2003年に読んだ 

2003年
読了日 書名 著者・出版社 コメント
1/1 デッド・ゾーン(上)(下) スティーヴン・キング著
吉野美恵子訳 新潮文庫
 ある事故をきっかけに予知能力を身に着けてしまった男の悲劇を描いた作品。1983年にクローネンバーグによって映画化されている。主人公ジョン・スミスが最後に取った行動は、いかにもアメリカ人らしい。
1/6 The Informers Bret Easton Ellis著
Vintage Contemporaries
 LAに住むヤッピー達の空虚な生活をだらだらと描いた作品。『アメリカン・サイコ』ほどではないけれど、似たような読後感がある。文章は米俗語でいっぱい。
1/14 収支決算!ワールドカップ 宝島社  バイロム社のチケット問題、スタジアム建設問題、反韓・嫌韓騒動などについて、各業界人のインタビューにより、様々な角度から2002年W杯の功罪を検証している。面白い。
1/15 わしズム Vol.1 幻冬舎  『戦争論』の小林よしのりが編集する「知的娯楽本」。様々な価値観を持つ人々の意見から、真実に迫る価値を発見する。個人的には、高崎経済大学助教授の八木秀次氏の「平均的日本人」に共感した。
1/18 インストール 綿矢りさ著
河出書房新社
 史上最年少17歳で文藝賞を受賞した女子高生が書いたフィクション。女子高生と小学生がコンビを組んで、ネットの風俗チャットで一儲けする話。あまりにも鋭い視点にドキリとさせられる。
1/26 わしズム Vol.2 幻冬舎  小林よしのりが編集する「知的娯楽本」の第二弾。新たな連載も加わり、パワーアップしている。今回は軍事をテーマにしたものが多い。
2/17 わしズム Vol.3 幻冬舎  今回は「食」に関する話題が面白い。
2/25 アホでマヌケなアメリカ白人 マイケル・ムーア著
松田和也訳 柏書房
 映画監督でもあり業界人のマイケル・ムーアが、現アメリカ大統領ジョージ・ブッシュを鋭く批判した一冊。あくまで政治家と一部の金持ちが攻撃対象。そんなムーアの言葉の中にも、「アメリカが1番」という自負心が見え隠れしている。
2/26 The Great Blue Yonder Alex Shearer著
Macmillan Children's Books
 「青空のむこう」の原本。事故で突然命を失った少年が、生きている時に果たせなかった思いを胸に「この世」に戻ってくる。幽霊として彷徨ううちに、「死」というものを理解し、受け入れ、青い空の向こうへ旅立っていく。子供向けのわりに、観念的。
3/1 俺が、作る! 岡野雅行著
中経出版
 東京下町で金型プレス会社を営み、その技術力で世界的にも有名な岡野雅行氏が自身の経営哲学を語った本。
3/4 奇跡の詩人 滝本太郎・石井謙一郎著
同時代社
 2002年4月に放映されたNHKスペシャル「奇跡の詩人〜11歳 脳障害児のメッセージ」について、様々な見地から推考し異議を唱えた検証本。面白い。
3/8 不幸に気づかないアメリカ人幸せに気づかない日本人 小林至著
ドリームクエスト
 東大出のプロ野球選手が退団後、7年にも渡るアメリカ生活から感じ取ったアメリカの真の姿と、日本人であることの幸せを語った本。面白い。
3/15 プチ哲学 佐藤雅彦著
マガジンハウス
「だんご三兄弟」や「ポリンキー」などのCMを手がけた広告クリエーターの佐藤雅彦が、「ちょっとだけ深く考えてみる」をテーマに、哲学的な物の考え方について、かわいいイラスト付きで解説した本。
3/31 Catcher in the Rye J. D. Salinger著
Warner Books
 サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の原本。最近、村上春樹版の新訳本が発売された。欺瞞に満ちた世の中に嫌気がさし、ひとり学校を飛び出した16歳の少年の心を通し、青少年時代に誰もが持つ感情を見事に描いた佳作。いい本です。
4/15 エクソシスト ウィリアム・ピーター・ブラッティ著
宇野利泰訳 創元推理文庫
 悪魔祓いの描写を中心とした映画とは異なり、あくまでも精神病理学者としてのカラス神父の活躍が主題となっている。最後にダイアー神父とキンダーマン警部補が語るシーンも映画には登場しない。
