地域社会再生プログラム

 今、地域社会に最も求められる責務は「地域力」を高める事である。
地域住民が安全で有意義な日々を送れる地域環境を作り出す事だ。

「地域力」を高める努力が良好な人間関係を育み、そこから派生する有機的な人的ネットワークが、日々気持ちよく暮らせる地域社会を作る。



 相変わらず簡単に人を殺める事件が多い。
特に子供が惨殺される事件が頻発し続ける社会背景からは、本来的な機能を果たしきれない地域社会の実態が読み取れる。

今や悲惨な事件は「いつでも、どこでも、誰にでも」起こり得ると認識しなければならない。

 一方、人口減少の始まりによる少子高齢化の波は、その加速度を増す。
ある資料によれば、所謂70歳以上の高齢者の数は20年後には現在の2倍
以上になると言う。

 これらの世情を鑑み、また地域社会の果たすべき役割を自覚しつつ、ここにひとつのプログラムを提言する。



 このプログラムの主人公は地域の子供と高齢者である。
これに調整役として行政(教育委員会)と学校が加わる。

プログラムの内容は、主に市内の小中学校の子供に対して高齢者が講師となって授業を行う、というものだ。

高齢者の豊富な経験に裏打ちされた技術や、自身の生き様を熱意をもって
講義していただく。

花や野菜の栽培、庭木の剪定、そば打ち、魚のおろし方、大工仕事、陶器作り、裁縫、煮物・漬け物作り、紐のしばり方、風呂敷のたたみ方、折り紙、竹細工や笹笛作り等から地域の歴史を語る、自分史を語るetc.etc。

授業の内容は無限と言っていい程、多岐に亘る。

しかし、ここで最も重要なのは授業内容の質や成否ではなく、子供と高齢者が定期的且つ恒常的にコミュニケーションと取り続ける事だ。

授業は両者をアクセスさせる方便と考えると良い。
要するに子供と高齢者が真剣に楽しみ、向き合う時間と空間を作り出す事だ。



 ・このプログラムを定期的・恒常的に実践する事で期待できる効果

@地域に於ける子供の安全確保に役立つ。
 地域の多くの高齢者が多くの子供達の顔や名前を知る事は、犯罪に対する抑止力となる。

A「道端で困っているお年寄り」に声をかけ、自然に手を差しのばす子供が増える。
 つまり、子供に高齢者との「共生の心」を芽生えさす事は双方にとって、また地域社会にとって大きな財産となる。

B講師となった高齢者が「社会的貢献を果たす」事で、人生により大きな意義と生き甲斐を見出す。

C講師となり日常生活に緊張感を持った高齢者のボケ防止に役立ち、健康保険等の負担軽減につながる。



 ・このプログラムを定期的・恒常的に実践する為の行政、学校の役割

@行政の役割
・講師となるべき熱意ある高齢者の募集と登録。
  高齢者と言われるまで元気で長生き出来た自分の命に感謝し、「最後のご奉公」とばかりに、子供達の為に「一肌脱ごう」という人材の確保。

・学校との連絡・調整
 
・校外授業時の会場確保と教材費の負担。

A学校の役割
・授業内容によるクラス編成

・行政との連絡・調整



・その他

@授業日は従前のカリキュラムに影響しない土曜日が望ましいが、公務員 の週休二日制等を考慮すると、当面の間、平日のカリキュラムに組み込むしかないだろう。

A現在、江別市内には30校の公立小中学校がある。
週1回のペースで年間40回の授業を行うとすると、延べ1,200回の高齢者の活躍の場が生まれる。
これに幼稚園、高校を加えると、さらに高齢者の活躍の場は広がる。

B講師となる高齢者の募集、確保は市政だより、自治会回覧、蒼樹大学、 シルバーセンター等を通じて行い、地域別、科目別に登録する。



 いろいろな意味で、現代社会に不安を感じている者は多いだろう。

しかし、この現状を「世の中が悪い、政治が悪い」などといった抽象的な言葉で批判しても、それは建設的発言とは言えない。

自分達が毎日生活する地域で、自分達に出来る事を身の回りから実践する、それが「地域力」を高める。

「住み良い街づくり」の第一歩は「地域力」を積み重ねる努力から始まる。

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