は
灰色の月・万暦赤絵 志賀直哉 新潮文庫 ★★★★
絶対的な自我肯定を行動の規範とし、その生の体験を書くことによって鮮烈に生き直した強靭な個性の作家、志賀直哉。
その生の歩みは、長く、美しく、豊かであった……。著者の第三期(晩年)を代表する作品を収めた短編集。
筆力は全盛期ほどではないが、年をとるにつれてますます哲学的真理を見出していく彼は、やはり素晴らしい作品を書いていた。
パイドロス プラトン 岩波文庫 ★★★★★
ソクラテスとパイドロスの対話の中に生まれてくる哲学。
パイドン プラトン 岩波文庫 ★★★★★
プラトンの最高傑作。ソクラテスの対話と、その死は、僕の心を大いに感動させた。
とくにラストシーンは心から何かがあふれ出そうだった。
ハイネ詩集 ハイネ 新潮文庫 ★★★
ハイネの代表作を集める。
バイロン詩集 バイロン 新潮文庫 ★★★
バイロンの代表作を集める。
蝿の王 ゴールディング 新潮文庫 ★★★★★
グロいけど、読んで。
萩原朔太郎詩集 萩原朔太郎 新潮文庫 ★★★
抜粋なのが非常に残念だ……
白痴 坂口安吾 新潮文庫 ★★★★☆
素晴らしい作品群だ。堕落論を理解できずに安吾に幻滅していた僕は、なんだ、凄い作家じゃん、と思った。
最初に堕落論を読むのではなく、こっちを先に読んでおいたほうがいいだろう。
事実僕は、順序を逆にし、堕落論を先に読んで全く失敗した。
白痴 ドストエフスキー 木村浩:訳 新潮文庫 ★★★★★
匣の中の失楽 竹本健治 双葉文庫 ★★★★★
はじめて学ぶ哲学 渡辺二郎 ちくま学芸文庫 ★★
哲学者の名前を知るには役立つかもしれない。著者の訳者としての経歴は賞賛に値する。
だが訳者が優れた哲学解説本を書くわけではないのは、すでに明らかである。
残念ながらこの書物もその例を免れなかった。この人の場合はハイデッガーの信者になっただけである。
「この人しか信じない! この人しか正しくない!」と盲信するのは、哲学ではなくて宗教である。
もちろんこれはマルクス主義者たちにも言えることであって、マルクス主義はもはや狂信的宗教になっていたこともあるが、
だからといってカール・マルクスという一人の哲学者が、学ぶ価値がない、というわけになるだろうか?
「非常に問題性のある思想」というが、所詮哲学なんて大なり小なり人殺しの思想として使われているんだから、
この際ハイデッガーだろうがマルクスだろうがひいきはナシだ。
ハイデッガーだってナチスに加担してたじゃないか。結局みんな同じなんだよ。
走れメロス 太宰治 新潮文庫 ★★★★★
ハックルベリイ・フィンの冒険 マーク・トウェイン 新潮文庫 ★★★★★
はつ恋 ツルゲーネフ 新潮文庫 ★★★★
はてしない物語 ミヒャエル・エンデ 岩波書店 ★★★★★
あまりにも素晴らしい内容なのであまり多くを語ることができない。
おすすめ。この書物を読んだ時、きっとあなたは感動するだろう。
パニック・裸の王様 開高健 新潮文庫 ★★★★
巴里の憂鬱 ボードレール 新潮文庫 ★★★★★
散文詩集。三好達治訳。
バロック音楽 皆川達夫 講談社学術文庫 ★★
「バッハ以前の偉大な作曲家たちに光を当てる」という売り文句で買ってしまったが、
詳しく書かれているのは、リュリ、ラモー、クープラン、パーセル、ヴィヴァルディ(否定的に書かれている)、
フレスコバルディ、コレッリ、ヘンデル等といった結局すでに有名な作曲家たちだけで、
それ以外の、マイナーながらも傑作を残している作曲家は、ただの名前の列挙に終わっている。
僕はこの本を読むたび「そんなこと、もう知ってるよ!」と怒った。僕はそれ以外のさらに詳細な説明が欲しいのだ。
この本は、本当の初心者中の初心者が読むような本であろう。僕にとっては、高すぎる1200円という割に合わない本であった。
ただ、最後の、
「21世紀以降は、ポピュラー音楽とクラシック音楽を融合した、新たなジャンルの音楽が出現し、時代をリードしていくだろう」
という記述には、なるほど、そうかなと関心した。すると僕の未来がなんだかとても楽しみになってきた。
今から、どんなジャンルが出現するのだろうと思うとワクワクが止まらない。そこだけ良かった。
だから星一つにしてやろうかと思ったけど二つにしてやる。感謝しとけよ。(そんなの生まれるわけないがな!)