4/27 食べるな、危険! 日本子孫基金
講談社
 市民団体の日本子孫基金が、独自の調査結果に基づいて、品目ごとに危険な食品を列挙し解説している。すべてを鵜呑みにする必要は無いけれど、情報として知っておいた方がいい。
4/29 出版クラッシュ !? 安藤哲也・小田光雄・永江朗著
編書房
 危機的状況にある出版業界の内幕本。面白いけど文章が読みづらい。
5/2 徹子と淀川おじさん 人生おもしろ談義 黒柳徹子・淀川長治著
NTT出版
 淀川長治が13回に渡る「徹子の部屋」出演で語った全記録。映画だけでなく美しく生きることについて、自分の人生を振り返りながら楽しく語っている。映画の見方が変わるかも。いい本。
5/20 ねじまき鳥クロニクル 村上春樹著
新潮社
 相変わらずの村上春樹ワールド。これまでの長編と比べると、より深く難解になっている。懲ってる割に、呆気ないラスト。
5/24 だからアメリカは嫌われる マーク・ハーツガード著
忠平美幸訳 草思社
 アメリカ人である著者自ら、「なぜアメリカは世界中から嫌われているのか?」について検証している。所詮アメリカ人のアメリカ観はこの程度だが、時折鋭い指摘もあり、我が国も他人事ではないように思える。
5/25 まれに見るバカ 勢古浩爾著
洋泉社
 著名人を一人一人あげつらって、そのバカぶりを露呈する本。鋭い指摘もあるけれど、単に言葉の揚げ足取りとなっている部分が多い。特に面白みも新鮮さもない。
5/29 わしズム Vol.4 幻冬舎  前号よりページ数が増えて、値段も高くなっている。漫画のページが増えて、つまらない文章も増えた。でも、GRAYのTAKUROとの対談は良かった。
6/1 経済ってそういうことだったのか会議 佐藤雅彦・竹中平蔵著
日本経済新聞社
 経済の仕組みについて、広告クリエーターの佐藤雅彦と経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏が語り合った対談集。今どきの若者風に言えば「ヤベーよ、この本!」。とにかく経済が分かった気分になってしまう。超お薦め。
6/7 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか 村上春樹著
朝日新聞社
 その昔「週刊朝日」に連載されたエッセイをまとめた本。話題としては随分古くなってしまっているけれど、村上春樹の視点で見た世界は結構面白くて好きだ。
6/18 わしズム Vol.5 幻冬舎  面白い記事と、面白くない記事との差がはっきりしてきた。自民党前幹事長・古賀誠との対談は興味深かった。
6/25 中野シネマ 中野翠著
新潮社
 エッセイスト・中野翠さんの辛口映画コラム集。インテリ好みの退屈な「ホンモノ」をばっさりと切る。この人とは趣味がとても合う。
7/11 人類はなぜUFOと遭遇するのか カーティス・ピーブルズ著
皆神龍太郎訳 文春文庫
 アメリカでUFO神話がどのように創り上げられてきたかを年代記として検証した本。1947年以降のあらゆるUFO事件を徹底調査。ちょっと訳文が読みづらい。
7/20 毎月新聞 佐藤雅彦著
毎日新聞社
 広告クリエーターの佐藤雅彦が、毎日新聞に月1で掲載していたコラムをまとめた本。独自の視点で、何気ない日常を鋭く切り取り、そこに潜む法則や発見を見出す。
7/26 わしズム Vol.6 幻冬舎  今号は「イラク戦争と倫理」がテーマ。大高未貴のサウジアラビアについての記事は目から鱗。
7/29 僕はアメリカに幻滅した 小林至著
太陽企画出版
 アメリカ社会の構造的欠陥を自身の体験を交えて分析している。この本を読むと、つくづく日本人に生まれて良かったと思う。この人の文章は読み易くていい。
8/1 脚本通りにはいかない! 君塚良一著
キネマ旬報社
 『踊る大捜査線』などで有名な脚本家の君塚氏が、実在の映画から脚本家の苦労や真意を読み解き、脚本執筆のテクニックを明かす。
8/11 ルールズ・オブ・アトラクション ブレット・イーストン・エリス著
中江昌彦訳 中央公論社
 ドラッグとアルコールとセックスに明けくれる80年代のアメリカの大学生たちの空虚な日常を描いた作品。最近になって、ロジャー・エイヴァリー監督によって映画化されたが、日本公開は未定。
