マーク・トウェイン短編集 マーク・トウェイン 新潮文庫 
 出版社と訳者が悪い。何故こんなに文字が小さい? 何故こんなに文字に点々ばかりうってある?
 読みづらいったらありゃしない。そのためこの点数。決して原作に対する評価ではないのであしからず。

 貧しき人びと ドストエフスキー 木村浩:訳 新潮文庫 ★★★★★
 世間から侮蔑の目で見られている小心で善良な小役人マカール・ジェーヴシキンと
 薄幸の乙女ワーレンカの不幸な恋の物語。
 世界で最も偉大な作家である(そう言いきってしまおう! 偉大な作家の「ひとり」ではない!)、
 ドストエフスキーの処女作で、書簡体小説の形をとったこの作品は、
 文字通り、貧しい人びとの恋愛書簡を通して、世の中の不幸、孤独、辛い貧しさを描き、
 これによってドストエフスキーは「第二のゴーゴリ」と称されて、一躍ロシア文学界の新星となった。
 まだ若干ロマンティックな感傷の入る余地があるこの処女作は、
 後に見られるような完璧で、もはや付け入る隙さえ見せることのないドストエフスキーと違い、
 幾分通俗的な面も見られないわけではないが、彼の容赦のない筆は、
 その心理描写において、不幸に襲われた人間の姿を鋭く描き出すとともに、
 類稀なるストーリー・テラーぶりも発揮して、一度読み始めたら本を置くことができない、
 紛れもない「傑作」と呼んで何の差支えもない作品となった。
 しかも、この現代の聖人と言われる作家は、この地に留まらず、
 今更書く必要にも及ばない、空想社会主義思想への接近・逮捕・シベリア抑留を通じて、
 世界に誇る素晴らしき作家であるゴーゴリでさえ、遥かに超えてしまうほどのスケールの作品を、
 次々と発表していくのである。恐ろしい。彼の文体は一見読みずらそうにみえて読みやすく、
 一旦その会話のテンポに身を引き込まれたら最後、絶対に途中で休憩を挟むことができないほど熱中してしまうのだ。
 それでいて、最初から身につけている空前絶後のスケール感を、数々の体験によって
 ますます深めて、ついには誰も及ばない作家にしてしまったのである。
 彼の作品は、聖書やホメロスなどと共に、一千年後であろうと、一万年後であろうと、
 読み次がれていくことだろう。彼の作品を読んでいない者は人生を損しているといっても大袈裟ではない。

 マルテの手記 リルケ 新潮文庫 ★★★★★
 もうリルケは神様です。

 万延元年のフットボール 大江健三郎 講談社文芸文庫 ★★★★☆
 友人の自殺にショックを受け、心を閉ざす、片目の見えない主人公蜜三郎。
 安保闘争を経験し、傷ついた弟の鷹四。障害児を出産した、蜜三郎の妻、菜採子。
 苦渋に満ちた登場人物たちが、新しい生活に希望を賭け、四国の谷間の村を目指して出発した。
 しかし、そこがスーパーマーケットに、いいように牛耳られている事実を発見した鷹四は、
 仲間と共に、万延元年の村の一揆をなぞるように、暴動を起こす……。
 この作品は、大江の作品群の中で、初期から後期に作風を転換した最初の記念すべきものだ。
 文体は硬質になり、以前のような若々しい雰囲気は削ぎ落とされた。
 蜜三郎は卑屈な性格で、暴動を起こした弟の鷹四に共感できず、彼と対立する。
 暴動にも失敗し、兄との対立にも追い詰められた鷹四は、蜜三郎の妻である菜採子と交わり、
 妊娠させた後、自殺する。やがて鷹四を様々な角度から追い詰めていた事実が明らかになるにつれて、
 蜜三郎は愕然として、悔いるが、妻は「今更気付いたのか」とばかり夫を責め、鷹四の子を産むことを決心する。
 実にやりきれないストーリーである。だがこの作品は、硬質ながらも美しい日本語の文体も魅力的だし、
 何より四国の谷の風景描写が綺麗だ。読んでいる間楽しかったし、読み終わった後、テーマを感じることもできた。
 現代の日本文学界で、大江ほどテーマと中身に内容を持たせられる作家は殆どいない。
 彼の作品を、原文で読めること自体、日本に生まれてきて幸運だと思える。
 それにしても、スーパーマーケットの支配者を「スーパーマーケットの天皇」呼ばわりし、
 しかもその天皇の正体がヤクザ絡みの在日朝鮮人という設定には驚かされた。
 大江も随分辛辣な皮肉屋である。