ひ
光あるうち光の中を歩め トルストイ 新潮文庫 ★★★★★
ひかりごけ 武田泰淳 新潮文庫 ★★★★★
短編集。表題作は日本文学史上最高クラスの作品だと思う。
秀吉と利休 野上弥生子 新潮文庫 ★★★★
面白かった。でも文章にちょっと癖あり、注意。
これを80歳で書いた作者は凄い婆さんだ。
一房の葡萄 他四篇 有島武郎 岩波文庫 ★★★★
表題作を読んだ人は結構多いのではないだろうか。
悲の器 高橋和巳 新潮文庫 ★★★★
さすが「苦悩教の教祖」といわれるだけあって、ここまで暗いと逆に笑えてくる。
好き嫌いが分かれるだろうが、僕は嫌いじゃない。
読んでいて損はないと思う。女ってこんなに恐ろしいのかって感じられるし。
百年の孤独 ガルシア・マルケス 新潮社 ★★★★★
ラテン・アメリカ文学最高!
白夜 ドストエフスキー 小沼文彦・訳 角川文庫 ★★★★
ペテルブルグに住む、孤独と空想の生活を営む貧しいインテリ青年である主人公の前に、
白夜と共にナースチェンカという名の美しい少女が姿を現す。
主人公は彼女に一目惚れし、優しく話しかける。
前の恋人にふられてしまったと勘違いし、一人泣くナースチェンカも、
主人公の優しさに心を開き、やがて彼に心惹かれていく。
だが、突如目の前に現れた前の恋人が、ナースチェンカを何事もなかったかのように連れ去り、
主人公の恋は、失恋に終わってしまう……。
ドストエフスキーは、過酷な眼で人間性の本性を凝視し、数々の名作を残した。
だが、それによって堅苦しい説教者と勘違いされやすい彼は、一方で感傷的夢想家の一面もある。
この愛すべき短編を読んだ者は、いかにドストエフスキーが美しい感情を持った叙情詩人であるか、
深く知ることになるだろう。彼は凄まじい作品を書く以前に、愛すべきロマンティシズムを持った、
愛すべき心弱い一人の美しい作家なのである。彼の感情は美しく、繊細なのだ。
そりゃ癲癇の発作も起こすわけだ。
ビルマの竪琴 竹山道雄 新潮文庫 ★★★★
ふ
ファンタジー・ブックガイド 石堂藍 国書刊行会 ★★
今のところ非常に少ないわが国の貴重なファンタジー小説のガイドブック。読まねばならぬ古典は全て抑えられている。
そういう意味で、ファンタジーを何から読んだらわからない! という人にはオススメできる。できるのだが……
問題はこの著者だ。この石堂藍というのはどうも嫌味で辛口な評論家だ。しかも選び方に好みが出ており、
ラヴクラフトやラブレーやパウロ・コエーリョがあまり良く語られておらず、
それでいてスレイヤーズのごとき作品をお勧めに選んでくるとは何事か。あんなのただの紙屑じゃないか。
そこら辺が何か非常に石堂藍は勘違いを起こしていると思われる。基本的にライトノベルは紹介しない方針なんだから、
スレイヤーズなんか持ってこなければよいのに……
ファンタジーのブックガイドが読みたいなら、英語で沢山良いのがいっぱいあるから、頑張って英語を勉強しましょう。
フィツジェラルド短編集 フィツジェラルド 新潮文庫 ★★★★
風琴と魚の町・清貧の書 林芙美子 新潮文庫 ★★★★
女流文学を代表する作家、林芙美子の傑作短編集。
普賢・佳人 石川淳 講談社文芸文庫 ★★★★★
この人、文章うますぎ。
富士 武田泰淳 中公文庫 ★★★★★
不思議の国のアリス ルイス・キャロル 矢川澄子/訳 金子國義/絵 新潮文庫 ★★★
おそらくこの作品は、世界でも翻訳するのが最も難しい作品のひとつだと思うんです。
何故って、全てが言葉遊びとナンセンスから出来上がっていますからね。
で、この新潮文庫版の矢川澄子の訳ですが。
アリスがお下品だったり、文体に品がなかったり、言葉遊びの置き換えが下手糞だったりと、
十分原作の魅力を伝え切れているとは思えませんねー。
なんかハリー・ポッターの日本語訳と同じようなセンスのなさを感じる。
おまけに、金子國義さんの絵も、ファンの方には申し訳ないが、
僕にはどうも合わないようで、好きになれない。
やはり、「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」共に、英語の原書で読まないと、
