【柿沼弘子の勝手にシネマ】

ワイルド・マン・ブルース

監督:バーバラ・コップル
出演:ウディ・アレン


14th Sep. 1999


 またしても、ウディ・アレンの登場です。はっきり言ってこの作品は最高です。(私ってなぜか

気に入った作品の感想では、ですます調になるのね。)この作品はジャズファンでありクラリネッ

ト奏者でも有名なアレンのミュージシャンとしての側面にスポットを当てたドキュメンタリーです。

初めてヨーロッパ演奏ツアーに出かけた時のステージとその楽屋での会話や、その合間に観光

した美しい街の様子が描かれています。この作品は単なるドキュメンタリーではなく、プロのミュ

ージシャンのライブビデオという要素も持っています。アレンファンにとってはまさに1度で2度楽

しめる映画だと思います。実は最初私はアレンのクラリネットの腕には、はっきり言ってあまり期

待していませんでした。しかしこの作品を見るとそんな不安はどこかへ吹き飛んでしまいました。

アレンは定期的にライブハウスで演奏しているだけあって、なかなか素晴らしい演奏を聞かせてく

れます。といってもまあ、ミュージシャンの柿沼弘子に言わせれば、はっきり言って楽器は鳴って

いないし、体力不足だし、まだまだあまいなって感じだけど(きびしー)。リズム感は素晴らしく、

本当にジャズのスイング感が体に染み付いていて、相当ジャズを聞き込んでいなければ表現で

きないセンスを持っていると思いました。ステージで演奏していた曲はどれもコテコテのニューオ

リンズ・ジャズで、彼の最も好きなジャンルの一つです。事実、公演に来たヨーロッパのどの国の

人も演奏よりも映画人のアレンがクラリネットを吹く姿を見に来ているようで、音楽を真剣に聞き

に来たという人は少なかったようです。しかし、演奏後のインタビューでは誰もがアレンの演奏を

絶賛していました。それほどアレンの演奏はレベルの高いものでした。それからもう一つの見所と

いえば、アレンがヨーロッパの各地でカメラに追いまわされたり、市長や消防署から訳の分からな

いこじ付けの賞をもらうなど、様々なスター扱いにぼやき、恋人のスン・イーにまるで母親のように

諭される場面など、意外な素顔が覗けるエピソードがたくさんあります。それから、ラストに登場す

るアレンそっくりの両親と、飾りの無い本当の親子の会話を聞かせてくれるアレンなど、ファンには

たまらない作品でした。★★★★★                                     

                                                            

 
【※】ちなみに★は5点満点だよ。