  

 未成年 ドストエフスキー 工藤精一郎:訳 新潮文庫 ★★★★☆
 ドストエフスキーの作品の中でも、一番難しい。破綻を見せずに読ませる、
 他の「罪と罰」「白痴」といった作品と違って、この作品中に描き出される未成年、アルカージイは、
 どうも大言壮語ばかりしていて、ちっともいいところがなく、ピンチに陥るとあたふたして、
 まわりを迷惑なできごとに巻き込むことしかできない。
 ドストエフスキーの登場人物の中でも、最も尊敬できない、くだらない人物の一人だ。
 だが、この未成年特有の馬鹿さ加減をドストエフスキーが描こうとしていたなら、
 その意図はまさしく成功していることになる。何か偉いことをやってのけようと思いながら、
 その実、何も偉いことをやってのけない情けない人物。現代にも沢山いるではないか?
 やや散漫なところもあるので、ドストエフスキー作品の中で一番好きというわけではないが、
 それでもやはり彼の作品だ、読ませるところは読ませる。クライマックスでは相変わらず緊張を持続させるのが上手い。
 読んで損はないだろう。良作だ。ただ、少し語りすぎているような部分もあるような気がする。
 判断が難しい小説だ。問題作といったほうがいいかもしれない。

 みだれ髪 与謝野晶子 新潮文庫 ★★★★★

 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ 室生犀星 講談社文芸文庫 ★★★★☆
 収録作品は、「陶古の女人」「蜜のあわれ」「火の魚」「われはうたえども やぶれかぶれ」「老いたるえびのうた」
 蜜のあわれは、おじさまと、ある時は少女、あるときは金魚の生物との話。シュールレアリズム色の強い傑作ロリコン小説。
 「われはうたえども やぶれかぶれ」は、壮絶なガン闘病記。重い。

 南回帰線 ヘンリー・ミラー 講談社文芸文庫 ★★★★★
 ヘンリー・ミラーに栄光あれ。

 宮沢賢治万華鏡 宮沢賢治 新潮文庫 ★★★★★

 三好達治詩集 三好達治 新潮文庫 ★★★
 太郎を眠らせ……で有名な素晴らしい詩人。でも抜粋。

  

 武蔵野 国木田独歩 新潮文庫 ★★★★

 武者小路実篤詩集 武者小路実篤 新潮文庫 ★★★★
 平明で、簡潔で、心が優しくなれます。

 室生犀星詩集 室生犀星 新潮文庫 ★★★
 抜粋。

  

 迷犬ルパンの名推理 辻真先 光文社 ★★
 単なるライトノベル。つまらない。

 夫婦善哉 織田作之助 新潮文庫 ★★★★

 メノン プラトン 岩波文庫 ★★★★★
 幾何学が入ってきたのでちょっと難しそうだったが、思ったほどでもなかった。
 挑戦すべき。

 目まいのする散歩 武田泰淳 中公文庫 ★★★★
 泰淳最後の作品。随筆的な8篇の小説からなる。
 なんと、この作品は泰淳が、妻の武田百合子に、口述筆記をさせたものだという。
 しかしこの作品の完成度は、そんなことを微塵も感じさせない。

  

 木犀の日 古井由吉自選短篇集 古井由吉 講談社文芸文庫 ★★★★

 モモ ミヒャエル・エンデ 岩波書店 ★★★★★
 読みなさい。



戻る