その世界観や奥行きの100%は味わえないでしょう。
もしどうしても日本語で読みたいのなら、この翻訳だけは避けることですね。
蒲団・重右衛門の最後 田山花袋 新潮文庫 ★★★★
地味だけどかなりいい小説です。で、俺が不思議でならないのは、
何でこんな傑作小説の解説を、この作品を否定するような、田山花袋が嫌いな評論家に書かせるのかっていうこと。
誰だと名前は挙げませんけど(自分で読んで判断してください)、なんでこんな評論書くんだろ。
フュージョン決定版101 音楽出版社 CDジャーナルブック SUPER DISC SELECTION ★★★★☆
ついこの間、国内初となるだけでなく、世界的に見てもあまり類のない
ジャズ・フュージョンのなかの「フュージョン音楽」のディスクガイドを熊谷美広さんが
シンコーミュージックから出したのは記憶に新しい。それは、記念碑的な仕事となった。
あとしばらくフュージョン関係の特集本は出ないな、と思っていたわずか数年後、
今度は違う出版社からディスクガイドが出た。
共同執筆で、執筆者は
池上信次、後藤誠、櫻井隆章、都並清史、長門竜也、村井康司、の6人。
「くっそ〜熊谷のヤローに先越された!」「オレたちも出そうぜ、一人じゃムリだから共同で!」
という運びになったのがミエミエ。
しかしこの本は単なる熊谷さんの二番煎じじゃないことも事実で、
熊谷さんが選びきれなかったなかで、なおかつフュージョン史に名を残すアルバムを
絶妙に選んでいる。
もちろん、これは熊谷さんの先駆的仕事があったからこそ出来ることだが。
選出の基準は、明らかにジャズ・ロック寄りで、熊谷さんとはフュージョン音楽に対する姿勢が全然違う。
もちろんいくつかのアルバムは熊谷さん選出とダブっているが、
その場合も違う方面からの解説・アプローチを常に試みている。
それぞれのアーティスト達の短いながらもポイントをおさえた略歴も魅力的。
一部のライターにカタカナ乱用の醜い日本語を使う西洋かぶれの奴がいることを除けば、
フュージョン・ファンのみならずジャズファンも是非おさえておきたい良書。
フュージョン音楽に関しては、この本と熊谷さん執筆の一連の本に言及されたアルバムを
基本にして手を広げていけば、およそ1000〜2000ほどあるといわれるフュージョン音楽の
重要なアルバムは全てカバーできるだろう。あとは自分の耳を信じるしかない。
誰かこんな感じで、いわゆる「ニュー・ミュージック」関連のディスクガイドを作ってくれないだろうか?
プラトン入門 竹田青嗣 ちくま新書 ★
もう嫌だ。いつから新書は、「プラトン入門」と題名に銘打っておきながら、
いつのまにか自分の思想を語る場所と化したのか。
藤沢令夫は、「プラトン以外は糞だ」と叫び、そしてこの在日は、
「私の研究するプラトン、ハイデッガー、フッサール、ニーチェは最高だけど、それ以外、特にマルクス主義とポストモダン思想は糞だ」
と語っているに過ぎない。それだけの書物である。俺は在日の思想になんか興味ないから、勝手にしろと思って、
この本をお母さんの部屋に投げ捨ててきた。
プラトンを研究するなら「プラトン以外は糞だ」と言ってる藤沢令夫(これもどうかと思うが)のほうが、まだ信頼が置ける。
だいたいプラトンの初期の作品に否定的な時点で、彼の思想を全く理解していない。
この人はどうやら思い込みで本を書いているようだ。
プラトンの哲学 藤沢令夫 岩波新書 ★★★★★
西洋哲学の祖の仰がれる、偉大な哲学者プラトン。
ところが、彼の著書が「対話篇」として書かれていることもあって、
また、書いてある簡潔な文章に比べて、一見なんとでも解釈が可能なほど難解な思想を内包していることもあって、
その哲学の本質は、時代によって、常に歪められ、誤解されてきた。
本書の序盤で、ラッセルやハイデッガー、その他多数の幾多のプラトン批判が、
プラトンの本質を理解していない「読み間違え」によって発展してきたことを、藤沢は指摘する。
また、沢山のプラトン研究者も、その読み間違えによって、「後期でプラトンはイデア論を放棄した」
