盲導犬Q&A 平成14年2月作成
目次 1.盲導犬の歴史
3ページ 問い。「いつから盲導犬はいるんですか。」 問い。「日本に盲導犬が最初に登場したのはいつ頃ですか。」 問い。「日本に盲導犬を育成している施設はどれだけありますか。」 2.訓練 4ページ 問い。「盲導犬はどんな方法で訓練しますか。」 問い。「盲導犬はどんな訓練をするのですか。」 問い。「訓練期間はどのくらいですか。」 問い。「盲導犬に使う指示語はどんな言葉がありますか。」 問い。「どんなことに注意して訓練しますか。」 問い。「北海道は雪がたくさん積もりますが、本州や暖かい地方の盲導犬と訓練のし方が違うのですか。」 問い。「訓練をしている犬の様子はどうですか。」 問い。「盲導犬は誰の言うことでもきくんですか。」 3.盲導犬の一生 7ページ 問い。「盲導犬は何才からなれるのですか。」 問い。「盲導犬の1日のスケジュールはどんな感じですか。」 問い。「盲導犬として卒業してからも、使用者と連絡を取ったりするんですか。」 問い。「卒業後の使用者とは、どんな内容の連絡を取り合うのですか。」 問い。「盲導犬は何才から何才まで仕事ができるのですか。」 問い。「盲導犬の引退時期と見分け方はどのように行うのですか。」 問い。「引退した盲導犬はその後どうなるのですか。」 4.計画的な繁殖・繁殖ウォーカー制度 9ページ 問い。「盲導犬になる犬はどこで産まれるのですか。」 問い。「盲導犬の繁殖犬にはどんな犬が選ばれるのですか。」 問い。「繁殖ウォーカーの仕事はどのようなものですか。」 5.パピーウォーカー制度 9ページ 問い。「パピーウォーカーの仕事はどのようなものですか。」 6.適性評価 10ページ 問い。「どんな性格の犬が盲導犬に適しているのですか。」 問い。「盲導犬になれなかった犬はどうなるのですか。」 7.盲導犬の健康管理 10ページ 問い。「食事は、何を食べていますか。」 問い。「盲導犬が病気になったらどうするのですか。」 問い。「実際に活動している盲導犬は定期検診のようなものは受けているのですか。」 問い。「盲導犬の食事や排尿・排便はどのようにしていますか。」 問い。「盲導犬の手入れ(シャンプー等)はだれがするのですか。」 8.取得の方法 11ページ 問い。「視覚障害者はどのようにして盲導犬を取得するのですか。また、取得するには費用はどれくらいかかるのですか。」 9.盲導犬の数 11ページ 問い。「盲導犬を必要とする人は全国でどれくらいいるのですか。」 問い。「現在、日本にはどれくらい盲導犬がいるのですか。またどれくらい不足しているのですか。」 問い。「需要者は何人くらいで、供給数は何頭くらいですか。」 問い。「盲導犬は、どういう選考方法で割りあてられるのですか。」 10.犬種 12ページ 問い。「北海道盲導犬協会で盲導犬に使っている犬種はなんですか。」 問い。「どうしてその犬種を使っているのですか。」 問い。「盲導犬になれる犬種は決まっているのですか。」 11.その他 13ページ 問い。「盲導犬と出会った場合どう接すればいいのですか。」 問い。「お店に、盲導犬をつれて入ってもいいですよというシールなどがはっていない場合、やはり盲導犬使用者はあきらめなければならないのでしょうか。」 問い。「盲導犬の訓練士になるにはどうしたらいいのですか。」 問い。「今、北海道盲導犬協会には何頭くらい盲導犬がいるのですか。」 1. 盲導犬の歴史
