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原作 浅田次郎
監督 滝田洋二郎
主演 中井貴一
佐藤浩一
中谷美紀
三宅祐司
[2002年/日本/カラー/137分]
配給:松竹
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評価 |
★☆☆☆☆ |
あらすじ |
幕末の京都・壬生。尊皇攘夷の名の下にこの地で結成された新撰組は、表向きこそ勢いを見せるが、力を増す倒幕勢力の前に浮き足立ち士気は低下の一方だった。そんなある日、一人の剣士が入隊してきた。盛岡の南部藩出身のその男、吉村貫一郎はみすぼらしい身なりに似合わず、これまでに何人もの人を斬り捨ててきた猛者だった。しかし、大儀のためには己の命をも顧みない隊士たちの中にあって、恥ずかしげもなく命に固執し、さらには何かにつけてお金に執着する貫一郎の姿は異彩を放っていた。そんな貫一郎に、近藤勇も一目置く斎藤一は嫌悪を感じるのだったが…。 |
レビュー |
『まっすぐに泣ける生き方がある』 これこの映画のキャッチコピー。
けど2時間17分の間で涙が出たのはあくびをしたときぐらいでした。
んもう全然面白くないの。
とにかく泣かせよう泣かせようという演出が大げさでうざく、そしてなんか古臭い。
監督は滝田洋二郎。『コミック雑誌なんかいらない』を撮った監督さん。この頃が全盛期でその後はことごとく駄作を作り続けているかたです。最近では『陰陽師』なんてくだらない映画をヒットさせてます。
この監督さん、原作を読んで涙が止まらなくなって映画化を決めましたなんて言ってましたが、なんか原作を思い出しながら映画作ったんじゃない?『あ〜あのシーンは感動したな〜。よしあそこは映画に入れよう。あ!あのシーンなんかも入れたいな〜♪』みたいな感じで・・・とにかくいろんなエピソードを詰め込みすぎ。そのうえ時間軸も過去や現在をいったりきたり。
過去から現在のシーンに戻って佐藤浩一の横顔を2,3秒流してまた過去に話が飛ぶ始末。なんじゃそりゃ。もっと考えて映画作りなよ。一応プロなんだからさ〜。
とにかく話の柱がしっかりしてないので観ている方はただ2時間17分もの間垂れ流し映像を見せられるだけというお粗末な出来です。
こんなことなら新撰組における吉村貫一郎と斉藤ーの人間関係に重点を置いてくれた方がよっぽど面白かったのに。
けどこの映画は貧しい家族のためにお金をとにかく稼ごうとする吉村の生き方にスポットライトを当てています。にもかかわらず余りに表面的な演出しか施されていないため全く感情移入が出来ません。
たとえば吉村の家族の描き方です。確かに貧しい身なりでちょこちょこ出てきますが肝心の貧しくひもじい日々の生活は全く描いてないんです。このままでは冬を越すことも出来ず死のうとさえしてしまう妻、そこまで至ってしまうほどの切迫した生活模様を観客に見せてくれないと吉村の行為の裏にある彼なりの決意ってものは本当に伝わっては来ないでしょう。
もう1つ例を挙げるなら吉村が脱藩を決意して家族と別れを偲ぶシーン。
橋の上で素人子役みたいな娘を抱きしめて涙を流します。そんでもって泣け〜!!と言わんばかりに久石譲の音楽で大げさに盛り上げます。
ここはこの映画で一番泣かせようとしているシーンですが全然だめ。
そもそも脱藩するということは家族とは今生の別れであり、もう生きてる間に会うことは無いということ。しかも残された家族には厳しい取調べや死ぬまで村八分にされるというとんでもない現実が待ち構えています。更に脱藩後のあてもこの時点では何も無いわけだから状況が好転するという確約なんてなんにもない。それでもこのままでは一家心中しかない家族が下した苦渋の決断のシーンなんです。
けどそんな背景が全く見えてこない。まるまる太ったほっぺの女の子なんか出てきちゃうもんだから『あんたら冬こせるって・・(−・−))』と思いました。
脱藩の説明も『今で言う亡命みたいなもの』だけ。それじゃあ伝わんないことが分からんのかいこの監督さんには。
全編この調子なもんだから2時間17分が異常に長く感じました。
力のある監督なら余計な部分をごっそりそぎ落としてもう少し見ごたえのある映画にできたかもしれません。
中井貴一と佐藤浩一の演技が良いだけにそこの辺が悔やまれます。
ところでラストシーン、幕府軍との戦いが長屋で行われるのはなぜに??
ロケするお金なかったの?? |
観賞データ |
2003年9月9日 レンタルDVDにて |