という支離滅裂な主張をしてきた。
まあ、哲学というものは、常にあらゆる「読み間違え」によって発展するのも否定できないことであるから、
近代以降のプラトン批判により発展してきた哲学による、プラトンの捕らえ方は別に構わないけれども、
それらのプラトン理解がいかに誤解に基づいているか、ということも書いてある。
実際、初期のプラトン主義哲学者たちは、プラトンの書物を、アリストテレスをその解説書・注釈書として
利用しながら理解する、ということをしていたようだ。
そんなことをすれば、イデア論が捻じ曲げられるのは当たり前だ、と藤沢は指摘する。
それらは、そのプラトン主義者たち独自の哲学ではあっても、「プラトンそのものの」哲学では決してありえない
(実際、竹田青嗣の「プラトン入門」はプラトンをニーチェやハイデッガー、フッサールと結びつけながら解釈し、
事実、前期のプラトン著作群を批判している)。
そもそも、アリストテレスからしてプラトンの本物の思想は理解していないのだ。
そして、近代・現代に至るまで、常にプラトンは無理解・誤解に基づく批判をされ、
プラトン研究者達は有効な反論を、反プラトン派に対してすることができず、あたふたして、
それが「イデア論の放棄」などという本末転倒な主張につながった。
本書は、プラトン研究者による、反プラトン主義者に対する、最初の、効果的な反論であると同時に、
真実のプラトン像を理解するために必要不可欠な、プラトン著作の最良の入門書にして、解説書である。
本書の出だしで、藤沢は、まず、「プラトン自身をプラトンの注釈書とする」と書いた。
つまり、プラトンを理解するためにプラトン以外の哲学者の解釈に頼ってはならない、と。
このことは、パスカルがその著書「パンセ」において、
「聖書の言葉を聖書以外の本によって解釈しようとする者は、全て聖書の敵である。」
という言葉を思い起こさせる。
プラトン研究第一人者の藤沢にとっても、プラトンをプラトン以外の書物で解釈しようとする者は、
プラトンの敵ではなくとも、少なくとも味方ではない、ということなのだろう。
そして、歪みなきプラトン像を描き出すことに、本書は成功した。
詳しくは読んでもらうとして(僕は哲学的課題を解説するのにまだまだ不得手だ)、
プラトンを読む際、また研究する際には、必ず読んでほしい一冊だ。
ふらんす物語 永井荷風 新潮文庫 ★★★★
フランダースの犬 ウィーダ 新潮文庫 ★★★★★
アニメより好きになりました。やっぱり原作って良いね。
ブレイブ・ストーリー 宮部みゆき 角川書店 保留
不連続殺人事件 坂口安吾 角川文庫 ★★★★★
安吾が残した傑作探偵小説。僕は探偵小説とかミステリーとかいうのが苦手なんだけど、
この作品は例外的に楽しめた。何故か。第一に、純文学作家が書いたミステリーだから文章が奇怪でありながら整っているということ。
第二に、諧謔精神があること。第三に、怪奇趣味があること。
プロタゴラス プラトン 岩波文庫 ★★★★★
プラトン初期の代表作。
プロ野球 この4番打者がすごい! 宝島SUGOI文庫 ★★
同名の別冊宝島の本を加筆して文庫化したもの。
プロ野球史上に残る、主に4番打者をつとめたスラッガーの特集。
だから3番や5番を多くつとめたバッターは省いてある。
野村克也、落合博満とはじまり、ONはもちろん、
松井秀喜をはじめとする現代の4番も特集に入れているのがうれしい。
だが、ブーマーを入れてペタジーニやオマリーは入れず、レロン・リーは入れて、
彼の兄弟で、同じくらい4番を打ったレオン・リーは記述にとどめるなど、
相変わらずの意味不明な選出の宝島クオリティ。
そしてON以前の4番は、川上哲治だけをチラリと載せて、
藤村富美男、小鶴誠のような大打者を、データと数行コメントだけ残してガン無視。
いかにも団塊の世代向けの本だ。彼らの頭の中はONだけで完結しているのか?
一本塁打あたりの打席数みたいな無駄な計算やってないで、
さっさとデータ集めてセイバーメトリクス化してください。それともデータが残ってなくてできないのか?