問い。「いつから盲導犬はいるんですか。」 人間と犬の長い歴史の中で、視覚に障害のある人と犬との出会いは紀元前からであり、犬を話し相手や案内者として使用していたと考えられています。ギリシア時代の古都ポンペイの壁画や中国の絵巻物にも視覚に障害のある人と犬との記述が残されています。しかし、組織的な訓練がはじめられたのは19世紀になってからのことです。第1次世界大戦後(1914〜1918)には、戦争によって失明者が多く出たため、改めて盲導犬の必要性が高まりました。 1819年。 ドイツのクライン神父(視覚障害者訓練施設の創設者)が盲導犬の訓練に関する本を1819年に出版する。 1923年。 ドイツのポツダムに国立の盲導犬訓練所ができる。 1927年。 シーイング・アイの創設者ユースティス夫人がポツダム盲導犬訓練所を視察し、盲導犬に感銘を受け、記事をサンデーイブニングポスト紙に紹介。大変な反響を呼ぶ。 1929年。 アメリカで最初の盲導犬学校シーイング・アイが設立される。 問い。「日本に盲導犬が最初に登場したのはいつ頃ですか。」 日本に盲導犬が最初に登場したのは、1938年にアメリカの青年が盲導犬を連れて旅の途中立ち寄り紹介したことがはじまりです。 1939年。 日本の愛犬家がポツダム盲導犬訓練所から4頭の盲導犬を輸入し、失明軍人に寄贈する。 1957年。 日本で訓練された盲導犬第1号「チャンピー」が誕生。 1967年。 日本盲導犬協会設立。 1968年。 東京畜犬が盲導犬事業開始。 1970年。 東京畜犬の倒産により,盲導犬事業停止。 1970年。 札幌盲導犬協会(北海道盲導犬協会)設立。 1970年。 中部盲導犬協会設立。 1971年。 東京盲導犬協会(アイメイト協会)設立。 1972年。 日本ライトハウス行動訓練所設立。 1972年。 栃木盲導犬センター設立。
1980年。 関西盲導犬協会設立。 1983年。 福岡盲導犬協会設立。 1990年。 兵庫県盲導犬協会設立。 問い。「日本に盲導犬を育成している施設はどれだけありますか。」 下記の9施設です。 ○財団法人北海道盲導犬協会 〒005-0030 北海道札幌市南区南30条西8丁目1-1 011-582-8222 ○財団法人栃木盲導犬センター 〒321-0342 栃木県宇都宮市福岡町1285 028-652-3883
○財団法人アイメイト協会 〒177-0051 東京都練馬関町北5-8-7 03-3920-6162 ○財団法人日本盲導犬協会 本部:〒151-0071 東京都渋谷区本町1-21-1
SH小林ビル8F 03-3375-6201 神奈川訓練センター:〒223-0056 神奈川県横浜市港北区新吉田町 045-590-1595 仙台訓練センター:〒982-0263 宮城県仙台市青葉区茂庭字松倉12-2 022-226-3910 ○財団法人中部盲導犬協会 〒455-0831 愛知県名古屋市港区十一屋1-70-4 052-382-6776 ○財団法人関西盲導犬協会
事務局:〒615-8084 京都府京都市西京区桂坤町 075-383-5638 訓練センター:〒621-0027 京都府亀岡市曽我部町犬飼末ヶ谷18-2 0771-24-0323
○社会福祉法人日本ライトハウス 本部:〒538-0042 大阪府大阪市鶴見区今津中2-4-37 06-6961-5521 行動訓練所:〒538-0055 大阪府南河内郡千早赤阪村字東阪1202-11 0721-72-0914 ○社団法人兵庫県盲導犬協会 〒651-2212 神戸市西区押部谷町押部字向井24 078-995-3481 ○財団法人福岡盲導犬協会 事務局:〒810-0062 福岡県福岡市中央区荒戸3-3-39福岡市市民福祉プラザ内 092-714-3169
訓練センター:〒819-1122 福岡県前原市大字東283-1 092-324-3169 2. 訓練 問い。「盲導犬はどんな方法で訓練をしますか。」 ある言葉とある動作を一致させることで盲導犬の仕事を教えていきます。例えば犬の腰をそっと押さえて座らせて、その時に「すわれ」という言葉を付けることで犬に動作と言葉を一致させます。新しいことを教える時には犬にとってより分かりやすく教え、うまくできたら犬が喜ぶようによく誉めてあげます。犬が覚えたことについては、より確実にできるように場所を変えたりして繰り返し行います。 問い。「盲導犬はどんな訓練をするのですか。」 