■銀 メ ダ ル

 現在高校三年生の次男は、高校入学と同時に空手道部に入部している。
部員数が少ないせいもあって、二年生から主将を務めている。

そんな二年生時のある日、次男の部屋を覗いてみると、床の上に賞状が無造作におかれていた。
しかも、二枚。

賞状の横には青色のプラスチック製のケースが、これも二個放置されていた。
ケースを開けてみると、中には銀メダルが入っていた。

賞状に目を通してみると、どうやら札幌市中央区で開催された空手道大会で「組み手、形」の両方で準優勝したようだ。



 我が家では、学校での成績表や各種の賞状や合格証といったものは、我が家の先祖を祀っている祖霊舎に報告する習慣となっている。

この習慣は次男も充分に承知している筈だ。
それなのに、賞状とメダルとが祖霊舎にあげられた様子はない。

大方の理由を察した小生は、次男に訊ねてみた。


小生「空手の試合、何人出たのよ? 3〜4人か?」

次男「2人」

小生「もう片方は何人出たんだ?」

次男「3人」

小生「おお、それじゃあ、3人中2位になったのか?」

次男「シードだ」



要するに次男は、出場した空手道の試合で「組み手・形」共に一度も勝利し
ていない、という事だ。

にもかかわらず銀メダルが授与されたのだ。

次男にとっては、胸を張ってご先祖様に報告出来る内容ではなかったのだ。
この二枚の賞状、ふたつの銀メダルの価値を、最も認識していたのは次男自身なのだ。

だからこそ自室の床の上に放置していた。

おとなしい様でも人一倍プライドの高い次男にとって、未勝利で表彰台に上がるのは屈辱以外の何ものでもなかったに違いない。

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