様々な選手のあまり知られていないエピソードがつまみ食いできるのはうれしいが、
写真が一個もないのは寂しい。
エピソード関連では、やはりONの凄さに舌を巻いた。
以外に知られていないが長嶋はもの凄く頭が良い。
だがこんな本買うくらいなら個々の選手の伝記をあさったほうがマシだと思った。
週間ベースボールのバックナンバーを集めるほうがいいかもしれん。
別冊宝島の野球関係のクオリティの低さには呆れかえった。もうここから野球関係の本は買わん。
プロ野球 サウスポーの美学 スコラムック ★★★★
まずこの本は、野球の左投手・左打者というのは、右投手・右打者とは全く違う存在、と定義する。
言われてみれば確かにそう。左利きは全人口の10%以下。
必然的にどのスポーツも右利きを前提にして作られる。
中には左利きがやるには困難を極めるスポーツもあるだろう。
そんななか、野球などのスポーツでは、左利きというだけで重宝される。
サウスポーの投手は、球筋も球のキレも右投手とは全く違う。
サウスポーの球は右投手より5キロ速く見える。
サウスポーにはノーコンが多い、というかノーコンでも許される。
そもそも必然的に心臓をかばいながら投げざるをえないサウスポーの投球フォームは
見ただけで右のそれとは違うのがわかる。
だから、全人口では一割しかいない左利きなのに、プロ野球界には三割もサウスポーがいるのだ。
全く同じ能力の145キロの投手でも、右投手と左投手ならプロは間違いなく左を取る。
なかには元々右利きだったのに、偶然の経緯で左投手・左打者になった人もいる。
たまたま左利き用のものしか練習用のグローブがなく、
それで練習するうちいつの間にか左投手になってしまった名サウスポー、今中慎二・野村弘樹。
幼少時代に右手に負った大火傷のせいで、左手しか使えなくなった張本勲。
思えば、球界ナンバーワンの記録はほとんど全て左投手・左打者が独占している。
400勝の金田正一。868本の王貞治。唯一の3000本安打、張本。そしてご存じイチロー。
左・右の違いを、単なる利き腕の違いレベルで考えていた自分を反省。
更に、左投手が必ずしも左打者を得意としているわけではない。
右打者より左打者に、より打たれているサウスポーがなんと5割以上というデータ。
よく「左対左の勝負」などと語られるが、そんなものはイメージ論に過ぎない。
歴代サウスポーの記録・珍発言、各球団ごとのサウスポーの歴史など、データも充実。
野球好きならオススメの一冊。
プロ野球選手100人が選ぶ! 現役最強ベストナイン 別冊宝島(2011年) ★★★
2011年のプロ野球が終わった時点で、別冊宝島が12球団から均等に6〜9人ずつ選んで、
合計100人(+2人?)になるよう選抜し、
その100人に「今年そのポジションで一番素晴らしかったのは誰か」という観念を元に
「2011年終了時でのベストナイン」を選んでもらったアンケートが本書だ。
先発投手、中継ぎ投手、抑え投手、捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、
外野手三人に指名打者と、ポジション別に総投票数が発表され、ランキングとして表示される。
ラストのほうには何故その選手を選んだのか、一人ひとりの現役選手による理由のコメントも付いている。
一般的にプロ野球選手というのは、ダルビッシュ、イチローのようなずば抜けた天才や、
長い間第一線で活躍している一流のベテラン以外は、たいていの場合頭が良いとはいえないが、
それだけに評論家の理屈では説明できない現役選手の「直感」による、普段とは違う選定ということで、
また違った選手の評価を見れる。
だが残念なのは、肝心の宝島が選手に向かって提示したランキング条件が、非常に曖昧だということ。
「そのポジションで、総合的に今年一番良かった選手」などというもんだから、
現役選手特有の意外とミーハーな選定になってしまい、
その結果、たとえば先発投手部門では全100票中、実に89票もダルビッシュ有に集まってしまい、
バリントン、武田勝、田中将大がたった2票ずつという、
リーグ屈指の超一流投手たちが割りを食う結果となってしまった。
それ以外にも吉見一起をはじめとするセリーグの投手たちはたったの1票、
杉内俊哉や成瀬といった抜群の実績を持つ上、今年も活躍した投手たちも1票、
前田健太に至ってはまさかの投票なしという結果になってしまった。
いくら2011の前田が本調子ではなく、勝ち星が伸びないといっても、
相変わらず投手として申し分ない成績を残しているのに、0票とはあまりにもかわいそう。
長年ローテで活躍している石川雅規投手も、全く話題に出てこない。
中継ぎなどでも本来名前が挙がってしかるべき投手がいなかったりすることも多く、
それ以外にもショート部門では、いい選手が集まりすぎて票が分散した結果、
地味だがリーグ屈指の選手として活躍している後藤などが0票と、過小評価を受ける選手があまりにも多すぎる
(これには解説者の高木豊も苦言を呈している)。