訓練のはじめの段階では、まず充分にコミニュケーションをとりながら声掛けに対する反応を高めていきます。声かけに対する具体的な反応とは、名前を呼んだら振り返る、「よしよし」という言葉で誉めたら喜ぶ、「ノー」という言葉をかけるとその動作を止めるなどです。その後、すわれ、伏せなどの服従訓練を行いつつ、ハーネスを着けて外を歩く誘導訓練を進めていきます。誘導訓練は、はじめは区画のはっきりした分かりやすい道路から歩き、その後は繁華街、雪道、地下街、バス、地下鉄などの乗車訓練や経験を増やしていきます。盲導犬として卒業するまでには定期的にアイマスク歩行を行い訓練評価をしていきます。 盲導犬の訓練は現在、服従訓練と誘導訓練と大きく2つに分けられます。 (1) 服従訓練 こい(呼ばれたら来ること) 脚側歩行(主人の横について歩くこと) ヒール(主人の横につくこと) すわれ(座ること) ふせ(伏せること) まて(待つこと) など (2)誘導訓練 @ 真っ直ぐ歩く 人は誰しも目が見えない状態で何の補助もなしにまっすぐ歩き続けることはできません。盲導犬は指示された道をまっすぐ歩く訓練を受けています。 A 交差点で止まる
盲導犬は指示された目的地に主人を連れて行くわけではありません。目的地までの道順は主人が自分で考えて歩きます。交差点・わき道で盲導犬が止まることによって、その道順の手がかりとなり、同時に道路に飛び出さないことで安全が確保されます。信号のあるなしに関わらず交差点をわたる場合は、主人が車の流れなどを聞いて判断します。 B 物を避ける
電柱、ポスト、車、自転車、通行人など、道路にはさまざまな障害物があります。盲導犬はこれらの障害物をよけて歩くよう訓練されています。 C 目的物を探す
目的物として、ドア、階段、バス、などの言葉を教え、そこに誘導するように訓練します。 問い。「訓練期間はどのくらいですか。」 約7カ月です。一通りのことを教えるのにそれほど長い期間は必要ありませんが、教えたことが確実にできるようになることと、普段と状況が変わってしまっているような場合にも犬自身で判断してうまく仕事ができるようになるまでにある程度長い期間を設けています。 9月 パピー犬一斉引き上げ・適性評価 10〜4月 盲導犬になるための訓練 5〜8月 視覚障害者との共同訓練 問い。「盲導犬に使う指示語はどんな言葉がありますか。」
盲導犬の訓練用語は各施設によって違いますが、北海道盲導犬協会では下記のような言 葉を使っています。 よしよし(誉める時にかける言葉。)
ノー(叱る時にかける言葉。) すわれ(お尻を床につけて座る。) ふせ(胸を床につけて伏せる。) まて(動かないで待て。) ヒール(人の横につけ。)
オーケー(安全であれば進め。) ストップ(止まれ。) まっすぐ(進行方向に向かって真っ直ぐ進みなさい。あるいは集中しなさい。) よって(右、もしくは左へ寄れ。)
おーだん(横断歩道のところを探しなさい。) コーナー(路地を探しなさい。) かいだん(階段を探しなさい。) ドア(ドアを探しなさい。)
バス(バスやバス停を探しなさい。) しーしー(おしっこをしなさい。) べんべん(便をしなさい。) 問い。「どんなことに注意して訓練しますか。」 盲導犬になるための訓練で難しい点は、訓練士が犬を扱うことは優しくても、実際に盲導犬を使う対象者(視覚に障害のある人)は訓練士と同じように扱うことが非常に難しいということ、そして盲導犬が歩く場所は簡単な道路ばかりではなく、目的地も人によって違いがあるうえに、同じ道路においても路上駐車、回収ゴミ、道路工事、積雪などで日々状況が変化するということなどがあげられます。そのため訓練においては、誰の指示にもスムーズに従うように訓練最終時期には指示の言葉をより弱い調子で使うこと、訓練の場所については、繁華街、お店、地下街、バス、地下鉄、雪道など、いろいろな状況を経験することでどんな場所でも同じように歩けるように訓練を進めていきます。 問い。