【柿沼弘子の勝手にシネマ】


ノイズ


監督:ランド・ラビッチ
出演:ジョニー・デップ、シャーリズ・セロン

24th Mar. 2000

 確かこの作品は予告編を見て、話のアイデアがユニークで面白そうだったので見に行ったのですが、久し振りに期待を裏切られてしまいました。おまけに私の大好きなジョニー・デップが主演ということで、これはもう見ないわけにはいかないと思い、仕事が忙しいにもかかわらず、なんとか終わらせて猛ダッシュで見に行ったのに…。時間と金の無駄とはまさにこのことです。久し振りにトホホな作品でした。というのも、私があまりにも期待を持ち過ぎてしまったのがいけなかったのだと思います。どうやら私の想像以下の出来で(想像どおりでも困るけど)、話の構成が雑というか、脚本にあまり力が入っていないというか、この手の話ならもっと面白くできるはずなのに残念でした。『シックス・センス』の時のように、これは何かあるぞと、勝手に思い込んでしまったのが敗因でした。ジャンルもSFスリラーなのかラブストーリーなのかいまいちはっきりせず、何もかもが中途半端に感じられました。
 ストーリーは宇宙から来た謎の生命体が宇宙飛行士の体を乗っ取り、その夫の子供を妊娠した妻がパニックを起こすというサスペンス映画です。宇宙飛行士スペンサー(ジョニー・デップ)は船外作業中に原因不明の事故に遭遇し、地上との交信が2分間絶たれてしまいます。意識不明のまま帰還したスペンサーはその後回復するのですが、妻のジリアン(シャーリズ・セロン)は夫の行動に何か不信なものを感じ始めます。一番親しいはずの妻のジリアンに対し、宇宙での事故の様子を一言も語らないのです。そして夜中にひとりで起き出して、ぼんやりとラジオのノイズを聞いているのです。邦題の『ノイズ』はこれからきています。ちなみに原題は『THE ASTRONAUT'S WIFE(宇宙飛行士の妻)』です。やがて双子を妊娠した彼女はお腹の子供に疑問を抱き始めます。妻は夫の性格が宇宙から帰ってくると変わってしまったと思っているようなのですが、宇宙から帰ってきた後の話に比べて、旅立つ前の話があまりにも粗雑に描かれていて、性格も描写不足で、どのように変わってしまったのかよく分かりませんでした。おまけに宇宙で起こった原因不明の事故もあまり謎めいていないし、話の規模が大きい割には脚本が洗練されていないので、消化不良気味でした。
 なんといっても一番納得いかないのは、この作品の終わりかたです。奥歯にものが挟まったような、なんともすっきりしない気持ち悪い終わりかたで、最後に後味の悪さだけが残りました。ただ一つ良かったと言えるのは、未知の“何か”に取り憑かれた宇宙飛行士に扮するジョニー・デップの渾身の演技だけでした。普段のエキセントリックな面を極力抑え、静かさの中にもぞっとするような凄みを感じさせる演技はさすがでした。私的には超美形シャーリズ・セロンとの夫婦役にやきもちをやいてしまいました。★★