また、ファーストでは、強打者たちが統一球に苦しむなか、
比較的好成績を収めた小久保・稲葉・ブラゼルを差し置いて、
今年度絶賛絶不調だった小笠原道大が「去年までの成績を考慮して」何故か1位にランクイン。
反対に一番活躍した畠山が何故か4位など、全く納得いかないランクも。
もっと、マスコミのスポーツ特集番組のように、ベストナインだけではなく、
「足が速い選手」「コントロールが良い投手」「速球が良い・変化球が良いと思った投手」など、
能力別にアンケートを行うべきだった。そして、100人などに限定せず、
控えだろうと色んな選手にインタビューすべきであった。
スケジュールの都合上、現役を代表する選手たちが、他の一流選手と必ず対戦しているとは限らないからだ。
そうすれば、日頃スポットの当たらない隠れた名選手を発掘できただろう。
実際、テレビ番組では発掘できていた(貴重なデータであるのに関わらずyoutubeの動画はすぐに削除された)。
この本の見所は、伊東勤、与田剛、田尾安志、高木豊の4人によるポジション別の感想・解説、
そして選手たちの生の声・印象が訊ける「何故この選手に投票したのか?」という選手別のコメント、
更に「祝・ベストナイン」として、ポジションで1位を取った選手の中から、
藤川球児、浅尾拓也、阿部慎之介、中島裕之、糸井嘉男、山崎武司の
ロングインタビューが掲載されているところだろう。
それぞれの選手が、対戦時は別として、普段どんなことを考えているか、という点では
大変興味深く、記録にもなる本であった。
インタビューで阿部慎之介の頭の良さに舌を巻き、
選手別のコメントでは、
「別に同い年でチームメートで仲が良いからって投票するわけじゃない。純粋に選手としての評価です」
などと言い訳しながら、お互いに一票を投じあう相思相愛バレバレの吉見と浅尾、
投手別の「優れたキャッチャー」の価値観の違い、
全体的にアンケート・ランキング大好きの若手に対する、アンケートに違和感を示したり、冷静にコメントしたり、
ランキング自体の無意味さを悟らせるため? ちょっぴり皮肉った票を投じるベテラン群、
他人の評価や自分自身の成績の冷静な評価などさておいて、
とりあえずベストナインに迷いなく自分を入れる外国人選手、
そしてアンケートに全く興味がないダルビッシュなど、
個性豊かな選手たちの性格が微笑ましくなって、何回か笑ってしまった。
そんな中、アンケートノリノリの他球団に比べて、異様に寡黙な日本ハムと阪神の選手たち。
これはチームカラーなのだろうか? そういう選手たちがたまたま集まっているチームなのだろうか?
それとも取材時間が取れなかっただけか?
いろいろと楽しませてもらったけれど、「ベストナイン」という大げさなタイトルの割には
詰まっているデータ数も少なく、がっかりさせられた面もあり、星の評価は3個とした。
プロ野球歴代「助っ人外国人」1000人 宝島SUGOI文庫 ★
これは酷い。「1000人」の響きに釣られて買ったはいいが、
いざ本を開けてみると愕然とした……これが本当に最近の本か?
もちろん1024人もいる歴代外国人選手を全部紹介するわけにいかないから、
その中で特に印象に残った選手をピックアップするのが最近のこのテの本の役割だ。
だが、この本の問題はまさにその記事にある。
1〜2ページ程度の、今どきWikipediaを見るだけで手に入る、
真の野球ファンなら誰でも知ってるようなエピソードをちょこっとのせるだけ。
写真もない、年度別成績もない。あるのは所属チームと通算成績だけ。
貴重な写真やデータは、それだけで選手名鑑系の本を買う理由になる。
それらがないとなれば、価値もガクリと落ちる。
次に文句をつけたいのが選手のチョイス。
本書は「大活躍した助っ人」の平成編と昭和編、
「帰国後に大活躍した助っ人」、「期待はずれだった助っ人」の
4つに分けて選手たちをピックアップしているが、その選出があまりにもいい加減。
初っ端からいきなりサファテ、バリントン、バレンティン、マートンと
いかにも‘最近野球を見始めました’といわんばかりのチョイスが並ぶ。
彼らが優良助っ人外国人であることに異論を唱えるつもりはないが、
まだ来日して間もない選手たちである。
評価を下すのはもう少し後からでも遅くはないはずだ。
そして、昭和編も60年代後半〜80年代の選手ばかり。
最初の助っ人にして野球の神様バッキー・ハリス、そしてスタルヒンすら記事がない!
若林忠志は、上田藤夫は、カイザー田中は、山田伝は、亀田忠その他諸々の日系人たちは?
野球殿堂入りしたウォーリー与那嶺でさえレフトアウト!
もし「日系人たちは外国人ではない」という認識なら大馬鹿者だ、
彼らだって当時は「外国人登録枠」だったのだ。
戦後の西洋人助っ人に限るとしてもだ、
阪急の俊足レインズは? 近鉄のエース、ミケンズは?
同じく近鉄のランナー掃除機ブルームは? 阪神のサムライ、ソロムコは?
そして何故ソレイタが帰国後43歳の若さで射殺されたエピソードを載せない!?
