【柿沼弘子の勝手にシネマ】
スリーピー・ホロウ
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチ
7th Apr. 2000
この作品は、アメリカの子供なら一度は読んでいると言われるワシントン・アーヴィングの有名な小説を映画化した作品で、18世紀末、ニューヨーク郊外の辺境の村“スリーピー・ホロウ”で起きた謎の連続殺人事件をモチーフとしています。その当時の裁判は拷問による自白に頼るものがほとんどで、そのようなやり方に疑問を抱いていた野心的なイカボット刑事は、ついに上司と対立し、辺境の村スリーピー・ホロウの怪事件の調査を命じられてしまいます。その怪事件とは、首のない騎士の亡霊が現れては、村人の首を切り落とすというもので、被害者はすべて首を切り落とされた状態で発見され、そのうえ、首は持ち去られてしまうということで、村では伝説の首なし騎士の呪いの仕業との噂が広まっていました。そして捜査は難航しながらも次第に事件の真相に迫っていきます。最初からいきなりゴロゴロと首が切り落とされるシーンの連続で、最初はかなり抵抗がありましたが、バートンの神秘的な映像と意外なストーリー展開に、いつの間にか引き付けられてしまいました。
その怪事件を解決するためにニューヨークからやって来た、野心的だけどちょっぴり頼りない刑事イカボット役に、『シザーハンズ』『エド・ウッド』に続いて、バートン作品出演が今回3度目のジョニー・デップ。共演に『バッファロー‘66』の好演も記憶に新しく、最近出演作品が目白押しのクリスティーナ・リッチ。他の村人たちが捜査に非協力的な態度をとる中、献身的なまでにイカボットに協力し、やがて彼と恋に落ちる美しく頼もしい村娘の役を演じています。ともに強烈な個性を持つふたりが、事件の真相を探る奔走と共にロマンスの芽生えを好演しています。首なし騎士に父親を惨殺された少年役のマーク・ピッカリングも素晴らしい演技を見せてくれました。
50年代B級映画の世界を再現した『マーズ・アタック!』から3年も経ったとはいえ、あいかわらずティム・バートン・ワールドは健在でした。前作のカラフルさから一転、じっとりと濡れたようなセット・デザインでスクリーンのすみずみまで異様な空気を充満させ、ドラマの猟奇性を引き立たせていました。建物や森、木などの見るからに不気味なビジュアルが、ダークな背景とあいまってゴシック的な雰囲気を醸し出しています。さらに、バッサリと首を切り落とすシーンは、あまりにも自然なSFX描写で、切られた首がころころと地面を転がっていく様子は、あまりにもリアルで不気味でした。明らかにロケーション撮影ではないと分かる、絵の様な背景が、おとぎばなしの世界を一層引き立て、知らず知らずのうちに物語にのめり込んでしまいました。★★★★