディッキーをアメリカに連れ戻す仕事を引き受ける。いきなり見ず知らずの青年に大金をポンと渡して、これで息子を連れ戻してくれ、という感覚もすごいのですが…。そしてイタリアへ旅立った彼が出会ったのは異国で退廃的な生活を送るディッキーでした。きらびやかな毎日と美しい恋人。トムは自分には手の届かない甘い生活を享受するディッキーに憧れのまなざしをむける。気まぐれからそんなトムを自分と恋人のマージとの生活に引き入れるディッキー。次第にその憧れは特別な感情(愛情=モーホー)へと変化していく。そして、自分にまとわりつくトムをディッキーが次第に疎ましく思いだした時、悲劇がおこる。その事件をきっかけにトムは嘘に嘘を重ねる生活を送るようになる。物語は大きく分けて、眩しい太陽の下、イタリアの海辺の田舎町の青い空と青い海が印象的な前半部分と、それとは対照的に暗くじめじめした空気に包まれた後半部分に分かれています。2時間20分という長さをまったく感じさせないストーリー展開で、最後までドキドキしながら見ることができました。心にトゥラウマを抱えた青年を演じることの多いマット・デイモンですが、今回のトムもはまり役でした。決してハンサム君ではないけれど、私は彼の照れ笑いのような口元がなんとなく好きです。なんといってもハーバードだしね。★★★★