【柿沼弘子の勝手にシネマ】

プライベート・ライアン

監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、マット・デイモン、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ


1st Aug. 1999


いままでずーっと見たいと思っていたのに、結局劇場へは行かずじまいだったこの作品。

ようやくビデオで見る事ができました。第二次世界大戦の壮絶な戦場を描き出したこの作品

は、さすがスピルバーグ先生、戦闘シーンの描写力は見事でした。最前線を突き進む8人の

小隊が体験する戦場の真実が、すさまじい音と映像で描かれています。いまだかつて、ここ

まで生々しく戦争を描いた作品は無かったのではないでしょうか。腕は飛ぶし、体がちぎれて

内臓は飛び出すし、かなりリアルですさまじいものでした。                     

 1944年、ノルマンディ上陸作戦を乗り切った小隊が、兄3人を戦場で失ったライアン二等

兵を探し出して帰還させるというのが話の大筋。1人の兵士を救出するために2人の仲間を

失った小隊は、ばかげた任務に疑問を覚えながらも危険な前線をくぐり抜けて行く。戦争とい

う肉体的にも精神的にも過酷な状況の中、任務を遂行することで自分の行動に意味を持た

せようとする。                                               

この作品のストーリーに関して、私の率直な感想を言わせてもらうと、作者の言いたい事が

私には理解できませんでした。だって、どうしてライアンだけが救出されてしまうのでしょうか。

自分が一緒に戦っている兵士の1人だったら、もっと納得いかないと思います。自分にだって

自分の死を悲しむ親がいます。なんだかこの作品を見ていると、ライアンの命には重みがあ

るのに、それ以外の兵士の命がとても軽く感じられます。軍の上層部からライアン救出の司

令が下った時、なんでそうなるの?とさっぱり事の成り行きがわかりませんでした。でも、ライ

アンを救出するにはきっと何か理由があるに違いない、それが解き明かされる場面がそのう

ち出てくるに違いないと、ずっと待ち続けていました。(今考えると、この期待がこの作品を楽

しめなかった原因だと思います。)それはライアンが見つけ出される場面で明らかになります

が、その理由がなんともアメリカ人好みなんです。私は思わずその場面で「なんて自己満足

な映画なんだ!」と叫んでしまい、隣で見ていた人をひどく怒らせてしまいました。とにかくこ

の作品は、最初と最後に翻る星条旗のカットにすべてが凝縮されているのではないでしょう

か。                                                    

  出演者についてですが、トム・ハンクスはいい役者ですね。大好きです。あれだけ個性的

な顔なのにその役になりきってしまって、「あれっ、トム・ハンクスだったの?」って思わせてく

れるところ、大好きです。それから久し振りに兵士役のマット・デイモンくん。私が初めて彼を

知ったのは、「のほほん茶」のCMでやる気の無さを見せているメグ・ライアン主演の「戦火の

勇気」です。この作品では超脇役の兵士として出演していました。一目で彼を気に入ってしま

った私は、エンディング・ロールの中に名前を見つけると、つい手帳にそれをメモってしまった

のでした。一目ぼれするくらいだから、昔はもっとかっこ良かったような気がしたんだけどなぁ。

今ではすっかりジミー大西だよね。おかしいなぁ。                           

まあ、この作品のいいところは、アカデミーは取れてもカンヌは取れないといったところでし

ょうか。★★★です。戦争ものでは次に「シン・レッド・ライン」を見ようと思うけど、これはどう 

でしょうか。                                                  

 
【※】ちなみに★は5点満点だよ。