まだまだあるが、これくらいにしておこう……。
次に、「帰国後に大活躍した助っ人」について……。
ソリアーノ、ペレスと納得できる顔ぶれが並ぶなか、ガリクソン、フィルダー、メイと、
一部違和感を覚える選手たちが……。
この本は、巨人のあの苦しい台所事情を支えたガリクソンを「帰国してから活躍」扱いにするのか!?
そしてフィルダー。同じく1年で帰国したホーナーが「大活躍」に入ってるのに、何故フィルダーだけ……
更にメイ。あの、ガルベス、高橋尚、工藤らと共に、巨人黄金のローテを守ったメイがここに?
同じような性格のライト、ガルベスは「活躍」のほうに入っているのに……。
日本語がおかしい。彼らは、「帰国後‘も’大活躍した助っ人」だ。
次に「期待はずれだった助っ人」……
グリーンウェル、ディンゴ、リナレス、ペピトーン、ミッチェル、ミセリと常連が並ぶ中に、
ジョンソン、バーフィールド、趙成ミン……。
ジョンソンは、一年目はともかく、二年目はしっかり働いてベストナインとダイヤモンドグラブ賞を受賞したのに、
「期待はずれ」? 確かに、来日前の異様な高い期待と比べるとそう言えるのかもしれないが……
仮にもタイトルホルダーが本当に‘はずれ’?
一年目の不振があまりにも印象が大きすぎて割りを食っているのか……?
バーフィールドは、打率は酷すぎだが、本塁打と打点で暗黒巨人のチームトップ……
さらに強肩攻守で、チームのピンチを何度も救ったのに……
ジョンソンもバーフィールドも、高年俸に見合った働きをしてくれなかった、という点でなら、
この選出も一理ないわけではないが……
趙成ミンに至っては、「ケガさえなければ」は禁句としても、
紛れもなく97年・98年は巨人軍のエースで、オールスターにも1回出場……
元々低い年俸で入ってきて、最初から才能を見込まれており、
長嶋監督が巨人のために酷使して潰したような悲運の投手を、期待はずれ扱いですか……
そして、郭李建夫、李鐘範と、これまた扱いに困る微妙な選手を何故ここに……
微妙な人材なら、中日のビョン吉ことイ・ビョンギュ、セサル様など、いくらでもいるのに……
ネタ成分も足りない。‘駄目ンチ’、‘メンチカツ’のメンチ、
ストライクが入らず暴投サヨナラデビューして、
そのままフェードアウトしたアイケルバーガーなどの追加を要求する。
最後に、通算成績と約一行コメントだけの歴代助っ人名鑑……
1024人分の通算成績を、ピックアップするべきところもせず、機械的に載せているだけ。
しかもデータに一部誤植が見られる……
全体的に、プロ野球、特に外国人選手を何も知らないバカが調子に乗って書いただけ、という印象。
別冊宝島1616『プロ野球「助っ人」伝説』に加筆修正を行い文庫化したものらしいが……
これで600円+αですよ? 金をドブに捨てるとはこのことだ……。
文鳥・夢十夜 夏目漱石 新潮文庫 ★★★★★
「文鳥」…漱石が飼った文鳥を死なせてしまうまでのいきさつが、文鳥を美しい女に見立てて淡々と描かれている。
それがかえって作品全体のもの悲しさをひきたてる。
「夢十夜」…おそらく漱石が残した小品の中でも最高クラスの作品。シュールレアリスム色の強い夢の回想には、
はっと胸のつかれる思いがする。
「永日小品」…これも幻想的な小品集。江戸時代生まれなのにファンタジー色の強い物語を書ける漱石は凄い。
「思い出す事など」…漱石はあるとき血反吐を吐いて生死の境を彷徨った。そのときの記憶を書いた記録だ。
悟りを得た漱石のエセーが読めるが、ときどき愚痴っぽくなり、説教臭くなったりと、
どうも漱石特有の凍てつくような鋭さが出てこない。ここにはただ、ありがとうと感謝する漱石がいる。やや違和感。
漱石もやはり人間なのだろうか。もっとも後半にいくにつれて漱石らしさが戻ってくる。
そして漱石は妙に、あまり出来の良くない俳句や漢詩を披露する。
いざ死ぬとき人間というものは全然苦痛を抱かないらしいというのは本当だろうか。
生きて帰ってきた人間というのはやはりこういう特殊な心境に陥るのか。
『鑑識上の修養を積む機会を有たなかった余の趣味は、その後別段に新しい変化を受けないで生長した。
従って山水によって画を愛するの弊はあったろうが、名前によって画を論ずるのそしりも犯さずに済んだ。』
これは全くもって耳が痛い言葉だ。自分に百篇聞かせてやりたいがそれを実践することができない。
「ケーベル先生」「変な音」「手紙」…いずれも趣のある佳品。ケーベル先生は面白い。こういう外国人が好きだ。
忿翁 古井由吉 新潮社 ★★★★
