(平成14年2月改訂)
1.盲導犬とは 盲導犬は、視覚障害者を安全に誘導するために特別に訓練された犬です。
2.盲導犬の歴史
盲導犬の歴史はさかのぼれば古いものですが、組織的に系統立てて訓練が始められたのは第一次世界大戦後のことです。失明軍人のためにとドイツで訓練された盲導犬が世界中に広まり、日本にも盲人誘導犬略して盲導犬として紹介されました。 現在、日本には9ヶ所の盲導犬施設があり約870頭の盲導犬が働いています。 なお、北海道盲導犬協会では道内及び東北地方(青森、秋田、岩手、新潟)に盲導犬を送り出しています。 3.盲導犬の仕事
@ 真っ直ぐ歩く 人は誰しも目が見えない状態で何の補助もなしにまっすぐ歩き続けることはできません。どうしても右か左に曲がる傾向があります。知らないうちに道からはずれないように、盲導犬は指示された道をまっすぐ歩く訓練を受けています。 A 交差点で止まる 盲導犬は指示された目的地に主人を連れて行くわけではありません。目的地までの道順は主人が自分で考えて歩きます。交差点・わき道で盲導犬が止まることによって、その道順の手がかりとなり、同時に道路に飛び出さないことで安全が確保されます。信号のあるなしに関わらず交差点をわたる場合は、主人が車の流れなどを聞いて判断します。もし、その判断が間違っていて指示に従えば危険なとき、盲導犬はその指示を無視するように訓練されています。 B 障害物をよける 電柱、ポスト、車、自転車、通行人など、道路にはさまざまな障害物があります。盲導犬はこれらの障害物を避けて歩くように訓練されています。 C 目的物を探す 目的物として、ドア、階段、バス、などの言葉を教え、そこに誘導するように訓練します。 4.1頭の盲導犬が巣立つまで
(1)計画的な繁殖・繁殖ウォーカーシステム 繁殖犬は盲導犬として必要な特性を所有している犬が選ばれます。その特性とは、人間に対する愛着、作業に対する集中力、健全な身体などです。 繁殖犬は繁殖ウォーカー(繁殖犬飼育ボランティア)の家庭で、毎日の運動と健康管理、そして愛情豊かに飼育されます。繁殖ウォーカーの家庭では飼育だけでなく、子犬の出産も行われます。 (2)パピーウォーカーシステム パピーウォーカー(子犬飼育ボランティア)には、子犬が生後約50日までに成長した時点で委託されます。委託期間は約1年です。 [パピーウォーカーとしての条件] @ 札幌市内及び近郊にお住まいの方。
A 室内にて飼育ができる方。 B 犬との行動が自由にできるよう自家用車をお持ちの方。 C 家族のどなたかが家にいること。(特に委託後1ヶ月は特に排泄のしつけなどで手がかかります。)
など。 (3)盲導犬適性評価 パピーウォーカーのもとから帰ってきた犬たちは、盲導犬として適性があるかどうかの評価をうけます。約3週間かけて、犬の性格や性能、体格などを、実際の歩行や共同生活をとおして総合的に判断します。特に人に対する好感度、音に対する感受性、集中力、作業意欲、攻撃性、服従性、歩く態度などをチェックします。これらの基準をクリアし適性があると判断された犬は、避妊の手術を受け訓練が開始されます。 (4)盲導犬の訓練 盲導犬の訓練は、視覚障害者からの要求やさまざまな状況を想定した上で、担当指導員により実際の路上で約7ヶ月実施されます。北海道では積雪という厳しい条件があるため、これだけの期間が必要となってきます。 @ 服従訓練 A 障害物回避訓練 B 積雪訓練 C 公共物・交通機関利用訓練 D アイマスク装着訓練 (5)共同訓練 盲導犬使用を希望する視覚障害者は、指導員による面接調査がなされます。面接調査の目的は、希望者の性格及び生活環境に適応できる犬を選定するためです。面接は、本人の生活場所において直接面接が実施されます。 共同訓練は、はじめての方で4週間、2頭目以降の代替えの方は2週間行います。歩行指導はマンツーマンによる訓練となります。 (6)フォローアップ 盲導犬を使用するための共同訓練は、歩行の基礎を習得するためのものです。ユーザーと盲導犬が一体となり、思い通りの歩行ができるまでには半年から1年ほどかかります。そのため北海道盲導犬協会では、卒業直後のフォローアップ、卒業後最初の冬期フォローアップ、文書による定期的フォーローアップなどを行い、盲導犬とうまく生活できるまでのサポートを行います。 5.盲導犬の引退
