【柿沼弘子の勝手にシネマ】
皆月
監督:望月六郎
出演:奥田瑛二、北村一輝、吉本多香美、柳ユーレイ
2nd Dec. 1999
う〜ん、なんでこんなもの見に来ちゃったんだろう、途中、私は何度も唸ってしまった。私の尊敬する映画評論
家が絶賛していたので見に行ったのに失敗だった。客層はおやじ中心。私のような若い女性(?)はほとんどいな
かった。この作品は、花村萬月の同名原作を荒井晴彦が脚色し、望月六郎が監督したアウトロー・ドラマ。前半は
暴力とセックスシーンのオンパレードで、なにやらあやしい場面がたくさんでてくる。
奥田瑛二演じる主人公の諏訪は、さえない中年サラリーマン。ある日、家に帰ると、突然妻がいなくなっていた。
「みんな月でした。我慢の限界です。さようなら。」という意味不明な内容の置き手紙を残し、全財産を持って逃げ
てしまった。不運なことに、妻に逃げられた直後、自分の会社も倒産してしまう。すべてを失った諏訪は、妻の弟
であるヤクザ者アキラ(北村一輝)と、アキラのはからいで知り合ったソープ嬢の由美(吉本多香美)と共に、妻を
探す旅に出る。そして舞台は北陸に移るのである。越前岬だか東尋坊だか知らないが、岸壁に打ち寄せる荒々
しい波をバックにした映像は物語の持つ、うら淋しさを強調していた。
それにしても、この作品は私にはわけの分からないことだらけだった。特に登場人物の心の移り変わりがよく分
からなかった。なぜ妻が突然失踪してしまったのか。そして、その妻を探す本当の理由は何だったのか。物語の
途中、アキラは勢いで、養鶏場の主人を殺してしまうのだが、なぜそこまでする必要があったのか。そして、最後
の場面でアキラに自首を決意させたのは何だったのか。そして、最初、金目当てで諏訪に寄り添っていた由美は
実は一文無しで地位も名誉もない、さえない中年サラリーマンであった諏訪の何に惹かれていったのか。どれも
これも説明不足で、結局、最後の最後までその答えを見つけることはできなかた。
この物語の中で「月」とは「太陽」の反対の意味として使われている。つまり自分からは決して輝くことがなく太
陽の光を反射することでしか輝くことができないものの象徴とされている。そして諏訪自身、月であり、妻も月であ
った。そして諏訪が太陽だと信じていた由美も本当は月であった。やはり人生の機微がわかる年齢に達しないと
、この作品は楽しめないのだろうか。★
【※】ちなみに★は5点満点だよ。