「北海道は雪がたくさん積もりますが、本州や、暖かい地方の盲導犬と訓 練のし方は違うのですか。」 北海道では12月の終わりから4月の中頃まで雪が積もっていますので、どうしても雪の積もった道路(冬道)での訓練が必要になります。夏道(雪の積もっていない道路)と比べて、冬道は雪壁によって道路幅が狭くなり、場所によっては歩道が通れなくなります。道路状況は毎日変化し、足もとも滑りますので、冬道ではより主人を気づかうことと、道路状況の変化に対する応用力が重要になります。 問い。「訓練をしている犬の様子はどうですか。」 訓練は、必ず指示に従わせることや仕事に集中させることが大切ですが、それが原因で精神的負担を与えたり、訓練を受けることに対して消極的にならないように注意しながら進めていきます。訓練中の犬の様子は、張り切ったり、喜んだり、緊張したり、時にはおもしろくなくなったりしますが、段階を進めるにあたり歩くスピードや犬の気持ちは、ある一定の状態が継続するように訓練していきます。 問い。「盲導犬は誰の言うことでもきくんですか。」
盲導犬を持つ目の不自由な方は、盲導犬と一緒に4週間の訓練を受けます。訓練の内容については、盲導犬との歩き方はもちろんですが、その他に犬の食事の与え方、トイレのさせ方、手入れの仕方、健康管理の方法など生活全般も含まれます。盲導犬は、はじめから使用者の言うことをきくわけではなく、使用者とのコミニュケーションを通して信頼関係ができあがってから言うことをきくようになります。 盲導犬との信頼関係ができあがり自分の思い通りに歩けるまでには、初めて盲導犬を持つ方で1年程度、2頭目以降の方で半年程度はかかると考えています。 3. 盲導犬の一生 問い。「盲導犬は何才からなれるのですか。」 盲導犬候補犬達は、 @ 産まれて約1カ月半、母犬と過ごします。 A 生後1カ月半になると、パピーウォーカーというボランティアの家庭に約1年間預けられます。 B 約1才になってパピーウォーカーの所から盲導犬協会に帰ってきた犬達は、約3週間かけて指導員による適性評価を受けます。 C 適性評価に合致した犬達は、約7カ月盲導犬になるための訓練を行います。 D 盲導犬希望者が盲導犬を取得するためには、1頭目の方で最低4週間、2頭目以降の方で最低2週間の訓練が必要です。 上記のような経過で、盲導犬候補犬達は盲導犬として卒業していきます。そのため盲導犬になる年齢は2才前後となります。 問い。「盲導犬の1日のスケジュールはどんな感じですか。」 視覚障害者が盲導犬を使う目的はさまざまです。例えば仕事を持っていて通勤のために使っている人、自宅で仕事をしていて空いている時間で運動(健康)のために使っている人、主婦や定年後の方で散歩や買い物のために使っている人などです。それぞれに盲導犬の過ごし方は違いますが、基本的には盲導犬を使うユーザー(使用者)が外出するときに盲導犬も外歩きすることになりますので、それ以外の時間にはユーザーがトイレに出したり、エサを与えたり、手入れ(ブラッシング)をしたり、部屋でごろごろ寝ていたりします。 問い。「盲導犬として卒業してからも、使用者と連絡を取ったりするんですか。」 盲導犬を持っても、すぐにうまくは歩けません。卒業してもしばらくは盲導犬に適切な指示を与えることができなかったり、盲導犬の仕事に対して誉めたり叱ったりすることが充分に伝わらなかったり、あるいは犬を信じてついていったのに気がついたら道に迷ってしまったということも、はじめの1年ではよくあります。ですから、盲導犬協会で4週間訓練して自宅に戻った後は、はじめの1カ月は週に1回、その後は月に1回の計15回(1年間)、「生活状況報告用紙」というものを出してもらいその都度連絡を取り合って、盲導犬との生活で困っていることが無いかなどを確認します。 問い。「卒業後の使用者とは、どんな内容の連絡を取り合うのですか。」
