【柿沼弘子の勝手にシネマ】

シックス・センス

監督:M.ナイト・シャマラン

出演:ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント

2nd Mar. 2000

 不安げな表情の少年とブルース・ウィリスのポスターを見て、私は最初、この作品はホラー映画だと勘違いしていました。雑誌などではサスペンス・スリラーと紹介されていますが、私が見た限りでは、スリラーというよりは、どちらかと言えばヒューマン・ドラマのように思えました。まだ見ていない人のために、ストーリーについてあまり細かくは触れませんが、簡単に言えば、“シックス・センス”つまり“第6の感覚”によって、死んだ人が見えるという精神不安の少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)と、コールを救おうと奮闘努力する小児精神科医マルコム(ブルース・ウィリス)の恐怖に満ちた闘いを描いた物語です。この作品は恐怖シーンだけではなく、感動的なシーンもあります。コールが、死んだはずのおばあさんから聞いた話を母親に伝えるシーンなど、思わず涙が込み上げてしまいました。それから、何と言ってもエンディングには泣かされます。エンディングにこの作品のすべての秘密が隠されているのです。道を歩いていたら、抜き打ちでいきなり斬られたような衝撃を受けました。
 「この映画の秘密を決してお話にならないようお願いします。」と冒頭にブルース・ウィリスのコメントが出るのですが、見終わってなるほどなと思いました。先ほど述べたとおり、実はこの映画には物凄い“秘密”が隠されているのです。私はこの秘密を人に喋りたくてしかたないのですが、これを喋ってしまうとこの映画の面白さが半減してしまうので、まだ見ていない人のために秘密にしておきます。マルコムの妻の手から結婚指輪が転がり落ちるシーンを見た瞬間、すべてが分かるのですが…、とにかくこれは自分の目で確かめてください。秘密が暴かれた後、ストーリーを思い出しながら、よくよく細かいことを考えてみると、話のつじつまが合わない場面が少しあるのですが、そんなことはどうでもいいのです。そんなことを抜きにして、面白いと思わせてしまうのが演出のうまさなのです。
 この作品の面白さは、単にストーリー展開の巧妙さだけでなく、役者の演技力にもあると思います。特に、『フォレスト・ガンプ』でトム・ハンクスの息子を演じた名子役、ハーレイ・ジョエル・オスメントがすばらしく、恐怖に怯えた表情や不安げな表情などは、とても子供とは思えない演技力でした。それから、珍しくアクション抜きのブルース・ウィリスも良かったです。精神科医というインテリな役を見事にこなし、新境地を開拓しています。これが3本目の監督作となるM.ナイト・シャマランは、インド生まれの注目の俊英で、私と同じ1970年生まれです。これからが楽しみな監督です。私にとってこの作品は、数少ないもう一度見たい映画の一つになりました。衝撃的なエンディングの割りには、後味のすがすがしい変わった作品で、なんだか癖になりそうです。★★★★★