【柿沼弘子の勝手にシネマ】
BLUE NOTE/ハート・オブ・モダン・ジャズ
監督:ジュリアン・ベネディクト
3rd Dec. 1999
1939年に創設されたジャズレコードの老舗レーベル「ブルー・ノート」が、創立60周年を記念して制作した
ドキュメンタリー・フィルム。主に、創設者のアルフレッド・ライオンが、プロデューサーとして果たしてきた役割
にスポットを当てている。また、ライオンと共にブルー・ノートを支えてきた写真家による貴重なフィルムも数多
く登場する。この作品は、ライオンと関わりあった数多くのミュージシャンが語る「昔話」と、当時のライブ・フィ
ルムによって構成されている。また、ヨーロッパ本土でナチスに追われ、アメリカへ逃げ出したユダヤ系ミュー
ジシャンの話など、歴史的にも興味深い。そして、私たちの年代にとっては、ほとんど伝説の人となってしまっ
たアート・ブレイキーやその他大物ミュージシャン達の演奏シーンなど、「お宝映像」が続々と登場する。
「ジャズはアメリカの唯一の文化」と言われているけれど、皮肉なことに発祥の地であるアメリカでは、ジャズ
は黒人の音楽であり、低俗な大衆文化のように考えられていた。しかし、ヨーロッパでは高度な芸術として評価
され、ライオンなどの素晴らしいプロデューサー達によって育成されていった。当時、ライオンのプロデュースに
より、多くの若手ミュージシャンがこの世に送り出されている。そして、彼に見出された者は必ずと言っていいほ
ど歴史に名を残すほどの大物になっている。彼は既成の概念にとらわれることなく、新しいものをどんどん受け
入れていった。彼のプロデュースなくしては、ブルー・ノートはここまでには至らなかったであろう。アメリカ唯一の
文化と言われるジャズを育てたのは、他ならぬドイツ人の彼だと言っても過言ではない。
実は私はコテコテのモダンジャズはちょっと苦手だ。日本人の私には少々泥臭すぎるからだ。どちらかというと
ヴォーカルものが好きで、コールポーターなんかをよく聞き、よく歌う。
それにしても驚いたのが、見に来ている人の客層だ。思っていたよりもはるかに若い人が多かった。劇場の入
口で、場所を間違えたのかと思ったくらいだ。20歳前後の若者が中心で、カップルやグループが多かった。もう
少し年齢層が高いかと思っていたのに意外だった。
ブルーノートの旋律が私の脳に心地よい刺激を与えてくれたおかげで、睡魔にも襲われることなく、最後まで楽
しむことができた。映画の出来云々より、貴重なものを見たというありがたさを感じることのできる作品だった。
★★★★
【※】ちなみに★は5点満点だよ。