例えば、「歩行生活状況報告用紙」の内容としては、 @ 健康状態(便の状態、体重、食事の内容など) A 日常生活状況(周りの人の感想、困っていることなど) B 歩行状況(歩行回数・時間、歩行スピード、ぶつかった経験、他の動物に対しての反応、ドア・階段への誘導など) C 報告すべき主な出来事 D 盲導犬使用者としての意識 E 感想、質問について などです。問題が見つかれば本人に確認して、フォローアップなどの対応を行います。 問い。「盲導犬は何才から何才まで仕事ができるのですか。」
盲導犬は2才ぐらいに卒業し、長い犬は12才まで仕事をします。 盲導犬になる候補犬達は産まれてから約1カ月半はお母さん犬と過ごします。その後、パピーウォーカー(ボランティアの家庭)のところで約1年間生活し、盲導犬協会に帰ってきます。盲導犬協会に帰ってきたら、候補犬達が盲導犬に向いているかどうかを判断し、盲導犬に向いていると思われる犬だけ訓練をしていきます。訓練の期間は約7カ月です。 問い。「盲導犬の引退の時期と見分け方はどのように行うのですか。」 北海道盲導犬協会では盲導犬の引退時期を12才としています。犬は10才を過ぎると老化が顕著に現れます。そのため盲導犬が12才近くになると、盲導犬として活躍が可能かどうかを指導員が判断します。判断する内容は、ユーザーの指示に対する反応時間、障害物に対する回避動作、バスや電車などの乗車ステップでの動作などです。 問い。「引退した盲導犬はその後どうなるのですか。」 引退後は、パピーウォーカーに引き取られるか、老犬ホームに入るか、または老犬委託飼育家庭(一般のボランティア)に預かっていただきます。 [老犬委託飼育家庭の条件] @ 札幌市内及び近郊にお住まいの方。 A 室内にて飼育ができる方。 B 犬との行動が自由にできるよう自家用車をお持ちの方。 C 日中あまり留守にしない方。 D 基本的に他の犬を飼育していないこと。
などです。(条件は、若干変更する場合があります。) 4. 計画的な繁殖・繁殖ウォーカー制度 問い。「盲導犬になる犬はどこで産まれるのですか。」 北海道盲導犬協会では、将来盲導犬になる候補犬たちの親犬(お父さん犬とお母さん犬)を所有しています。その親犬を計画的に交配させることで、盲導犬の候補犬たちを確保します。1年間に出産する頭数は、30〜40頭ほどです。 問い。「盲導犬の繁殖犬にはどんな犬が選ばれるのですか。」 繁殖犬は盲導犬として必要な特性を所有している犬が選ばれます。その特性とは、人間に対する愛着、作業に対する集中力、健全な身体などです。 問い。「繁殖ウォーカーの仕事はどのようなものですか。」 繁殖ウォーカーというのは、盲導犬協会で所有している繁殖犬を家庭で飼育していただくボランティアをいいます。繁殖ウォーカーの家庭では、毎日の運動や健康管理、そして愛情豊かに飼育していただきます。繁殖ウォーカーの家庭では飼育だけでなく、子犬の出産も行われます。 [繁殖ウォーカーの条件] @ 札幌市及び近郊にお住まいの方。 A 室内にて飼育できる方。 B 犬との行動が自由にできるよう自家用車をお持ちの方。 以下、メス犬の場合。 C 室内にて出産ができる方。 D 出産予定日の5日程前より、出産後1カ月程度は家族のどなたかが家にいること。 などです。(条件は、若干変更する場合があります。) 5. パピーウォーカー制度 問い。「パピーウォーカーの仕事はどのようなものですか。」 パピーウォーカーというのは、生後1カ月半ぐらいの子犬を約1才になるまで育てていただくボランティアの家庭をいいます。犬の約1才は人間の15〜18才ぐらいになりますが、その犬が1才まで成長する間に基本的なしつけと愛情豊かな飼育をしていただきます。家庭の中で家族の一員として生活し、人間と暮らす素養を身につけます。 [パピーウォーカーの条件] @ 札幌市内及び近郊にお住まいの方。 A 室内にて飼育ができる方。 B 犬との行動が自由にできるよう自家用車をお持ちの方。 C 家族のどなたかが家にいること。(特に委託後1カ月は排泄のしつけなどで手がかかります。) などです。