8/16 タレコミW杯 サポティスタ編 流星社  「サッカー馬鹿」たちの視点から捉えたW杯の本。テレビでは分からないW杯の裏話が満載。
8/31 「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? 村上春樹著
朝日新聞社
 村上春樹のホームページ「村上朝日堂」の中で、読者から寄せられたありとあらゆる疑問に、春樹氏自ら電子メールで答えた282問を収録。文章から春樹氏の人格がなんとなく浮かび上がって見えるような気がする。
9/5 ポートレイト・イン・ジャズ 和田誠・村上春樹著
新潮社
 和田誠が描いた26人のジャズ・ミュージシャンの肖像画に、村上春樹がエッセイを添えたもの。ジャズの入門書ではなく、あくまでも両氏の個人的な思い入れで作られた一冊。
9/8 ささやかだけれど、役にたつこと レイモンド・カーヴァー著
村上春樹訳 中央公論社
 短編集。どの物語も悲しみと優しさに満ち溢れ、不思議と心の底が温かくなってくる。村上春樹の訳も良い。
9/9 おじいさんの思い出 トルーマン・カポーティ著
村上春樹訳 文藝春秋
 若き日のカポーティが田舎のおばあさんに宛てて書き贈った小品。春樹氏は創作業より翻訳業のほうに素晴らしい才能を発揮していると思う。
9/10 あるクリスマス トルーマン・カポーティ著
村上春樹訳 文藝春秋
 カポーティ自身の幼い頃のクリスマスの思い出。イノセント・ワールド全開。
9/15 戦争論3 小林よしのり著
幻冬舎
 本じゃないですね。漫画ですね。イラク戦争と過去の日本の戦争を比較しながら、日本を真の独立国家とすべく、日本国民の尻を叩く。
9/27 スイス探訪 國松孝次著
角川書店
 元警察庁長官の國松氏が、スイス大使時代の体験を基に、したたかなスイス人のしなやかな生き方から、日本の未来を考えるヒントを探る。
10/2 夜になると鮭は… レイモンド・カーヴァー著
村上春樹訳 中央公論社
 5つの短編と、亡き父を偲ぶエッセイと、詩集。巻末に村上春樹によるインタビューあり。
10/15 知って役立つキリスト教大研究 八木谷涼子著
新潮OH!文庫
 教派の違いや専門用語などを、素人にも分かり易く説明している。西欧人の価値観の根底をなすキリスト教だが、知っているのと知らないのとでは洋画の理解度にかなり差が出るだろう。
10/29 鬼畜米英 がんばれサダム・フセイン ふざけんなアメリカ!! 木村三浩編集
鹿砦社
 新右翼団体「一水会」代表、木村三浩による、イラク支持者の声を集めた論文集。何度もイラクを訪問し、湾岸戦争の頃からフセイン大統領を支持してきた氏のフセインを美化する語り口は過激だ。かなり「右」な本。
11/1 ドリームキャッチャー
〈1〉〜〈4〉
スティーヴン・キング著
白石朗訳 新潮文庫
 映画もひどかったけど、今までのキングの作品の中で最低の出来。まるでB級SFアクション映画の脚本を思わせるようなへたくそな文章に、ダメダメ翻訳で、途中何度も投げ出しそうになったけど、なんとか読了。
11/26 海辺のカフカ〈上〉 村上春樹著
新潮社
 春樹の小説にしては珍しくちょっぴりSFチック。主人公が15歳の少年というのは、ちょっと感情移入しづらいかな。まだ下巻を読んでいないので、何とも言えないけれど。
12/15 What We Talk About When We Talk About Love: Stories Raymond Carver著
Random House
 17の短編を集めた作品集。その内の何編かは村上春樹の日本語訳で読んだことがあるのだが、原文で読んだほうが、カーヴァーの物悲しい語り口が、より直接的に伝わってきて良い。
12/16 海辺のカフカ〈下〉 村上春樹著
新潮社
 途中までは面白かったんだけどなぁ。後半はなんだか無理やりまとめた感じ。リピはないと思う。
12/22 “It”(それ)と呼ばれた子 幼年期 デイヴ・ペルザー著
田栗美奈子訳 ソニーマガジンズ
 カリフォルニア州史上最悪といわれた虐待を生き抜いた著者が、幼年期に母親から受けた虐待の数々を赤裸々に語った本。読んでいると、胸が悪くなってくる。

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