「ふんのう」と読む。
へ
平凡 二葉亭四迷 岩波文庫 ★★
延々と愚痴が書かれているだけで面白くなかった。同じ著者の作品でも、「浮雲」は最高だったのだが……。
ペスト カミュ 宮崎嶺雄/訳 新潮文庫 ★★★★★
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。
ついで原因不明の熱描写が続出、ペストの発生である。
外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、
人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、
過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描きこみ圧倒的共感を呼んだ長編。
カミュは、ここで「不条理」という絶望を突きつけながらも、希望を持たせる最後を選ぶ。
雰囲気は重いが、それ以上に抑制された文体、場面描写、倫理観の美しさによって、
それらはかき消される。カフカから影響を受けながら、カミュをカフカと決定的に違う作家たらしめているのは、
その作品の中に込められた重く美しいメッセージと、希望である。カフカには希望がない。
カミュは本質的にヒューマニストなのだ。そして、彼が書いているのは間違いなくヒューマニズム文学だ。
ヘッセ詩集 ヘッセ 新潮文庫 ★★★★★
蛇にピアス 金原ひとみ 集英社 保留
もう一度、再読予定。冷静になって書評を考え直してみる。
変身 カフカ 高橋義孝:訳 新潮文庫 ★★★★★
冒頭でいきなり自分が虫になってしまう、という前衛的な作風に惑わされず、
この作品中に漂う独特の死生観を味わうべきだ。
そして、カフカの作品のテーマは「社会からの疎外」である。
あなたがもし、グレーゴルのようにある日突然、虫になってしまったら、どうするだろう……?
そして、あなたが虫に変化したら、あなたの家族はどうしてしまうのだろう?
やはりこの作品のように、人間扱いせず、虐待し、死んでゆくのを感謝して、ピクニックに出かけるのだろうか。
家族の人間ドラマにも注目だ。カフカは様々な謎めいた解説をこの作品にしていて、
多様な解釈を許している。全て夢オチだった、でもよいそうだ。
あなたも、まず「自分」という存在を確認するためにこの本を読む必要があろう。
カフカの作品はそういうところを考えさせられる。だから実存主義文学といわれるのだ。
ほ
奉教人の死 芥川龍之介 新潮文庫 ★★★★
放浪記 林芙美子 新潮文庫 ★★★★★
もっとさわやかな作品かと思っていたら、予想以上に重厚で鬱々とした作品で驚いた。
よくも女のくせにここまで鋭い文章が書けるなと思う。
今までの女性作家の中でも最も高いレベルにいる人だ。並大抵の現代人気作家など吹き飛ばしてしまうであろう。
ポー詩集 ポー 新潮文庫 ★★★
日本語で彼の詩の魅力を堪能しましょう。にしては収録作品数少なすぎだが。残りは原書で読めってことか。
ぼく東綺譚 永井荷風 新潮文庫 ★★★★★
荷風はいいねえ〜。美しくて、悲しくて……。
ぼくは12歳 岡真史 ちくま文庫 ★★
12歳で自殺したことによって過大評価され有名になった早熟のポエマー。
可哀想に、自殺さえしなければ後年そこそこの詩人にはなったかも。
山田かまちと良く似ていて、才能の片鱗はみせるけれど、詩それ自体はポエマーレベル。
そして、後書きに載っている在日の父や、母と繰り広げられるこの本の読者との議論の、なんとまあ、ちゃちいことよ。
何もかも勘違いして、真史君がなんで自殺したかも全く理解してないのね。
親がこんなんだから12歳で自殺しちゃうんだよ、息子が。
ぼくは勉強ができない 山田詠美 新潮文庫 保留
星の王子さま サン=テグジュペリ 岩波書店 ★★★★★
坊っちゃん 夏目漱石 新潮文庫 ★★★★★
素晴らしい作品だ。僕が始めて読んだ純文学でもある。
ポラーノの広場 宮沢賢治 新潮文庫 ★★★★★
宮沢賢治の代表作の初期形態や、収録からもれた作品を読むことができる。
ホリー・ガーデン 江國香織 新潮文庫 保留
ボロ家の春秋 梅崎春生 講談社文芸文庫 ★★★★
梅崎春生は、「桜島」「日の果て」「蜆」で戦後を代表する作家と認められたが、以後一時的な低迷期を迎える。
この転機を「山名の場合」「Sの背中」などの日常生活を風刺する作品によって乗り越え、
「ボロ家の春秋」で直木賞を受賞する。
この本はそんな彼の日常を風刺した傾向の作品群が読める。