(条件は、若干変更する場合があります。) 6. 適性評価 問い。「どんな性格の犬が盲導犬に適しているのですか。」 パピーウォーカーのもとから帰ってきた犬たちは、盲導犬として適性があるかどうかの評価をうけます。約3週間かけて、犬の性格や性能、体格などを、実際の歩行や共同生活をとおして総合的に判断します。特に人に対する好感度、声に対する感受性、集中力、作業意欲、攻撃性、服従性、歩く態度などをチェックします。これらの基準をクリアし適性があると判断された犬は、避妊の手術を受け訓練が開始されます。 犬はそれぞれ性格も動作も違いますが、なかでも人に対して友好的な犬や、落ち着きのある犬が盲導犬に向いていると考えられます。 問い。「盲導犬になれなかった犬はどうなるのですか。」 パピーウォーカーに引き取られるか、一般のリジェクト犬(盲導犬になれなかった犬)希望者に引き取られます。 [一般のリジェクト犬希望者に引き取られる場合の条件] @ 室内にて飼育ができる方。 A 日中、外での排泄が可能な方。 B 繁殖目的でない方。 C 引き取りの際、これまでの医療費経費として一律5万円の負担をお願いしています。
などです。(条件は、若干変更する場合があります。) 7. 盲導犬の健康管理 問い。「食事は何を食べていますか。」 食事は、ドライのドックフードを与えるようにしています。 理由は、盲導犬使用者(視覚障害者)が与えやすいこと、そしていつも同じものを食べることで便の状態が安定し、健康維持がしやすいということなどです。 問い。「盲導犬が病気になったらどうするのですか。」 その盲導犬を使っている使用者自身で動物病院へ行くか、または家族の方や知り合いの方に連れて行ってもらうという場合が多いですが、その怪我や病気の状態によっては盲導犬協会で預かることもあります。 問い。「実際に活動している盲導犬は定期検診のようなものは受けているのですか。」 盲導犬の健康状態については原則使用者が管理します。ただ、北海道盲導犬協会では年に1度行われる盲導犬ユーザー研修会のなかの犬体検査や、4月には狂犬病予防接種、5月にはワクチン接種、そしてフィラリア予防薬の発送などによって、定期的に様子を伺ったり盲導犬の健康に注意するように指導しています。 問い。「盲導犬の食事や排尿・排便はどのようにしていますか。」 盲導犬使用者が管理します。食事は、ドッグフードを1日2回与えている人が多いです。排尿、排便は引き綱をつけた状態で外でさせます。そのままさせて、後から便を袋でとる場合と、はじめに袋をベルトで腰につけてそのままさせるとオシッコや便が袋に収まる方法と2通りあります。ベルトを使用する方法は、適当な排泄場所の少ない市街地などに外出している際には非常に便利な方法です。 問い。「盲導犬の手入れ(シャンプー等)はだれがするのですか。」 基本的には盲導犬使用者が行います。手入れはできるだけ少しでも毎日すること、シャンプーは3週間から1カ月に1回すること、その他には食事を与えること、排泄させることなど、日常の管理は使用者自身でできるように訓練、指導していきます。 8. 取得の方法 問い。「視覚障害者はどのようにして盲導犬を取得するのですか。また取得するには費用はどれくらいかかるのですか。」 盲導犬を希望する方は、盲導犬協会に直接問い合わせるか、各市町村の福祉の窓口に問い合わせます。盲導犬協会に申し込みがあれば盲導犬希望者に対して自宅訪問の面接調査を行い、その人が盲導犬を持つ上で問題がないか検討します。 盲導犬を取得する方が訓練に必要な費用は、食費、クリーニング代、卒業後のドッグフード代など約3万円ほどになります。ただ、盲導犬育成事業は補助事業となっていますので、実際には盲導犬が卒業した時点で各自治体(県や市町村)から補助金を受けることができるようになっています。 9. 盲導犬の数 問い。「盲導犬を必要とする人は全国でどれくらいいるのですか。」 1998年に日本財団というところで、全国の視覚障害者に対してアンケートの盲導犬に関する意識調査を行いました。 これによりますと、障害の程度が1級あるいは2級の視覚障害者の中で「今すぐ希望する」と答える可能性のある盲導犬希望者数は、全国でおよそ4,700名と考えられる。さらに、「将来希望する」と答えた中で「盲導犬への関心が高い」かつ「盲導犬についてよく知っている」視覚障害者を潜在的な希望者として加えると、全国の盲導犬希望者は約7,800名と推計される、とあります。 [盲導犬に関する調査研究
