【テキスト】 野ゴイ用遊動ウキの選び方・作り方 小西茂木解説 (昭和52年3月)
ウキはアタリを知るためのものと、多くの人々に考えられていました。けれども私たちの遊動ウキの任務は、そんなに単純なものではありません。
@ ウキの浮力を利用して仕掛けをはねあげ、底のカカリをさけて無事にひきあげる、
A 仕掛けの着水音に変化をつけて、甘い誘魚音をつくりだし、
B エサをゆっくり沈下させて魚を誘う、
など、昔式の野ゴイ釣りでは考えられもしなかった新テクニックが、このウキ1本によって生かされるのです。
野ゴイウキ釣り用にもっとも使い道の広い標準的な仕掛けは、エサなしで10〜15グラムの重さです。オモリ2〜3号(3号で約10グラム)に中型スイベル2個、大バリ2本を加えて、およそ上記の重さになります。新テクニックを活用するには、この仕掛けと同じ程度の浮力をもった、先のとがった棒型ウキが適当です。バルサ材で作れば直径10ミリ、長さ30センチ以上〜30数センチ、使いよい長さになります。(クジャクの羽根軸は材料として悪くありませんが、本体をけずって任意に太さを変更、浮力を調節できません。)太くて短い形では少しでも流れがあると横振れします。
ウキの上部4分の1ぐらいを、黒とオレンジ色(蛍光塗料)に、3センチおきにぬりわけると、もっとも見やすくなります。水面の明るい時には黒が、暗い時にはオレンジがよく見えます。水面の明るさは複雑ですが、大別すれば明・暗のどちらかです。ボディ下部は白色がいいでしょう。水底から見上げる空は常に明るく見えるからです。黒または黒っぽく見えるボディでは、水のすんでいる時や、日光の強い時に、魚をおびえさせるおそれがあります。トップを余り細くしたり、幾色にもぬりわけたりすると、かえって見にくくなります。トップが少々太くても、アタリがわかりにくくなることはありません。ウキの感度の良し悪しは(宙釣りの場合でも)ボディの形ともう一つ、ウキの浮力と仕掛け全体の重さの、つりあいによってきまるものです。
これらの要点をふまえて作られたウキは、ヘラウキなどどはまったく形のちがったものになります。ボディを2・3色の砥ぎ出し模様に仕上げたものなどは、いかにもいいウキらしく見えますが、模様には実用上の価値はありません。使用目的に合わせて作られたウキでなくては、新テクニックを自由自在に使いこなせないことはいうまでもありません。市販ウキの中で使えそうなのは、メジナ釣り用のものですが、適当な浮力をもっているかどうか、テストしてみる必要があります。ウキ浮力が大きいからといって、オモリを余り大きくすると、仕掛けの着水音が大激しくなりやすい、底にもひっかかりやすいなど、マイナス面が多くなります。
バルサ材で自分で作るのは、たいしてむつかしいことではありません。必要な材料と用具は、バルサ材(厚さ10ミリ、幅80ミリ、長さ60センチのものを買い、幅10ミリに切る。)トップにつけるセル棒ウキ(下端を切って、はめこむ。太さ6ミリから4ミリ。10センチ以上にすると曲がってくる)。長さ20ミリのヨリモドシ。18番線のハリガネ少し(ウキ下端の輪を作る)。瞬間接着剤(接着するだけでなく、バルサの細くけずった部分にしみこませて、補強用としても使う)。オレンジ色の蛍光塗料。黒と白のカシュー。塗料用のハケ、テレピン油(溶剤)。ボディをけずるための工作用平ヤスリの荒目と細目(木工用平ヤスリは目が粗くて使いづらい)。目の細かい紙ヤスリ(ボディの仕上げ用)
バルサはまず正しい10ミリ角に仕上げ、角をけずって8角とし、その角をけずって16角とし、またその角をけずって円筒形に仕上げるとよい。ナイフでけずると、ゆがんだ形になりやすい。作り方の詳しいことは金園社発行『川と湖沼の釣』(新版)284ページに記載してあります。