【柿沼弘子の勝手にシネマ】
秘密
監督:滝田洋二郎
出演:広末涼子、小林薫、岸本加世子、石田ゆり子、金子賢、伊東英明
29th Oct. 1999
この作品を初めてTVのコマーシャルで見たとき、私は絶対に見ないだろうと思った。ストーリーがあまりにもばからしい
(見る前は、そう思っていた)のと、広末涼子が嫌いだからだ。しかし、あまりにも周りの評判が良いので見に行ったら、意
外にも素晴らしい作品だった。私はくしくも途中で何度も涙を流してしまった。作品の内容とは関係ないけれど、私はイン
チキ入試で大学に入り、学校に行かない広末が大嫌いだ。芸能活動を一生懸命やったことが認められて入ったらしいけ
ど、大学は勉強するところで、入試はそのための基礎知識があるかないかを判断するためのものだよねぇ。最近一芸入
試とかがはやってるけど、芸人入れてどうするんだろうね。「個性ある教育」の意味がちょっと違うんじゃないの?
と、まあいろいろ言いたいことを言わせてもらったけど、この作品の一番のいいところは、なんといっても話のテンポが非常
にいいところです。あまりのテンポの良さに、母親役の岸本加世子は、最初の5分くらいで死んでしまいます。邦画のこの手
の作品にしては、登場人物のキャラクターも手短にかつ十分に伝えられています。主人公の小林薫もかなり個性的な役柄
ですが、かれの演技力も加わって、かなりいい味だしてます。ストーリーは、母親の魂が娘の体に乗り移ってしまう、という
かなり単純な設定であると思いきや、母、父、娘の一人一人の心の中に焦点を合わせると、かなり複雑な思いが絡みあっ
ています。原作は、ミステリー・ファンのあいだで人気を呼んだ東野圭吾の同名ベストセラー小説。食品メーカーに勤める
中年会社員の杉田平介(小林薫)は、突然のスキーバスの転落事故で妻、直子(岸本加世子)を亡くし、娘、藻奈美(広
末涼子)は意識不明の重体となる。ところが目覚めた藻奈美の体には直子の心が乗り移っていた。こうして平介と娘との
奇妙な夫婦生活が始まる。まだまだ男盛りの平介。いくら心が妻でも、娘の体を抱くわけにもいかない。普通の女子大生
の藻奈美もサークルの先輩からのアプローチを受ける。妻の体を失ってから、なんとなく冴えない毎日を過ごしている夫
とは対照的に、積極的に亡くした娘の分まで頑張ろうと、医学部の受験にも成功し、前向きに生きていこうとする藻奈美
の姿勢に心打たれた。なんといっても、素晴らしいのは、40歳の中年のおばさんの心をもった10代という難役を演じた
広末の好演でしょう。この作品は最後に藻奈美が結婚し、平介のもとを離れていくことで本当のお別れをして、終わるの
だと思っていたら、そんな単純なものではなかった。最後の最後に重大な秘密が隠されていた。私はあまりの演出のう
まさに涙が止まらなかった。邦画ではめずらしく★★★★★です。
【※】ちなみに★は5点満点だよ。