報告書 平成12年8月 日本財団 公益・福祉部]より 問い。「現在、日本にはどれくらい盲導犬がいるのですか。またどれくらい不足しているのですか。」 日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会の[2000年度盲導犬訓練施設年度報告書]によりますと、2001年3月31日現在の日本の盲導犬実働数は875頭です。 問い。「需要者は何人くらいで、供給数は何頭くらいですか。」 北海道盲導犬協会では、1年に盲導犬を希望される方は15〜20名、それに対して盲導犬卒業頭数は15頭前後になります。 問い。「盲導犬は、どういう選考方法で割りあてられるのですか。」 盲導犬希望者と盲導犬の組み合わせは、次のような方法で考えていきます。まず、盲導犬を希望される方に対して訪問による面接調査を行います。その面接結果を基にして、その人に盲導犬を貸与するかどうかの審査を行い、盲導犬を貸与すると判断した場合、その人にどんな盲導犬が合うのかを検討します。例えば、性格、歩行スピード、体の大きさなどです。そして盲導犬希望者と盲導犬候補犬と対比し、どの人にどの犬が合うということを充分に話し合います。ただ対象者(盲導犬希望者)に対して合う犬がいない場合は、盲導犬貸与を翌年に持ち越す。また、盲導犬候補犬よりも盲導犬希望者の数が大きく上回ってしまった場合は、できるだけ持ち替え(2頭目以降)の方を優先する、というところを基本的な考えとして組み合わせを決定していきます。盲導犬候補犬に対しての訓練は10〜4月に行い、盲導犬希望者と盲導犬候補犬との共同訓練(1頭目は4週間、2頭目以降は2週間)は主に5〜8月の間に行われます。 10. 犬種 問い。「北海道盲導犬協会で盲導犬に使っている犬種はなんですか。」 北海道盲導犬協会で盲導犬に使っている犬種は2種類です。1つはラブラドール・リトリバー、もう1つはラブラドール・リトリバーとゴールデン・リトリバーの1代雑種(ラブラドール・リトリバーのお父さんとゴールデン・リトリバーのお母さん、あるいはラブラドール・リトリバーのお母さんとゴールデン・リトリバーのお父さん)です。 問い。「どうしてその犬種を使っているのですか。」 ラブラドール・リトリバーが多く使われている理由は、人に対して友好的で見た目にもかわいらしいところと、仕事が好きなところです。ただ、とても活発な面もありますので、盲導犬を使う人は犬の扱い方をしっかり身につける必要があります。 ラブラドール・リトリバーとゴールデン・リトリバーの1代雑種を使っている理由は、ラブラドール・リトリバーの仕事好きな性格と、ゴールデン・リトリバーのややおっとりした性格と、両方の良いところを出そうと考えて使っています。 問い。「盲導犬になれる犬種は決まっているのですか。」 特に決まっていませんが、日本では最も多い犬種がラブラドール・リトリバー、次にラブラドール・リトリバーとゴールデン・リトリバーの1代雑種、次にゴールデン・リトリバーとなっています。施設によってはジャーマン・シェパード・ドッグも若干使われています。日本の盲導犬第1号アイメイト協会チャンピー号や歩行中の交通事故で片足を亡くした中部盲導犬協会サーブ号などは、ジャーマン・シェパード・ドッグです。 世界的にもやはり、ラブラドール・リトリバーが最も多く使われていると思われます。