【柿沼弘子の勝手にシネマ】

ウェルカム・ドールハウス

監督:トッド・ソロンズ
出演:ヘザー・マタラーゾ、ブレンダン・セクストンJr、エリック・メビウス 


11th Sep. 1999


 2年くらい前、シネマカリテでこの作品の予告編を見た。とても気に入ったので後で絶対に見よ

うと思っていたのに結局劇場では見ることができなかった。近所のレンタルビデオ店で何度も探

したが見つからずあきらめていたが、つい先日たまたま見つけることができた。         

 以前予告編を見た時、私はこの作品をコメディーだと思っていた。しかし、実は意外とシニカル

なヒューマンドラマだった。主人公はドーンという中流家庭の中学生の女の子。ブスというただそ

れだけの理由で、学校でみんなからいじめられる。ロッカーは落書きされ、先生からも可愛がら

れることがない。いじめからかばってあげた男の子からも「俺のことは構うな、あっちへ行けブス

!」と言われる始末。しかし自分よりも弱い妹に対しては「なにさ、レズ」と強気な発言。普段自分

が言われている言葉をここぞとばかりに浴びせかける。こましゃくれた妹とは対照的に、要領の

悪いドーンは両親からも愛されない。そんなドーンがある日、兄のバンドのボーカルのお兄さん

に恋をする。どんなブスとでも寝るプレイボーイと聞いて、積極的にせまるがまったく相手にされ

ない。こんな誰からも愛されることの無い少女だが、決して挫けることなく、力強く生きている。作

者はブスであるということを、肌の色や性別と同じように自分の力ではどうすることもできない事

実として捉えている。そしてドーンは自分がブスであるということに対して決して落ち込んだりしな

い。典型的な差別社会の構造や、思うに任せない運命を、居場所のない屈折した少女にオーバ

ーラップさせた作品だ。                                           

 それにしても、ドーン役のヘザー・マタラーゾは良かった。いつも半開きの唇がなんともいえずか

わいくてブス加減がちょうどよかった。それから子供同士の喧嘩で「レズ」「ホモ」「麻薬」という言葉

が良く使われていたが、セリフとはいえその国を象徴した言葉に恐ろしさを感じた。その点、まだ日

本は後進国だなと思う。(実際、今の日本で子供たちがどんな言葉で喧嘩してるか知らないけどね。

もっと辛辣だったりして。)『大人は判ってくれない』や『忘れられた人々』などの貧困にあえぐ子供や

社会を起点にしたキッズ・ムーヴィーと違い、基本的には食事の心配をすることのないミドルクラスの

子供たちが経験する苦痛をうまく正当化したいい作品だと思う。★★★★                

                                       

 
【※】ちなみに★は5点満点だよ。