特集 「私のお国自慢 味自慢」 藤田よしお 皆さんは新潟と言えば、まず何を思い浮かべられますか。何と言っても、まずはお酒と言う方も多いのではと思います。淡冷辛口のピリッとした切れの良さは天下一品。 「越乃寒梅」をはじめ「雪中梅」や「八海山」「久保田」など、銘酒と言われる酒は数えきれないほど。 調べてみましたら県内には102軒の造り酒屋と800品種以上の銘柄があるとのこと。家を丸ごとすっぽりと包み込むほど積もった雪の中の萱葺きの一軒家。トロトロと燃える囲炉裏を囲んで熱燗を酌み交わす。さすがの雪国新潟でも、既にそんな風景を見ることはできなくなりましたが、この雪と新潟の酒とは、実は切っても切れない関係があるのです。 そもそも新潟の酒造りは、大雪で仕事ができない冬の出稼ぎ仕事だったのです。やはり酒どころで知られる灘などに出稼ぎに行き、越後杜氏として酒造りの技術を身につけた人々が、やがて新潟に帰り、これも豊富な雪解け水によって形成された信濃川の伏流水と、その信濃川によって作られた肥沃な越後平野にできた日本一おいしい米を使って完成したのが新潟の酒ということになります。 私はどちらかというとビール党なのですが、時に良く冷えた日本酒をグラスに並々と注ぎ、これも日本海でとれた新鮮なアマエビや山菜、それに隣町である栃尾市の特産で、週刊誌の半分ほどもあろうかと思われるほどのビッグな油げを焼いて、酒の肴にキューっと1杯というのもまた格別です。 欲を言うならば、ジューッと音を立てながら、穏やかな日本海に沈む、豪快な夕日を眺めつつ、脇に色白の越後美人とくれば、もう言うこと無し。 そして本日の仕上げは越後名物のっぺ汁。サトイモ、レンコン、ごぼうにんじん、銀杏など、色々な野菜を薄口の醤油で煮込んだ素朴な味は、それぞれの家によって味も少しずつ違う。一昨年の秋に82歳で亡くなった母の「のっぺ」の味を思い出しては、その在りし日の姿を、時折なつかしく思い出しています。正月料理には塩ジャケと並んで新潟には欠かせない味のひとつです。
更におふくろの味と言えば名物「笹だんご」。蓬餅の中に餡子を詰め、3枚の笹で瓢、箪状に包んだもので、端午の節句(新暦では六月五日)になると、どこの家でも造ったものですが、残念ながら最近ではお団子屋サンに行ってお金を出さなければ口にはできないようになってしまいました。。 さて味自慢はこれくらいにして、我が街 長岡のお国自慢をひとつ。 長岡と言えば最近、小泉首相が施政方針演説の中で熱く語った、小林虎三郎の「米百俵」の精神が一躍有名になり、山本有三の書いた本も飛ぶように売れているとのこと。 そして毎年この時期、東北の三大祭と並んで話題に上るのが長岡まつりの「日本一の大花火」(おおはなびと読む)。 8月2日・3日の二日間、市街地のほぼ中央を悠々と流れる信濃川と、これをまたぐ長さ860メーターの長生橋をバックに、72万人の観光客が見守るなか、二日間で約2万発の花火が打ち上げられ、短い雪国の夏の夜空を焦がします。お目当ては三尺玉。上空600メーターで直径650メータの大輪の花はまさに圧巻です。その破裂音も地響きがするほどで、光を僅かしか感じない光覚の私ですら、大地を揺るがすその迫力は、肌でも楽しむことができます。 長岡市民が胸を張って自慢する「大花火大会」はもうすぐです。是非一度お出でください。 最後に越後に生まれ、日なが里の子供達と、まりつきをして遊んだという清貧の僧、良寛の詩をひとつご紹介します。金さえ出せばなんでも手に入る世の中にあって、その生き方が偲ばれて、私も大好きな詩のひとつです。
炊くほどは風が持てくる落ち葉かな
良寛 (本文は昨秋、点字週刊雑誌「点字毎日」に寄稿したものを一部加筆したものです。) |