■ どうにもならんこと(T)
世の中に、人間のまわりに「どうにもならんこと」は沢山ある。 最も「どうにもならんこと」は、人間は自分の意志で生まれる事が出来ないということだ。 誕生する命は親から一方的に与えられるのであって、生まれてくる者の意志は存在しない。 命とは与えられるものであって、自分では[どうにもならんこと」なのである。 次に「どうにもならんこと」は、生を受けると必ず死ぬことである。 科学の発達のお陰で寿命はどんどん延びてきたが、人間は生まれた瞬間から死に向かって生きている。 そして生きている限り、年をとる。毎年必ず年をとる。 どんどん年をとって、だんだん老いてくる。老いてくると訳の分からぬ事や、同じ事を何度も言って、しわくちゃになって、小便漏らして、しまいには人の手を煩わせないと生きて行けなくなる。 しかしこれは、生きている人間の自然な姿である。 誰も拒否出来ない。 どうしても老いるのが嫌ならば、早死にするしかない。 はじめから拒否出来ないと分かっていることは、甘んじて受け入れるしかない。 「どうにもならんこと」である。 そこで人間は考える。 己の意志ではどうにもならん与えられた命を、どうにもならん死を迎えるまで如何に生きるかを。 与えられた命だからこそ、限られた命だからこそ、人間は真っ当に生きようとする。 生と死 生を与えられ、死を迎えるまで、折角人間に生まれてきたのだ。 明るく元気で、有意義な人生を送らなければ損だ。 |