夜間飛行 サン=テグジュペリ 新潮文庫 ★★★★

 厄除け詩集 井伏鱒二 講談社文芸文庫 ★★★★★
 自作詩、漢詩の名訳を含む名作詩集。

 大和路・信濃路 堀辰雄 新潮文庫 ★★★★
 エッセイを初めて読んだが、こんなに良いとは思わなかった。
 これを読む前はくだらないものばかりだと思っていた。
 これに比べると、最近の作家のエッセイがいかにくだらないものかわかる。
 優れた作家は、小説だけでなくエッセイも素晴らしいのだ。

  

 友情 武者小路実篤 新潮文庫 ★★★★

 夕鶴・彦市ばなし 木下順二 新潮文庫 ★★★★

 郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェームス・ケイン 新潮文庫 ★★★★
 ハードボイルド文学の傑作。

 雪国 川端康成 新潮文庫 ★★★★★
 最近、この作品を「ストーリー性がない」と言って、非難する奴がネット上でいたので、
 腹を抱えて笑い転げた。純文学になにを求めているのか。
 ストーリー性などを求めるならば、拙劣な大衆文学でも買っていればよかろう。
 純文学はひたすら、文章と描写の美しさに惚れこむジャンルなのだ。ストーリー性は二の次だ。
 ストーリー性! こんな軟弱な言葉によって古典は現代の愚かな読者によって蝕まれるのか!
 そんなものを吹き飛ばしてしまうほどの凄まじさをこの書物に感じることはできないのか。
 ならば読む必要などない。そんな者は、純文学なんか読む必要はない。
 古典達も、そのような愚かな読者に自分の作品を読まれることを望んでいない。汚れるからだ。

 雪のひとひら ポール・ギャリコ 矢川澄子:訳 新潮文庫 保留

 ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 宗教紛争はなぜ終わらないのか 井沢元彦 徳間書店 
 要するに『井沢元彦は宗教が大嫌いです! ただし神道以外☆』って言いたいんだろ。書名もそういう風に変更しろ。

  

 杳子・妻隠 古井由吉 新潮文庫 ★★★★
 文章の美しさが神の領域。

 欲望という名の電車 テネシー・ウィリアムズ 新潮文庫 ★★★★★
 面白い。グングン読める。そして最後は悲しい。

 吉野弘全詩集 吉野弘 青土社 ★★★★★
 1926年、山形生まれの詩人。東北出身なのに、みちのくの雰囲気は微塵も感じさせない都会的な作風。
 もともとサラリーマンだったなか、詩を書き始めたため、
 詩の着想やテーマは、通俗的なものが多く、ややもすると綺麗すぎて、感傷過多の傾向も見られるが、
 類稀なる感受性と、インパクトのある文章の切れ味で、そういった弱点を全てカバーしている。
 谷川俊太郎らと並ぶ戦後の大詩人という肩書きは伊達ではない。
 初期の作品が良いのももちろん、晩年になってくると漢字遊びのようなおふざけ詩が増えてくるのが難点だが、
 それでも「人形譚」などの凄まじい作品がたまにあるのが素晴らしい。
 読んでおくべき詩人。

 40ヶ国語習得法 私はこうしてマスターした 新名美次 ブルーバックス ★★★
 医者をやるかたわら、語学をきわめて、40ヶ国語(自称である点に注意)もマスターしてしまったという
 著者の、語学をやる際に重要なコツと経験を語る本。
 どんな近道ヒントが隠されているのかと思って買ってみたが、なんのことはない、
 著者がやっていることは、やはりひたすらの努力・努力・努力なのであった。
 もちろん、語学学習時に絶対にやってはいけない勘違いなどはとても詳しく書いてあるが、
 そのルールは、今まさに僕が英語を学習する際、とっくに気をつけていることだった。
 逆に言うと、僕がやっていること著者がやったことはほとんど同じで、
 このまま僕も学習を続ければ、40とはさすがに行かなくても
 最低8〜10ヶ国語くらいは話せるようになるかもしれない、という希望は楽観的に過ぎるか?
 というか、それだけ学べば十分だろう。
 そういうわけで、「千里の道も一歩から」と自分を安心させ、モチベーションを保つには役立つ本。
 とはいえ、第二外国語習得論を真剣に考えるならば、
 言語学系のちゃんとした本を買ったほうがいいかもしれない。

 ちなみに、こちらが著者がマスターしたと自称している40の言語。
 英語、ドイツ語、オランダ語、イディッシュ語、デンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語、
 アイスランド語、フィンランド語、アイルランド語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語、
 ルーマニア語、ラテン語、ギリシャ語、ロシア語、ウクライナ語、ブルガリア語、マケドニア語、
 セルビア・クロアチア語、スロヴェニア語、チェコ語、スロヴァキア語、ポーランド語、リトアニア語、
 ハンガリー語、ヘブライ語、ペルシャ語、トルコ語、アラビア語、ヒンディー語、中国語、韓国語、
 インドネシア語、タイ語、ベトナム語、フィリピン語(タガログ語?)、スワヒリ語。
 ただし言語学に詳しい皆さんならご存知のとおり、これらの言語のうち、
 スペイン語とポルトガル語、デンマーク語とスウェーデン語とノルウェー語、
 ロシア語とウクライナ語、ブルガリア語とマケドニア語とセルビア・クロアチア語とスロヴェニア語、
 チェコ語とスロヴァキア語……は、互いに通訳いらずで会話できてしまうほど似通っており、
 日本語でいう標準語と関西弁ほどの差すらない。
 当然、これらのグループのうちひとつを学ぶと他の同じグループの言語は方言感覚でスラスラ覚えられる。
 それらをカウントするのは少しずるくないか。
 ちなみにそれらを<一つの言語>として数えて割り引いた場合、
 著者のマスターした言語は実質33個前後となる。
 そもそも著者は本当にこれらの言語をペラペラ話せるのか、
 TOEICでいう900点以上、英検でいう1級クラスのレベルで?
 母国語と大差ないレベルでしゃべれるようにならないと、とてもじゃないが「マスター」したとはいえないだろう。

 著者には、これに飽き足らず「悪魔の言語の宝庫」と呼ばれるアジアの言語群に挑戦してほしい。
 20〜30の全く違う言語があり、それぞれが古い歴史と独自の文字体系をもつインド周辺の言語。
 独自の文字プラス中国語のような声調を持つ東南アジアの言語。
 方言差が激しく、お互いに全く意思疎通できないばかりか、文法、声調まで違う中国諸方言。
 中国標準語(北京語)が4トーンなのに対し、上海語では3つ、
 広東語では6つ、客家語に至ってはなんと9つ(!)
 恐ろしいアジア。



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