ただ、特に犬種にはこだわらず、ダルメシアン、スタンダード・プードル、その他、親の犬種が分からないほどの雑種を使っているところもあります。その点を考えると特に盲導犬の犬種は決まっていないということになります。 犬種の中にも個体差がありますので、どんな犬種でも盲導犬に向いている犬がいると考えることはできます。ただ、犬種を増やしていくとその中から盲導犬に向いている犬をさがしだすことも難しく、計画的に盲導犬を卒業させるのも難しくなります。そのため、適性の高いラブラドール・リトリバー、ゴールデン・リトリバー、ラブラドール・リトリバーとゴールデン・リトリバーの1代雑種などに犬種を絞り、その中で合格率を高めることに重点を置いています。 11. その他 問い。「盲導犬と出会った場合どう接すればいいのですか。」 基本的に盲導犬がハーネスを着けているときは仕事中です。どう接するというよりは、手招き、口笛などで気を引かない、食べ物を与えない、大きな声を出さないなどに注意していただきたいと思います。ただ、盲導犬と歩いていても道に迷ったりすることはありますので、困っている様子のときや交差点で信号を待っているようなときには、盲導犬にではなく視覚障害者の方に「どちらへ行かれるのですか。」などの声を掛けていただければ助かると思います。 問い。「お店に、盲導犬をつれて入ってもいいですよというシールなどがはっていない場合、やはり盲導犬使用者はあきらめなければならないのでしょうか。」 公共の交通機関、公共の宿泊施設、また一般の旅館、飲食店などについても各省庁から盲導犬受け入れについてのお願いといった内容の文書が出されてはいますが、個人経営の小さなお店などでは把握できていないことが多いため、入店を断られることもあります。どうしても理解が得られない時はあきらめるしかないと場合もありますが、盲導犬協会からも直接盲導犬についての説明などをすることによって理解してもらうように働きかけています。 [厚生省環境衛生局食品衛生課長(昭和56年1月30日)
盲導犬をともなう視覚障害者の旅館、飲食店等の利用について] 盲導犬を伴う視力障害者のこれら施設の利用の機会も多くなっていることに鑑み、盲導犬については、道路交通法に基づき訓練を行う法人が指定されているなどいわゆるペット動物の帯同とは社会的役割を異にしていることについて十分留意され、関係方面の理解が深められるよう特段のご配慮をお願いします。 問い。「盲導犬の訓練士になるにはどうしたらいいのですか。」 北海道盲導犬協会は大きく事務系の仕事をする企画管理部と、盲導犬の育成や視覚に障害のある人の指導を行う指導部とに分かれています。職員の募集は不定期なため募集期日は決まっていませんが、募集することが決定した場合には新聞や求人誌などでお知らせしています。 採用条件の資格などについては、募集の都度変わる可能性もありますが、前回募集時は下記の通りでした。 ○指導部職員 大卒、25歳以下。(英会話ができればなおよし)要自動車免許 学部条件なし。 ○企画管理部職員 専・短大卒以上、25歳以下。(パソコンが使えればなおよし)要自動車免許 学部条件なし。 問い。「今、北海道盲導犬協会には何頭くらい盲導犬がいるのですか。」 実際に働いている盲導犬は盲導犬を使っている使用者と一緒に生活していますので、盲導犬協会には、実際に働いている盲導犬はいません。
盲導犬協会には、訓練犬(盲導犬候補犬)、老犬、イベント犬、そのほか一時的に預かっている盲導犬やパピー犬などがいます。 それぞれの頭数は、 訓練犬:25〜30頭 老犬:約10頭 イベント犬:約5頭 などです。 9〜4月が訓練犬の数の一番多い時なので犬舎の頭数は非常に多くなりますが、5〜8月の間にどんどん卒業していきますので、1年の間にも犬は増えたり減ったりします。 発行
財団法人 北海道盲導犬協会 〒005-0030 札幌市南区南30条西8丁目1番1号 011-582-8222 FAX011-582-7715
|