北海道盲導犬協会では盲導犬の引退時期を12才としています。犬は10才を過ぎると老化が顕著に現れます。そのため盲導犬が12才近くになると、盲導犬として活躍が可能かどうかを指導員が判断します。判断する内容は、ユーザーの指示に対する反応時間、障害物に対する回避動作、バス・電車などの乗車ステップでの動作などです。盲導犬ユーザーにとって盲導犬が引退するということは、今まで確保していた歩行の自由を再び失うということになります。そのため、盲導犬が引退となる盲導犬ユーザーに対しては、優先的に新しい盲導犬をお渡しするようにしています。 6.引退後の生活
引退後は、盲導犬ユーザーの同居していない身内の方が飼育するか、パピーウォーカーに引き取られるか、老犬飼育委託家庭(老犬飼育ボランティア)に預かっていただくか、または老犬ホームに入り静かな老後生活を送れるようにしています。 7.盲導犬に出会ったとき
基本的に盲導犬がハーネス(胴輪)をつけている時は仕事中です。手招きや口笛などで犬の気を引いたり、大きな声を出したり、勝手に触ったりしないようにお願いします。 また、まわりの人が食べ物をあげてしまうと健康管理や仕事の意識に大きく影響しますのでご遠慮下さい。 8.視覚障害について
(1)視覚障害とは 感覚の一つである視覚は、視力、視野、色覚の3つの機能に分けられています。 このうち、視力と視野について法律で定められた程度(1級〜6級)の障害がある場合を視覚障害と言います。視覚障害の程度には、全く見えず、光も感じない「全盲」と、程度の差はあれ多少とも見える「弱視」に大別されます。 (2)視覚障害者数とその原因 現在、視覚障害者は全国で約30万5千人いると推定されています。 その障害時期はさまざまで、誕生時や幼少時に障害を負った先天視覚障害者とよばれる人や、成人後に障害を負った中途視覚障害者とよばれる人がいます。 また、主な障害原因については、糖尿病性網膜症、緑内障、白内障、網膜色素変性症、ベーチェット病、交通事故などがあげられます。 (3)視覚障害者のリハビリテーション 視覚障害者には必要に応じてリハビリテーションがなされますが、その基礎となるのは社会リハビリテーションと職業リハビリテーションです。 社会リハビリテーションとは日常生活訓練とも言われますが、主に白杖などによる歩行訓練、点字、ワープロなどのコミュニケーション訓練、そして身辺処理、家事、調理などの日常生活動作訓練が実施されます。 (4)視覚障害者の歩行方法 視覚障害者の歩行方法には、大きく分けて次の3つの方法があります。 ○ 目の見える人の手引きによる歩行 ○ 盲導犬による歩行 ○ 白杖による歩行 (5)手引きの方法について 視覚障害者が案内を必要としている場合、身長に合わせてひじか肩をつかんでもらい、安全に注意して誘導します。手引き者は周囲の状況について情報を提供します。 9.お願い
視覚障害者が社会参加するうえで大切なことは、点字ブロックや音声信号など環境整備はもちろんですが、それ以上にまわりの皆さんが視覚障害者や盲導犬についてよく理解していただくことだと思います。もし、盲導犬や白杖で歩いている人を見かけ、困っている様子の時は、必要に応じて案内などの援助をお願いしたいと思います。
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